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チュートリアルのある異世界へようこそ!  作者: しなとべあ
第三章 ペルムシエルの花劇団
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第63話 朝食

俺が人気の少ない酒場のテーブルで、貯金箱に魔石を入れていたら。


「おはようございます。本日はよろしくお願いいたしますね」


「おはようです!どうぞ、よろしくお願いしますです!」


一夜明けた早朝の酒場に、ユナリアとロココの姿が現れた。


昨日と変わらない姿で、声にも表情にも旅の疲れは見受けられない。


今日は、ロココ以外の葉族は留守番なのか見当たらない。


花族程ではないが葉族も十分目立つので、気を配る先が少ないに越したことはないだろう。


二人の声を聞きつけて、朝食の仕込み中だったマリネがひょっこりと奥から顔を出す。


「おはよう、二人とも。予定より少し早いから、優斗と那砂はまだだから、飯でも食って待っててくれ」


「おはよー!うん、すぐに用意するから待っててね」


挨拶をしたマリネが、すっと顔を引っ込める。


あとはマリネが朝食を用意してくれることだろう。


俺は二人を自分の席に誘うと、貯金箱を懐に仕舞いこむ。


ユナリアは座り、ロココは座ると顔が見えなくなるので、椅子の上に立った。


「よく眠れたか?」


「はい、夜にも頂いたお酒のお陰もありまして、とても良い眠りを得られました」


「本当にあれはいいものなのです!真剣に、ペルムシエルでもお酒造りを考えねばいけないのです」


本当によく寝れたのだろう、柔らかい笑顔のユナリアと、よほど気に入ったのか気合の入った表情を浮かべたロココの対比が面白い。


昨日、領主と会合の後は劇場車に引っ込んだからな。


夕食を受け取りに来た葉族と顔を合わせただけで、二人とは顔を合わせていなかったが気に入ってくれたのなら嬉しい限りだ。


「気に入ったのは、やはり果実酒で?」


「はい。エールも頂きましたが、そちらは申し訳ないのですがあまり口に合わず……」


普段酒を飲まないなら、エールは確かに美味いと感じるのは難しいか。


「自分達は嫌いではないのですが、やはり果実酒と比べてしまうとだめなのです」


「今回用意した果実酒は樹鹿の森の果実を使った特別品だったからな。それと比べたら仕方ないな……」


エール好きとしては残念だが、流石に相手が悪すぎる。


「果実酒もそうなのですが、頂いた果実もとても美味しくて。ペルムシエルの果実以外で、こんなに美味しいのは初めてかもしれません」


「樹鹿の森の果実は格別に美味いとは思っていたが、ペルムシエルの樹人に認められるとなんか嬉しいな」


俺が一番通っている支配領域なので、愛着もあるのだあそこは。


「えぇ、間違いなく最高峰の果実だと自信を持っていただいていいのです!ロココのお墨付きです!」


「それは光栄だな」


椅子の上に立っているロココが胸を張る姿に頬が緩む。


ユナリアも、そんなロココの姿を優しく見つめていたが、ふっと表情を引き締めると俺の方に向き直った。


「ヴァイス様は、樹鹿の森にはよく行かれるのですか?」


「あぁ、よく行くよ。最近はマリネ達が行ってるから頻度は下がってるけどな」


あそこは実入りがいいうえに、依頼も多いのだ。


マリネ達では達成がまだ難しそうな依頼があれば、俺が行くことになるだろう。


すっかり体に馴染んだ樹猪の革鎧の効果なのか、気配消しの粉末を使わなくても気付かれにくくなっている。


樹狸ぐらいになると流石に気付かれるのだが、あいつは俺を見つけると複雑そうな顔をして去っていくんだよな……。


俺に見逃されたのをどう思っているのかは知らないが、少なくとも戦うつもりはないようで助かっている。


それもあって採取が非常に楽になっているのだが、マリネ達の依頼を奪わないように最近は自重中だ。


「そうなのですね。……もしかして、支配者の樹鹿様にお会いしたことなどは?」


「いや、流石にない。遠くから見たことはあるが、友好的かもわからない領域の王に近づく程命知らずじゃないさ」


俺の言葉に、ユナリアもロココも確かに、と納得した顔で頷いた。


そこに丁度いいタイミングでいい匂いが近づいてきた。


「はーい、お待たせ!ヴァイスも朝まだでしょ?」


籠に入った果実とパンを尻尾に乗せ、腸詰やポテトサラダが乗った大皿を左手に、ジョッキ三つを右手に持ったマリネがやってくる。


曲芸じみたその姿に二人が目を丸くするのを横目に、手際よくテーブルに置いていく。


俺の前にはエールが、二人の前には果実酒が入ったジョッキが置かれる。


「あぁ、助かる。マリネも食べるだろ?」


「うん、みんなの分用意したらわたしも食べるよ」


そう言ってマリネが視線を二階に向けると、優斗と那砂の姿が見えた。


こちらに気付かず眠そうに欠伸をしている優斗と、気付いて慌てている那砂の違いが面白いな。


「それじゃ、残りも持ってくるからちょっと待っててね!」


そう言うなり、マリネが走り去っていく。


「マリネさんは素晴らしいのです!手際の良さは自分から見ても感心するのです!」


従者長としての目線なのか、ロココが小さく手を叩いてマリネを褒めてくれる。


親代わりの一人として、俺は思わず。


「なんたって、マリネは自慢の看板娘だからな」


最近開拓者として忙しくて、顔を出す頻度が下がっても。


それでも、チュートリアルの酒場の看板娘はマリネだと、皆が口をそろえるぐらいにはね。

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