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神様のお使い  作者: 花香
壱ノ話
7/46

六、俺と任務完了


ぴかっ!!!!!!!!


ひゅ~~~ん、


っっっポンっ!


なんだ、この擬音は!!

その憤りもわからなくはない。

けど、これだけは言いたい!


俺は、決してフザケてるわけじゃないんだ!!


これはもう一度、言っておこう!


「俺は、ふざけて何かいない!!」



<あなた、何言ってんの?>


俺が全力で主張をしていると、横で風の精霊が呆れていた。

そして、もう帰ったと思っていた炎の精霊にすら、大丈夫?と心配された。

それに、俺は……


「何でもない。」


力なくうなだれた。

そして、足もとにいるそいつの首根っこをひょいっとつまんだ。

にゃごぉぉ~~

にゃごぉぉ~~


と鳴くそいつを目の高さまであげ、首元をこしょこしょと擦ってみる。


にゃぐ

にゃぐ


そいつは金色の目を細めて尻尾をパタンと振り、気持ちよさげに鳴いていた。


<これが、“アレ”なのよね?>


小さなそれを怖々と覗きこんだ風の精霊に、俺は「そうだろうな…」と溜息を吐き出すように答えた。




あの時。

神様権限で“にゃんこ”の動きを封じた俺は、赤い首輪を手に固まっていたのだが、突如、冒頭のようなことが起こったのだ。

つまり……こういうことだ。。。



ぴかっ!!!!!!!!


「うわっっ」


首輪と“にゃんこ”の首を見比べていたその時、強烈な光が俺の網膜を焼いた。

ちょっとの間視界が利かなかった俺だが、その光がすぐに収まったためか、光の残像が目に残ったがそれだけで済んだようだ。

今ではその残像さえない。

けれど、俺はそれにほっと一息を入れられるような状態ではなかった。


「何だこりゃ!!」


さっきまで普通の首輪だったものが、今は樹齢何千年の木とかをがっちりと囲めるぐらい大きくなっていた。

重さもかなりある。

首輪の半分以上が地面についているというのに、気を抜いたら膝が地に付きそうなほどだ。


「…………」


俺は首輪を見て、“にゃんこ”を見た。

確かにこの大きさなら、あの“にゃんこ”の首に付けられる。

だが、


「……持ち上げられないんだけど」


そう、問題はこの重さだ。

こんなに重いモノを持って、歩けるかって!

しかも、首輪をかけるには“にゃんこ”の首元まで持ってかなきゃならないんだろ?

ムリムリ。

だって、今これを持って立ってるのもきついんだから。

どうやったって、無理だろう?


その俺の心の裡を分かってもらえたのだろうか?


ひゅ~~~ん


首輪が勝手に動きだし、風を切って“にゃんこ”の頭上へと舞い上がった。

俺は、おおおぉ!と小さく歓声を上げて見ていた。

“にゃんこ”は伏せの姿勢のままなのに、上目づかいで輪っかの様子を窺っていた。

唸り声もあげずに、上目づかいをする“にゃんこ”。

巨体の上にさっきまでの兇暴さからは考えられないぐらい、その顔は可愛かった。

そうチラッと思った俺は、女神様の親馬鹿ぶりを思い出して慌てて首を振った。


可愛いなんて、あってたまるか!


俺は思い直した自分に、うんうんと頷いていた。

その時、


っっっポンっ!


気の抜ける音が鳴った。

音の方を見れば、


「あれ?」


さっきまであった“にゃんこ”の巨体は姿を消し、


「にょごぉぉぉおお~~~」


何か叫んでいるっぽいかんじの子猫サイズの“何か”がそこにいた。




………そして、今に続くわけなのだが、


「翼もあるし、しっぽもそれっぽいから“にゃんこ”だろうよ。」


と投げやりになるのもしょうがないと思うんだ!俺は。


<何、いらついてんの?>


そう言われても、気づいてしまったことがある手前、素直に口は開けられない。

だから、気にするなと手を振った。

それに、あっそっと俺への興味を失ったように“にゃんこ”を見る風の精霊。

それを横目に、俺は額に手を当てた。


最初っから出してりゃよかったんだ。


ほんとに今さらだが、今になって俺は首輪の構造がわかった。

さっきまでの一連の出来事を見れば、誰でも判ることではあるが……

つまりだ。。。


首輪は首輪だったってことね。

大きさとかは関係なく。


俺は大きく肩を落とした。ついでに深く深くため息をついた。

神様がくれたんだから、疑いようもなく“にゃんこ”用の首輪だったのだ。

だから、さっさと出せばよかったのだ。

“にゃんこ”を見た、その瞬間にでも。


そしたら、髪が焦げることも、ぷつぷつと切られることも、必死こいて逃げる必要もなかったんだ。


俺は所どころ焦げてたり、持っていかれている髪の毛を見た。

ほんとうに、馬鹿だろ!俺!!

ずーんっと自己嫌悪に陥りたくもなるってもんだ。


にゃご?


さわさわと首を掻いてやっていると、沈んでいる俺を見上げて、“にゃんこ”がどうした?という目で見てきた。

その上目づかいは反則的にかわいい。

ぅうっ、やられた~~と身もだえている風の精霊が気持ち悪いが、その気持ち事態はわからなくはない。

神様にぐりぐりと可愛がられそうな可愛さがあるのは確かだった、が


お前のせいで、こっちは落ち込んでんだよ!

そもそも、お前が逃げ出したりしなけりゃ、こっちはこんな面倒事しなくて済んだんだからな!


と俺が叫ぼうとした瞬間、


<御苦労、御苦労>


頭の中に声が突き刺さった。


<わたしのにゃんこが見つかってよかった。その子を“このこ”に預けてね>


その声がしたかと思ったら、一瞬前まで何もなかった草原に、一人の女性が立っていた。

背に翼、頭に輪っか。

どう見ても天使だと思うが……まぁ、俺には関係ないない。

彼女の手に、「はいよ」と“にゃんこ”を押し付けると、彼女はぺこりと軽く頷き空に飛び上がった。

そして、すっと空に溶け込むように消えた。


こうして俺は、今回のペット脱走事件を無事に解決したのだった。

報酬無し、強制労働。


「はぁ~~~~~」


ほんと、俺ってかわいそうな“一般人”だ。




~後日談~


「薬草、採ってきてくれました?」

「えっ?」

「薬草採ってくるっていってたじゃないですか!」

「あっ!」


一仕事終えて戻ってきた俺に、マージナルの同僚が目を怒らせた。

“にゃんこ”のことが解決した俺は、緩みまくっていてすっかり忘れていた。

やっべ~~と俺の顔に書いてあるのを見てとった同僚は、ますます目を怒らせ、っと不意に視線を俺の後ろへ向けた。


「それに、あなたの後ろにいる子、何なんです?」

「はぁ?」


何のことだ?と思い後ろを向けば、「やっほ~」と至近距離で手を振る姫さんがいた。

何故、いる?

あの後、部族のもとに戻ったんじゃないのか?

視線で問えば、


「追いかけてきちゃった」


てへっとどこで覚えてきたのか、可愛らしい仕草で何でもないことのように言いきった。

姫さんの斜め後ろには、姫さんと同じ仕草をしているいつぞやの風の精霊。


ほんと、何で追いかけてきてんだよ。


俺の嘆きは姫さんにも、精霊にも、同僚にも届くことはなかった。



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