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チュートリアルのある異世界へようこそ!  作者: しなとべあ
第一章 チュートリアルと樹鹿の森
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第11話 初戦闘

「マリネ、街道に誘い込め。優斗と那砂は街道で待機、いつ来てもいいように構えとけよ」


「わ、わかった」


「頑張ります!」


うむ、ちょっと硬いが返事はよし。


俺はベルトのポーチから小瓶を取り出し、その中身を少しだけ手に取ると、頭から振りかける。


「ヴァイスは?」


「隠れて様子見と数減らし。やばそうなら手を出すから、それまでは優斗と那砂でやってみろ」


この草原用の気配消しの粉末を被り終わると、俺は意図的に領域を極限まで狭めていく。


「アドバイスは、マリネに任せる」


「もう、仕方ないなぁ。フォローは任せたからね」


「任せな」


そう言い残し、俺は意外と背の高い草むらに潜り込むと、肌に張り付くほど薄くした領域を揺らさぬように、気配を殺し息を潜めた。


さて、お手並み拝見といきますかね。



■マリネ視点



まったく、ヴァイスはわたしを頼り過ぎなんだよなー!


だらしなくて、いっつもシンザキに迷惑かけて、まった手がかかるんだから!


でも、頼ってくれるの、悪い気はしないけどね。


頼まれたからにはお仕事しなきゃ。


狼さんたちを呼び込まないとね。


「二人はここで待っててね」


背負った大きなリュックを二人の後ろに下ろすと、身軽になった体で草原に踏み込む。


踏みしめられた街道から草原に入った瞬間、匂いが変わる。


纏わりつく風が、より太陽の匂いを感じさせて、わたしは嫌いじゃない。


獣人だからか、街よりもなじむ気がする。


でも、ここになじんでいる生き物にとっては、異物が入ってきたわけで。


しかも、小動物系の獣人のわたしとか、獲物にしか思えないだろうから、四つの気配がまっすぐにこっちに向かってくるのがわかった。


……気配消しの薬少しかけただけで、わたしより先に入って気付かれないヴァイスはやっぱりおかしい。


わざとらしく、草を揺らして、こっちだよって尻尾を大きく振る。


緊張状態にある小動物らしい“匂い”を、尻尾にまとわせて吹き散らす。


かよわい小動物が、びっくりしておびえてますよー?


かわいいマリネちゃんが食べごろだよー?


狼さんに食べられちゃうー!


あ、ひっかかった。


獲物を見つけたと思ったのか、駆けだしたのがもう音でもわかるぐらいだ。


わたしは慌ててるように見えるように、大げさに地面を蹴って、ちぎれた草を巻き上げながら街道に駆け戻る。


街道に飛び込むと、空気が少しだけ馴染む空気に戻る。


転がる様に受け身をとり、尻尾を使って跳ね上がり、優斗と那砂の後ろに飛び降りる。


「来たよ、二人とも!」


「わかった!」


「が、がんばる!」


二人は大丈夫かな?


来訪者の新人さんは、当たり外れがものすごく大きい。


狼どころか、兎にも勝てない人も見たことあるし。


──それに。


飛び込んできた狼が、新たな獲物を見つけてより牙をむき出しにして威嚇する。


「いくぞっ!」


優斗が勇ましく踏み込み、中々の速さで踏み込み、魔剣を振り下ろす。


けど。


当たる直前に、狼はそれを後ろに跳んで避ける。


――外で生きるものは甘くない。


「このっ!」


追撃に踏み込むも、狼の跳躍力には追い付けていない。


それどころか、追いついて街道に飛び込んできた二匹目が、優斗に飛び掛かってくる。


「くっ!?」


とっさに引き戻した魔剣で爪を受け、返す刃で狼を浅く切りつける。


狼の毛が舞い散った程度で、肉まで届いていないみたい。


一匹目が、二匹目と入れ替わりに飛び掛かってくる。


それを迎え撃とうと優斗が魔剣で切り払うも、余裕をもって回避される。


「なんで当たらないんだ……!?」


なんでって……。


「優斗、領域を無駄に広げすぎ!」


自分の魔剣が届かない範囲まで領域広げたら、“ここを攻撃しますよー”って宣言してるようなもんだよ!


「んなこと言われたって!」


「あー、領域の調整は来訪者には難しいんだった」


わたしたちは、子供のころから当たり前に使って、調整も学んでくるけどそれをやったことないんだっけ。


えっと、そういう場合にはどうすればいいんだっけ。


逆に馬鹿みたいに広い領域で包むとか?


でもそれが出来たら苦労しないだろうし。


って、三匹目!


草原から迂回してきた三匹目が、那砂に向かってとびかかってきた。


大きな口が開き、その牙が那砂に食らいつこうとして。


「きゃっ!」


「那砂!」


那砂の悲鳴に優斗の目が鋭さを増し、振り向きざまに迷うことなく足が踏み抜かれる。


一瞬で駆け戻ってきた優斗の、さっきまでとは違う鋭い突きが大きく開いた三匹目の喉に突き刺さる。


入った。


喉を貫通し、後頭部から魔剣が突き出ている、見ただけでわかる致命傷。


飛び散った血が、領域の外に出ると溶けて赤い靄となって、境界に散っていく。


だけど。


「油断しちゃダメ!」


致命傷を受けた生き物は、その時点で覚悟を決める。


せめて、相手の命を道ずれにせんと最後の力を振り絞る。


貫かれたまま、優斗を押し倒し、その爪を喉に食い込ませようと後ろ足が地面を蹴る。


がりがりと地面を削る音が響き、何度も振るわれる爪が必死の魔力を纏い冷たく輝く。


「マジかよ!?」


押し倒されまいと、優斗が渾身の力を込めて押し返す。


致命傷を受けた三匹目は、最後のあがきだから長く持たない。


だけど、それで十分。


一匹目と二匹目が、優斗の無防備な背中に向けて飛び掛かり。


「だめっ!!」


那砂によって展開された結界にぶつかり、二匹とも弾き飛ばされる。


三匹目にとどめを刺した優斗が、結界にぶつかったことで地面に転がった二匹目に向かって駆ける。


結界は優斗を素通しし、最短距離で突き込まれた魔剣が、体勢を立て直せない二匹目の頭部を地面ごと突き刺した。


流石に、頭をやられたら動物はどうしようもない。


二匹目は即死し、その間に体勢を取り戻した一匹目が、逃げ出そうとして。


「はい、お見事!」


いつの間にかそこにいたヴァイスの鉄剣によって首を切り落とされていた。


左手には、すでに息絶えた四匹目を引きずって。


「初戦にしちゃ、いいんじゃないか?」


「もう、ヴァイス。領域調整できないんだから、だめだめだって!」


「うぇ、マリネさんきっびしぃ」


でも、あのひと突きは、初心者とは思えないいい突きだったし、そこはまぁ合格にしてもいいかな。


それにしても。


あの結界なんなのさヴァイス!


ちゃんと説明しなよー!!



■ヴァイス視点



はい、説明不足はごめんねマリネちゃん!


完全にうっかりです、ごめんなさい。


でも今はこっちのが大事なんで後にしてねー。


「さて、どうだった優斗」


初めて命を奪った。


狼なんて、犬というペットに近い存在だ。殺した重みは、きっと想像以上だろう。


「……思ったよりは、平気だ」


お、虚勢じゃなさそうだ。


まぁでも、那砂を守るためなら一切の躊躇なくやれるとは思ってたよ。


「あの突きの感覚忘れるなよ。領域の中で振り回すのと、領域を纏うのは別物だからな」


魔器は最も意志の伝達力が高い武器だ。


その魔器だからこそ、領域を纏い、領域外へもその刃を届かすことが出来る。


ただ、それは明確な意志がないと難しい。


「那砂を助けるためならできた。次は、それを常にできるようにな」


「……おう」


うむ、大変よろしい。


「次、那砂」


「は、はい!」


那砂の場合は、武器を振り回すわけじゃないからあれだが。


「優斗を守るための結界の展開速度はよかったが、自分を守るためにも同じ速度で張りなさい」


優斗が間に合わなかったら怪我してたぞ。


「すみません……」


「優斗とペアなら戦闘中は常に展開しててもいいけどな」


那砂の結界は優斗は素通りだから、障害にならないからな。


あの強度だから、無制限にとはいかないだろうけど。


「と言ってもペアで生き抜くのは難しいし、他の開拓者と連携するためにも要練習だ」


「はい!」


うむ、元気でよろしい。


軽く息を吐いて、辺りを見回す。静けさが戻った街道に、血の匂いが漂っている。


さて。


中々実りのあった戦闘ですし、最後に。


「それじゃあ、二人には今から解体の練習をしていただきます」


「「えっ」」


この世界で、無駄にしていいものがあるわけないだろう。


きっちり四匹解体するからな?


見なさい、すでにマリネが嬉々として解体してらっしゃる。


そのためのナイフは開拓者セットに入ってるから、安心するように。


青ざめた二人に、俺は笑顔で指導するのであった。


「二人とも、血の匂いが広がるから手早くね!」


そうだねマリネ、解体は手早くやらなとね!


特に、境界は魔素が液体として挙動するから、遠くまで匂いが届くからな。


さて、俺も手伝いますかね!

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