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チュートリアルのある異世界へようこそ!  作者: しなとべあ
第三章 ペルムシエルの花劇団
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第52話 国家

――虹桟の大樹国家ペルムシエル


巨大な大樹の上に築かれた国……らしい。


というのも、俺はクシナド王国から出たことはないから行ったことないんだよな。


「確か、ペルムシエルって国の名前だったよね」


切り分けた果実を口に放り込みながら、マリネが話を向けてくる。


「この大陸にある国の一つだな。俺も聞いた知識だが、折角だから二人にも主要国の名前を教えておくか」


俺は空っぽになった皿の中央に、ナッツを一つ置く。


その左右に一つ、下に一つ、上に二つ更に置いていく。


「皿が大陸だとすれば、中央にあるのがペルムシエルだ。


 南にあるのが俺達の国、クシナド。ペルムシエルの北にあるのがカディスの国のアルビオンだな」


「カディスさんのアルビオンとは、国一つ挟んでいるんですね」


「間にいくつもの支配領域を経由するから、体感としてはもっと遠いらしいけどな」


国と言っても、全域を掌握できているわけじゃない。


国と国の間にはいくつもの支配領域があり、その間の境界を縫うように移動しなければならない。


国境同士が接している国の方が珍しいぐらいだ。


「で、数少ない国境を接している国が、アルビオンの北にある国、緑風の獣人連邦ラインドルフだ。


 名前の通り獣人が住人の大半を占める国で、アルビオンとは建国以来戦争状態らしい」


確か、アルビオンの建国が二千年前ぐらいらしいから、二千年間戦争を続けていることになる。


獣人は身体能力に優れた戦士の種族。


それを相手に二千年戦い続けているあたり、カディス達アルビオンの強さがよくわかる。


「カディス曰く、領域を広げるべく南進しようとする獣人の防波堤としてできた城塞都市がアルビオンの起源らしい」


「そりゃ、カディスさん達が強い訳だ」


アルビオンの起源に、優斗も納得したように頷いた。


「逆に言えば、あのアルビオン相手に互角の戦いを続けてるあたり、ラインドルフの獣人の精強さも想像できるな」


「……カディスさん達と戦い続けて互角の獣人とか、ぞっとしないな」


俺もそう思うよ。


「噂では、ラインドルフの更に北の果てには魔人が治める国があるらしいが詳しくは不明だ」


ラインドルフ側から情報が入ってくることがないし、何より大陸南端に位置するクシナド王国からはあまりにも遠すぎてなぁ。


「魔人の国っていうと、ルメールみたいなのがいっぱいいるのかな?」


「……流石に、平均がルメールって事はないと思うぞ?」


マリネの無邪気な言葉に顔が引きつる。


俺もまともに会った事のある魔人はルメールぐらいだし、魔人が強大な種族なのは知っているが、流石にそれは怖すぎる。


「特にルメールは魔人化した魔器が人形の体を操ってる、っていう特殊な魔人だから、種族としての魔人はもっと生き物っぽいはずだ」


どっちかというと、妖精とか妖怪とかの方がイメージに近い気がする。


「でも、魔人の国ってファンタジー感強くて一度行ってみたいですよね!」


「わかる!正直俺も一度ぐらい行ってみたいな」


クシナド近辺でも領域毎にファンタジーな光景は見れるが、地域によって傾向はあるらしいから、魔人の国の景色は俺も気になる。


流石に、北の果ては遠すぎるけどな。




「んで、大陸の東に位置するのが、黄金の魔導皇国ティスタティオ。文化や風土的にアジアよりで、時折流れてくる和風の品はここ産が多いな」


「黄金や皇国を主張しているアジア系ってことは、日本と関りがあるんですか?」


那砂の疑問ももっともだ。


正直俺も日本系の関係が深いとは睨んでる。


「多分、無関係ってことはないだろうな。日本からの来訪者が全員クシナド王国に現れるわけじゃない。ティスタティオにもそういう場所があっても不思議じゃないな」


アルビオンの建国にヨーロッパの来訪者か転生者が関わっている以上、そういう可能性は大きいだろう。


「ただ、ティスタティオは秘密主義で、国の内情はよくわからない」


「普通だったら、そんな国があったら、異世界転移で日本の味が恋しくなって東の国に!ってなるんでしょうけど……」


那砂がちらりとカウンターに立ってグラスを磨いているシンザキに視線を向ける。


そうなんだよな。


シンザキが工夫してるから、頼めば和食も大体何とかしてくれるから、食事に関しては満たされてるんだよな。


「シンザキさんには感謝しかねぇ……」


「本当だよね……御飯が美味しいって幸せです」


……そりゃもう、苦労したからな。


味を再現する方法も、必要なものの販路も、苦心して築いてきたからな。


満足いくほど再現できるようになったのもここ数年なんだよな。


だが、あえて言うまい。


後輩は美味い飯を食って満足していればいいのだ。




「最後に、大陸西に位置するのが、この大陸唯一の宗教国家、赤銅の精霊教国カピリナだ」


「宗教国家、ですか?」


「あれだぞ、バッカスは信仰だが、土着信仰に近い。バッカスという神を直接崇めてるわけじゃないからな」


ペドロを始めとしたバッカス信者は、土地を愛する者たちで、その土地の象徴であり命の水である酒造りを信仰に転化させている。


それの土着信仰に、地球の酒の神であるバッカスという形を与えたのがバッカス信仰だ。


だから、厳密にはバッカスは宗教じゃない。


「カピリナ教国は、銅の大精霊であるカピリナを崇めている、実在する精霊を信仰する国だ」


得体のしれない神を崇めている訳じゃない。


この世界風に言うのなら、カピリナという領域支配者に支配された支配領域だな。


友好的な王級に庇護されているともいえる。


「神様ではないんですね」


「実は、こっちの世界で神って言う概念は一般的じゃないんだよ」


「……でも、神様いるよな?」


那砂の疑問も、優斗の言葉も最もだ。


「地球に神はいる。だが、この世界に神はいない。何せ、神の代わりに信仰を受ける存在だらけだからだ」


長年の経験からの推測だが、信仰心が力となるのなら、それは全部領域支配者が受け取る力と同義だ。


そして、過酷なこの世界では、いるかもわからない神よりも、実際に自分達を庇護してくれる強大な存在を信仰する。


だから、この世界で神は発生しなかった。


まぁ、神みたいな化け物がいるんだから当然と言えるが。


俺の説明で二人は納得したらしい。


あくまでも俺の推測だけどな。


「で、カピリナ教国はティスタティオとは違って非常に開放的な国だな。この街にも、巡礼の旅でやってくる信徒も見かけることもある」


信者を増やすためなのか、隠す必要もないのか、信徒は観光ガイド顔負けの解説をしてくれるんだよな。


「銅の精霊であるカピリナは、銅を自在に操るとされる。そして、カピリナの寵愛を受けたものもまた、銅を操る力を得るそうだ」


だから、銅細工が有名だし、街並みも銅で飾り立てられ非常に美しいそうだ。


旅行が簡単な世界だったら、観光都市として栄えてそうだな。


「ちなみに、銅貨を製造している国でもある。銅を操るカピリナ教国でしか作れないから信頼性が高くてどこの国でも通用する」


「妙にこの世界の銅貨が綺麗だと思ったら、そういう事だったんですね」


ちなみに銅を操る力で悪用できそうだが、もしも悪用したら恩寵剥奪されるらしいので、そういう意味でも信頼性が高い。




「これで、この大陸の主要国家は全部だな。実際は小国があったりするし、そもそも支配領域も国みたいなものだからその辺りも入れると際限がなくなるが」


実際小鬼の森だって、ゴブリンの国だからな、あれ。


人型の種族が支配して文化的な生活をしている領域は山ほどある。


ただ、その中でも一定以上の範囲を支配し、一般的な領域支配者とは隔絶した力を誇るのが主要国家だ。


大陸北端から中央を狙う、緑風の獣人連邦ラインドルフ


北の侵攻を抑える防波堤、白亜の城塞国家アルビオン


大陸中央に君臨する大樹、虹桟の大樹国家ペルムシエル


東に位置する謎多き皇国、黄金の魔導皇国ティスタティオ


西に位置し精霊が治める、赤銅の精霊教国カピリナ


そして、南端に位置する、青銀の錬鉄王国クシナド


この六国家が主要国家と呼ばれている。


……まぁ、今のクシナド王国は主要国家を名乗るには力を落とし過ぎてるんだけどな!

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