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チュートリアルのある異世界へようこそ!  作者: しなとべあ
第四章 遅すぎた来訪者
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第101話 特訓

■マリネ視点


朝ごはんを食べ終えた陽葵が、満足そうに息をつき、両手を合わせる。


「ごちそうさまでした! ふぅ……おいしかったぁ」


来訪者らしい食後の挨拶をした陽葵が幸せそうに顔を緩ませる。


そんなに量は食べられなかったみたいだけど、上品に綺麗に食べていたのが印象的だった。


となりで野性味たっぷりに散らかして食べるベルンとは大違いだ。


「陽葵は食べ方が綺麗だね。ベルンも陽葵を見習うようにね」


「……食べ方?」


初めて言われた、と言わんばかりに首をかしげるベルン。


「陽葵みたいに綺麗にこぼさず食べれば、こぼした分まで食べられるんだよ?」


「……そっか!?」


驚きのあまり目を見開いて自分と陽葵の皿を交互に見るベルン。


欠片一つ残ってない陽葵の皿に対して、食べかすの残っている自分の皿。


「おれ、次から綺麗に食べる!」


「頑張ろうね、ベルンさん!」


「おう!」


ベルンの抜けたところは可愛げがあって、おかげで嫌いになれない。


陽葵も応援してくれていることだし、次からはベルンの食器は少しは綺麗になってると思いたい。


そんな微笑ましい二人のやり取りを見ていたら、二階から響く足音を耳が拾った。


この聞きなれた足音は二人に間違いない。


「おはよう、那砂、優斗」


わたしが二階に向かって声をかけると、


「おはようマリネちゃん!」


目が覚めてから、優斗が起きるのを待っていたであろう、元気で髪も整った那砂と。


「……おはよう、マリネちゃん」


寝起きで寝ぼけ眼、寝ぐせも跳ねたままの優斗。


「優斗、やっと起きたんだ」


「……正確には、那砂に起こされたんだけど」


眠そうな優斗の寝ぐせを、手櫛で整えていた那砂が陽葵に気付いて小さく手を振った。


「おはようございます、陽葵ちゃん。よく眠れました?」


「うん! すっごくぐっすり!」


陽葵の声が弾み、笑顔が綻ぶ。


その笑顔を見た那砂が嬉しそうに微笑み返す。


食事の終わった陽葵とベルンのテーブルの席に、優斗と那砂が自然と座る。


「マリネちゃん、私と優斗くんの朝食お願いできる?」


「うん、任せて。那砂は果実酒、優斗はエールでいいね」


わたしの言葉に那砂が頷いたのを横目に、二人分の朝食を取りにわたしは厨房へ向かった。




「ねぇ、優斗」


二人の食事が終わったの見届けて、ベルンが優斗に話しかける。


食事中も席に残って雑談していた陽葵とベルン。


「どうした、ベルン」


さすがに目が覚めた優斗の声が、いつもの調子に戻っていた。


「あとで特訓、する?」


「おう」


天気の話をするぐらい穏やかなやり取り。


最近の日常になった、優斗とベルンの特訓。


命の取り合いまでした敵同士だった二人だけど、意外と似た者同士なのか仲良くなって暇さえあれば特訓する仲だ。


「特訓?」


陽葵がきょとんと首をかしげる。


「優斗強い。けど、おれも強い。だから、ちょうどいい!」


ベルンの言葉に、余計混乱する陽葵。


優斗が苦笑しながら、言葉を続ける。


「この世界は、神授の魔器だけで戦い抜けるような優しい世界じゃないんだ。強くなるには、地道に積み重ねるしかない」


優斗が腰に下げた神授の魔器であるガラティーンの鞘に手を添えながら呟く。


「私と優斗くんは戦いが避けられない開拓者の道を選んだから、戦い方を学ぶのは必要なの」


那砂も、そう言って自分の神授の魔器のブローチに手を添える。


二人が神授の魔器に触れたのを見て、陽葵も背負った細長い袋に手を添える。


「……特訓、かぁ」


陽葵の表情に不安が浮かぶ。


その細い腕と、小さな肩が目に映る。


昔、病弱で運動も苦手だったって、昨晩の食事の時に聞いている。


性格的にも、戦うのは向いてなさそうなんだよね、陽葵。


「陽葵ちゃん」


その不安そうな陽葵に、那砂が笑顔で話しかける。


「来訪者でも、必ず戦わないといけない訳じゃない。街でお仕事して暮らしてる人もいるの」


わたしの脳裏に、カギミヤのお店が浮かぶ。


確かに、カギミヤは開拓者じゃないけど、お店を持って暮らしている。


そういう道もいいと思う。


「でも、せっかく異世界に来たんだから、自分だけの特別な力は、ちゃんと把握しておいた方がいいと思うよ」


「……そうだよね、せっかくの特別な力なんだもんね」


少し楽しそうな表情になった陽葵が、背負っている細長い袋を抱きしめる。


「もしよかったらだけど、神授の魔器を把握するの、俺達でよければ手伝うよ」


「おれも!」


優斗とベルンの言葉に、陽葵が私達を見回して。


「よろしくお願いします!」


深々と頭を下げて。


「ひゃぁっ!」


――いい音を出しながら、テーブルに頭をぶつけていた。


その光景に、思わず笑ってしまいながら。


わたしたちは、陽葵の神授の魔器を確かめるために訓練場へ向かうことになった。

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