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神様のお使い  作者: 花香
壱ノ話
8/46

裏話、わたしは見ちゃった!

評価、お気に入り、ありがとうございます♪

壱ノ章のおまけ的の話です。

一般人の“俺”視点ではない人が、“俺”と“にゃんこ”を見ているとこうなりますという話です。

わたしは今、何を見てるのかしら?


口から飛び出した悲鳴が、自分のものだとも思えなかったけど、そんな小さなことに気を回す余裕なんてなかった。

近くにあった腕にすがり付くのに精一杯!


あれは、なに!!!!


圧倒的な威圧感に足が震える。

恐ろしい咆哮に心が凍りついて、痛い。

自分が目にしているのが、現実だと思えない。

目を閉じて……


こんなの見たくない。。。


そう思うのに、わたしの目は言うことを聞いてくれなかった。

目を離すこともできなくて、わたしは“それ”をずっと見つめることしかできなかった。

瞬きもできずに。

そんなわたしに、


「お前、置いてかれてるぞ。」


「えっ!!」


知らない声がかかった。

それに驚いて、やっと“あれ”から目をそらすことができた。

そして、そのきっかけをくれた人を見上げたら、妙に落ちついた視線にかち合った。

その目線がつーっとわずかに後ろを見ていたから、わたしもそれに合わせて……


「うそ!!! なんで置いてくの??」


愕然とした。

それは、生まれて初めての経験。

部族の中にいて、わたしの周りにはいつもたくさんの人がいた。

わたしを一人にしてくれないって文句を言ったこともあったけど、そのたびに


「大事な姫様を一人になんてしませんよ。」

「そうです。あなたは大切な人なんですから。」

「姫様が一人になったとき、何かがあったらどうするんですか?」

「まぁ、貴方様を一人にすることもないですけどね。」

「もし、“何か”があったら命に代えてお守りしますけれど…」


とか、なんとか言っていたのは誰?

遥か遠くに見える背中。

その背をこんなに遠くに見ているわたしは、何?

わたしは、大事な精霊姫で、命がけで守られている姫なんじゃなかったの?


頭の中がぐるぐるする。

みんなの顔が、やさしい顔がぐるぐるの頭の中で、誰の顔かわからないぐらいぐちゃぐちゃになっていった。


何も、わからない。

わかりたくない。


わたしは何もかもが分からなくなって、だけど、そんなわたしの背中に強烈なプレッシャーがどっと押し寄せてきた。

“あれ”の発する、強大で凶悪な威圧感。


殺される!!


何にも、わかんないけど!

これだけはわかって、だけど……わたしには何もできない。

だから、


「なんとかしてよ~~~~」


えぐえぐっと涙を流しながら、わたしは掴んでる腕にぎゅ~~っと縋りついた。

もう、この人しか頼れないんだから、しょうがない。

けど、頼りのこの人はこう言った。


「俺は、一般人だから何もできんぞ。

 むしろ、精霊姫なんだからお前がなんとかしろよ。そいつと一緒に。」


空いている方の手で、わたしはその人が“そいつ”と指差した方を向いた。

そこにはわたしの部族の守護精霊様がいた。


守護精霊様はわたし以外には誰にも見えないと思っていたから、それにちょっと驚いたけど、それよりも“お前がなんとかしろ”って部分がすっごく気になる!


わたしが!

何でよ!!


だって、わたしは何にもできないのよ。

守護精霊様の姿は見えるけど、それだけだし。

何とかするならむしろ、わたしじゃなくて守護精霊様とかあなたじゃないの!!


そんな意志を込めてこの人を見てみた。

そしたら、“お前がするに決まってんだろ”とでも言いだけな目で見られた。


……なんで。。。。


そう思ったのを境に、わたしの目の前は真っ暗になった。






ゆらゆらっと体が揺れてる。

その振動と、「うおりゃっ」とか「せいやっ」とか言う奇声で目が覚めた。


なに??


目を開けたら、視界に大きな炎が飛び込んできた。

赤い炎の巨大さに、わたしの目が点になった。

あんなに大きな火の塊を見たのは初めてで、いったい何なのか、さっぽりわからなかったけど、その火はわたしを焼くことはなく、横を通っていった。


焼かれなかった。


それが分かってほっとしながら、そのあまりの恐ろしさに身がすくんだ。

あまりにも大きな四肢がこっちに来たのには、心臓が凍りつくかと思った。


でも、それが何度も続けば慣れちゃうものなのね……とか、思える自分にびっくりした。

それというのも、


<よく避けられたわね~。

 その子を背負ってるのに、それってすごいわよね。>


そう、どうしてわたしがこの人に背負われているのかわからないけど、この人が奇声を発しながら避けているからだ。

しかも、結構余裕で避けている。

声だけ聞いてると、必死に避けてるみたいだけど、何だか雰囲気が余裕そう。


部族のみんなは我先に逃げていったのに、残った人。

わたしもだけど、みんなが驚いていたときも、この人だけは何だか落ち着いていた。

この人って、何なんだろう?


昨日、草原で倒れていたこの人は、正直力強いかんじでもないし、所謂“できるヒト”ってかんじでもない。

目立つような人でもないし、印象にも残らない。

だから、守護精霊様から朝<連れてきなさい>って言われても、見るまで顔を思い出すこともできなかった。

そんな人が、あの恐ろしい化け物の火の玉をよけたり、一撃を余裕でかわしている。


何者?


わたしの唇がそれを言う前に、守護精霊様にツンツンっと頬を突かれた。

見ると、守護精霊様がシッと唇に人差し指を当てていた。

そして、


<この子起きないわね>


といって、笑顔でこのままでいなさいとアイコンタクトをしてくれた。

それに、わたしもアイコンタクトで「わかった」と返すと、いい子ねと瞳に乗せてまた、ツンツンと頬をつついてくれた。

だから、わたしは無言で、見ていることにした。

背負われているわたしが起きているとは、この人はわからないはずだから。

口から飛び出そうな悲鳴が出ないように、黙って見ていることにした。



それから、何なの?

って思うことばっかり起こった。


ほんと、何なの?

この人?


四方八方、視界全部が真っ赤に染まったときは、もう駄目だって思った。

もう、終わりなんだって……


でも、そんなこと、ぜんぜんなかった。

だって、炎がぴたって止まったのよ!

信じられない!

ぴたって止まったのよ、ピタって。


びっくりしてたら、笑って佇んでいる女の人が炎の中で立ってて。

それにも驚いたけど、それに平然と、しかも納得してるみたいにこの人が頷いてるのにもびっくり!!

しかもしかも、この人が何か言ったら、周りにあった炎が一瞬でポンってなくなっちゃたのよ!

何それ?って言いたくもなったけど、あんまり驚きすぎて声にならなかったみたい。

そして、炎がなくなって驚いたのは“アレ”もみたい。

ギョッとしたように眼を向いて、ざっと毛を逆立てたのをみて、そうよねって頷いちゃった。

更にビックリしたのは……


っていうか、もうびっくりしっ放しだったってことだけ言っておくわ。


あんなに怖かった“アレ”が急に伏せをして大人しくなったり、おっきな首輪が突如現れたと思ったら、“アレ”がいなくなってかわいいけど、ちょっと変わったかんじの子猫がいたり、それとななっっなんと、これって夢?それとも、幻なの?

背に広がる翼に、輪っか。淡い燐光を纏った天使様が!!!!!!!!!


わたし、もう死んでるのかもしれない。。。。



天使様と思しき方を視界に入れた後の記憶はあいまい。

気づいたら部族の家が見える草原にいた。

そして、そんなわたしを見て顔を蒼くするみんな。

なんだか亡霊でも見ているような、そしてバツが悪そうに、祟られたくないとでも手を合わせているみんなを見て……


わたしは、草原に、何もない草原の中を走っていた。


もう、あそこはわたしの場所じゃないって、そう思った。

わたしを捨てたみんな。

戻って助けようともしていない。

ただ、わたしを置いてけぼりにして……

そして、当然のように死んだと思っているみんな。


もう、あそこはわたしの場所じゃない。


ぽろぽろと涙がこぼれた。


もう、帰る場所がない。


草原をひた走って転んで、わたしは泣いた。

泣いて、泣いて、泣きはらして。


<わたしがいるわ>


頭をなでてくれている守護精霊様に気づいたのは、ずいぶん泣いた後だった。

誰もいない。

もう、一人なんだって思っていたわたしに、守護精霊様は優しかった。

その優しさに、わたしは救われ、


<あの人を追いかけてみない?>


その言葉に心が揺さぶられた。

わたしのそばにいてくれた人。

背に背負ってまで助けてくれた人。

そして、未知の力で救ってくれた人。


あの人を追いかける。

それは、とっても心が踊った。


だから、わたしは


「あの人、どこに行ったかわかる?」


<ええ、こっちよ>


立ち上がって、あの人を追うことにした。








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