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チュートリアルのある異世界へようこそ!  作者: しなとべあ
第二章 小鬼の森の収穫者
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第50話 閑話:女子会

■ルメール視点


切られた足を直すために、ここ数日ぼくはカギミヤのお店に泊まっていた。


足を動かすための腱まで切られていたから直すのに時間はかかったけど、すっかり元通り。


ぼくはヴァイスに会いたくてすぐにでも戻ろうと思ってたんだけど、カギミヤに呼び止められた。


――折角だから、女子会しましょう?


って。




カギミヤの店の一階奥。


中庭に面したその部屋は明るく、中庭の手入れされた花壇が良く見える。


ぼくよりずっと小さい人形やぬいぐるみが着飾って置かれた部屋は、淡く暖かな色で統一されている。


中央には白いフリルのテーブルクロスがかけられた丸テーブルが置かれ、椅子が三脚用意されていた。


「ふわぁ……すっごく可愛いお部屋ですね!!」


初めてこの部屋に訪れた那砂が、驚きの声を上げる。


「わかってくれるのね那砂ちゃん!」


那砂のその純粋な反応に、カギミヤも理解者を見つけたと喜んでいる。


ぼくはそんな二人を横目に、鉄槌置きがついたぼく専用の椅子に鉄槌を置くと真っ先に座る。


「私、人形とかぬいぐるみとか大好きで……!でも、人形はどうしても高くて買えなかったので、嬉しいです」


「わかるわその気持ち!学生に人形は高根の花すぎるのよね……」


カギミヤが笑顔で那砂に椅子をすすめながら、自分も席に着いた。


那砂も進められた席に着くと、隣の部屋からメイド姿のクラリッサがワゴンを押して現れた。


クラリッサがカギミヤと那砂の前に、紅茶とケーキを用意していく。


食事のできないぼくにはないけど、代わりに小さな花で飾られたお皿が置かれる。


うん、いい匂い。


ぼくにも少しでも楽しんでほしいというクラリッサの気遣いがうれしい。


「さて、あらためまして那砂ちゃん、お久しぶり。ちゃんと話すのは鎧の採寸の時以来ね」


「はい、カギミヤさん!本日はお呼び頂き、ありがとうございます」


那砂はいつもの学生服姿。


来訪者がもともと住んでた日本という所の学校ってところの服なんだっけ。


ヴァイスもカギミヤも最初は持っていたらしいけど、手放したらしくて持ってないんだっけ。


たしか、ヴァイスが前に「初期装備が高性能とか聞いてねぇよ」ってぼやいてたのを覚えてる。


「ルメールさんも、こうしてお話しするのは初めてですね。今日はよろしくお願いします」


「ん、よろしく」


怖がることも、変な目で見る事もなく、純粋にきらきらとした好意を向けてくれる那砂は結構好きだ。


魔人のぼくに奇異の目を向ける人は多いし、少しでも力を見せると怯えるのも多くて面倒くさいんだ。


「今日のルメールさんは、ロングヘア―に白いドレスですっごく可愛いです!」


「でしょう!!普段の王子ロリィタはもちろん最高なんだけど、こういう純粋な可愛さも似合うのよ!!」


褒められるのは悪い気はしない。


今日のぼくはカギミヤの趣味で、お姫様みたいな白いフリルたっぷりのドレスに、髪もロングになっている。


カギミヤは、うん。ぼく相手だといっつもこんな感じだから特に何も思わないけど、那砂の純粋な誉め言葉はいいね。


戦闘には向かないからぼくとしてはいまいちだけど、別に嫌いじゃない。


……ヴァイスは、どう思うかな?


「本当に可愛いです。私も、ちょっと憧れてました」


「那砂ちゃんもすっごく似合うと思うわよ。欲しくなったら絶対私に作らせてね?」


「はい、その時は是非!」


こういう時、カギミヤは安易にプレゼントとかはしない。


カギミヤはお金に苦労したからか、お金に関しては妥協しない。


それに、カギミヤの服は高い。


普通の服に比べて手間暇も凄いかかってるし、こういう服ならなおさらだ。


ぼくがたくさん持っている服も、お金がかからないぼくだから買えてるだけだ。


特にぼくが戦いのときに着ているのは素材からして高価だからね。


「ルメールちゃんの着てるのは特別製だから高いけど、普段着ならずっと安いから安心してね」


「……頑張って貯めます!」


ずっと安い、と提示された金額に一瞬怯んだ那砂だったけど、目標にするにはちょうどいい金額なのかやる気に満ちていた。




「そういえば、那砂ちゃんは優斗くんと仲がいいのよね」


獲物を見つけたような目で、カギミヤが那砂に話を振る。


ぼくもちょっと興味があるので、那砂に視線を向けた。


「はい。優斗くんには、すっごくよくして貰っていて……私が生きているのも、全部優斗くんのお陰なんです」


静かで、でも強い意志の込められた那砂の反応に、カギミヤが姿勢を正すのが見えた。


「……ただの幼馴染じゃないのね?」


「そう、ですね」


少しだけ那砂は悩み。


真剣なカギミヤの目と、特に変わらないぼくの態度に一度頷くと続きを離し始めた。


「私、小さい頃に両親が離婚して、お母さんに引き取られたんですけど……育児放棄されてたんです」


ぼくにはあまり馴染まない言葉だったけど、息をのんだカギミヤの反応から大体察した。


親がよくわからないぼくだけど、大変な事なのはわかった。


「ろくにご飯も食べれずにいつもお腹を空かせていて、小学校にも通わせてもらえなかったんです」


辛い話だと思う。


小学校はよくわからないけど、お腹が空くのは辛いはずだ。


ぼくも魔力が切れると空腹感に襲われるけどあれは辛いから。


でも、そう語る那砂の声に悲壮感はない。


「そんなある日、食べるものを探しに行って倒れた私を見つけてくれたのが優斗くんなんです」


その声に、喜色が混ざる。


その目に、熱が宿る。


「やせ細って汚れたまま倒れている私を、迷わず抱き起してくれました」


そう穏やかに語る那砂の声には、隠しきれない想いが宿っていた。


「そのまま私を抱きかかえて、お家に連れて行ってくれて……記憶にある限り、それが私の初めての温もりでした」


余程うれしかったのだろう。


そう語る那砂の表情は穏やかに緩み、想いが籠った声がぼくにどれだけ嬉しかったのを感じさせてくる。


「その後はすぐでした。優斗くんのご家族が働きかけてくれて……色々あったんですが、最終的に私は優斗くんのお家に引き取られました」


その言葉に、カギミヤがほっと肩の力を抜いているのが見えた。


ぼくも、那砂が優斗に出会えたのはよかったのだと素直に思う。


「それからは毎日が天国みたいに幸せで、優斗くんのご両親は私を本当の子供のように大事にしてくれましたし、優斗くんもずっと私を守ってくれました」


「……それは、仲がいい程度で片づけていい関係じゃなかったわね」


那砂が優斗にべったりなのも、優斗が那砂を守る為なら覚悟ができるのも納得できた。


「はい。だから、私は優斗くんの為に生きたいんです」


……なんか、那砂の言葉に重みが増した気がする。


「優斗くんが居なければ私はいませんでした。今の私があるのは、全部優斗くんのお陰なんです。だから、私の全部は、優斗くんの為にあるんです」


まっすぐ。


純粋に、何の疑問もなく語る那砂の目はきらきらと輝いていて。


その言葉に乗せられた重すぎる想いに、カギミヤの表情が少し引きつっているのが見えた。


「……那砂ちゃんそっち系かぁ」


カギミヤがぼそりと呟いたそっち系の意味はよくわからないけど。


「うん、ぼくもよくわかるよ」


ぼくには、那砂の気持ちはよくわかる。


最愛の主人であるヴァイス。


君がために、ぼくはあるのだから。

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