表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様のお使い  作者: 花香
六ノ話
44/46

四、俺と空飛ぶ島


そしてたどり着いた場所に、性懲りもなくぽかんと開いた口が塞げない。


「マジっすか……」


「この先、目的地」


「そう……」


もうため息しかでない。


「なんで、こんなとこにいるんだよ。」


そして、恨みごとの一つも言いたくなる。

同時に、今回の危険な超上空飛行の理由に気がついて、またため息が出た。


そんな俺が今いるのは、雲の上の楽園。

天に最も近いとされる、天空の島にして聖獣の島。

地上で言うところの、幻の楽園を見渡せる場所。

つまり、超上空にぷかぷかと何で浮かんでんだよ! 

と言いたくなるような、異様な雰囲気がある島を見下ろす場所にいる。


「ってか、マジでこんなとこに島なんてあったんだな」


幻と言われるだけに、空想上の島なんだと思っていたんだが……

そんなばかな、天空の島なんて、ないない。

島が浮いてるだけじゃなく、聖獣の島なんて夢物語、嘘っぽいだろう? 

―――と思ってたのに、本当だっだとわ。


新たな事実を目の当たりにして、ちょっぴり感動してしまう。

けど、俺に感傷に浸る暇はなかったらしい。


「……危険域間近。降ります」


ひどく淡々と告げられた声に、俺はただ了解と呟くしかなかった。


「本当に、何でこんなとこに悪魔がいるんだよ……」


あとに続けた呟きは、急降下で発生した風に巻かれてどこにも響きゃしない。

まぁ、正直どうでもいいことではある。

誰に言うことでもないし、返事なんか期待もしちゃいない―――


「詳細不明」


「………そうですか」


俺の呟きに律儀に応えながら、黒い羽はますます勢いをつけて降りていく。

遠かったはずの島は、だんだんと近づきその様相を現していく。

そして、俺は


「はぁ、まじで? ありえなくね?」


近づく島に思わず突っ込んだ。




緩やかな風が頬をなで、青々とした葉がさわさわと揺れる。

草木の生命力はたくましく、美しい。

その中で、獣たちが穏やかに歩いている。


「ありえねぇーーー」


その光景に目眩がして、思わず手で顔を覆ってしまう俺は、決しておかしくないと思う。


「何なんだよ、これは」


幻とまで言われた聖獣の楽園なんだからっていっても、だ。

目をこすって確認してしまうぐらいのことはしたくはなる。


いや、さ。

普通に考えてくれよ。


ここは、遥か彼方の超上空なわけでさ~。

そんなとこに浮かんでいるのだけでも、何なんだよって感じなんだが……


そんな場所で吹く風が、微風。

緩やかな風っておかしいだろう?

強風希望ってわけじゃないから、俺的には大歓迎だけどさ~。

それとこれとは別だろう?

しかも、適温とかになっちゃてるし、訳分からん。


あれか? 

島になってる時点で風は微風に変わんのか? 

寒さが地上並みになんのか?


んな、わけねぇーだろうが!

それに、この島の植物とかもおかしいだろう!!


なんでこんな雲を突き抜けて雨も降らず、強烈な陽の光を浴びている場所で健全に植物が育つんだよ。

ここで育つぐらいなら、風岬の大峡谷だって不毛の土地に何かなってない!!


「まったく、どんな力技だよ……」


幻の楽園だからで納得したくない状況の中、俺は投げやりな気分になってしまった。


「天の力」


「まぁ、そうだろうとは思うけどさ」


『ボクらの力』


「まぁ、それもそうだろうけどさ」


ここは地に属する場所であって、地の場所ではなく、天の属する場所であって、天の場所ではない。

曖昧な場所ではあるが、天の御仁方が降り立つには最適なんじゃないかとは思う。

地に属していても、地上には影響しない場所だから地上に降りてくるほど配慮することもないしね。

自然、ここは天の御仁方の気配が濃くなり、余計な力が溜まっちゃたんだろうな~。

そのせいっていうのも変だけど、力が溢れてる所で精霊が生まれるのは必然。

精霊が増えれば、環境も整ってくるだろうし、精霊たちも住みやすいようにするだろうし。

けど、


「それにしても、力技すぎだろう」


緑豊かな楽園に、俺は関心すればいいのか、呆れればいいのか。

まったく、この世はまだまだ知らないことばかりだ。


「この秘密を解き明かしたいと思うだろう?」


「……はぁ?」


俺が島の不思議に頭を振っている横で、声がした。

というか、第三者が急接近して嬉々として近づき、肩を思いっきり掴まれた。


「この不思議な現象を解き明かし、これを応用できれば面白いことになると思わないか?」


「……」


「力が力を呼び、こんな現象を創ることはすでにここが証明している。

 しかし、まだはっきりと確証を得ていないのは、どういった土地ならそうなりえるかなのだよ。」


「……あの」


「地上から離れているのならよいのか。

 それとももっと他の条件があるのか?

 それがわかれば、吾は偉大なあの方をその地へ誘おう!」


「……すいません」


「そしたら、どうなると思うかね、君?

 君にも、わかるだろう?」


「……えーと」


「そう、吾らの偉大なるあの方の祝福に満ちた世界が広がるのだよ! 

 ああ、吾らの偉大なるあの方が降り立たれる地は、いかに素晴らしい土地になることか。」


「…………その~」


「君もそう思うだろう?

 ああ、素晴らしい!

 想像するだけでもこの身が震えて仕方がないよ」


「…………それは、あなたの身体が蒸発しかけてるからでは?」


『きっと、そうだろうね』


「悪魔だから、それが必然」


自己陶酔に浸る第三者、もとい依頼された悪魔から、どす黒い煙がしゅわしゅわと立ち昇る。

煙が空に消える度に、悪魔の存在感も小さくなっていく。

そんな尋常じゃない現象に見舞われているというのに、悪魔は御仁への賛美を深めるだけで、自分のことを省みようとはしない。

いったい、この悪魔はなんなんだと言いたい。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ