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神様のお使い  作者: 花香
六ノ話
43/46

参、俺と残された黒羽


呆然としていると、ひらりと羽が落ちてきた。

家で拾った黒い羽と同じものみたいだ。

その羽にはまたメッセージがついていた。


“この者を頼む。場所については羽に聴いて欲しい”


「はぁ?」


いや、なんていうか、


「えっ、なにそれ?」


黒い羽から立体映像が飛び出し、人物の特定はできたが、何だそれ?

羽に聴けってなんだよ。


もしも~しとか、声かければいいんですか?

声かければ、羽が俺をそいつのとこまで導いてくれるのか?

おいおい、そんなわけないだろう。


……ない、よな?


ってか、ない――――ってのが、ないのか?


天の御仁方の対となるような彼の方は結構、誠実だ。

彼の方がおられるのは、天の御仁方がいる世界と対となる世界。

いわゆる魔界と言われるところに坐している。


地上種の妄想の中では、悪の総統。混沌の象徴として見られているが、見られているだけ。

実際に遭ってしまえば、むしろ天の御仁方よりも優しいし、温かみがある。

頻繁に会うことはないけど、わりと彼の方の在り方は俺が好むところだ。

それでも、やっぱり厄介事を押し付けるところはどうかと思うし、そんなとこは天の御仁方と同じじゃなくていいと思ってはいるけど。


そんな、彼の方が渡してくれたものだけに、完全に否定ができない。


いや~。

天の御仁方のくれるアイテムとかだって、本物しかないんだけどね。

気分的なもんだよ、それは。

やっぱり、日ごろの行いって大事だろ?

いつもイジメかと思うような厄介事を押し付ける方より、信頼性は増すって。

その辺りは仕方ないと思うんだよね。


ってことで、まぁ、とりあえず……

ダメでもともと。


「もしも~し」


めちゃくちゃ小さい声で、ぼそりと羽に声をかけてみたわけなんですが……


……………


無反応。さて、もう一回? それとも? いや、まずはもう一回か。

さっきよりも少し大きく。


「もしもし?」


……………


――――やっぱ、


「…………なに?」


やっぱ無理だよね~とか思っていればぼそりと微かな声がした。


―――微かな、声が、した?


「えっ?」


「なに?」


あっ、やっぱ羽が話してる。

ってかまじで、羽が話してんのか?

どっか、他のところから声が……


「なに?」


「えっと……」


咄嗟に、出てこない。

羽から声がするとか、ありなのか?


「なに?」


俺が混乱する中、不機嫌そうに同じ言葉がかけられるが、俺はしばらく「えー」とか「あー」しか言えない。

それを受ける羽は「なに?」しか言わないし……。


かなり不毛な会話とも言えない会話が続く。

ってか、もしかして「なに?」しか言わないってわけじゃないよな?






なんて、思っていたあのときのことを思い出しながら、俺は今、目の前の光景に圧倒されている。


「うわっ、すげ~」


真っ青な空と、白い雲。そして、太陽の輝き。

あるのはそれだけだが、青い空に浮かぶ雲の切れ目から覗く光の柱や、バリバリと呻る雷雲は壮観だ。

それは普段、見ることが叶わない幻想的なまでの美しさを感じさせる。

感じさせる、が……


「こえ~~~」


ひゅんひゅんと風を切る音に、身体に当たる豪風。

半端ない寒さにがたがた震えながら、ひたすら腹ばいになって何とか凌いでいれば、その感動もすぐに吹っ飛んじまうって!


そう、いま、俺は、なぜか、遥か、上空を、飛んで、い、る~~~~~。


ってか、さーむーいーーーー!!!


寒さを何とかしようと身体を丸めれば、かえって身体に風が当たって寒い。

かといって、ペタンと腹ばいになっても変わらなかった。


「なぜこうなる?」


風岬の大峡谷に来た時なんか目じゃないほどの上空。

鳥どころか、魔鳥ですら飛ばないような超上空に。

しかも、巨大化しただけの黒い羽に、どうして乗ってんだ、俺!


「なぁ、ほんとに、大丈夫なんだよな?」


「……平気」


俺の生死に直結する疑問にちょっとの間の後に響く声が、非常に不安になる。

俺の安全はこんな荒れ狂った風の中、保障されてるのか?

この寒さで凍らないのは、奇蹟なんじゃぁ――――


『離れていい?』


瞬間、さっきとは比べ物にならないほどの寒さに襲われる。


「って、悪い。お前のおかげだから、俺から離れていかないで。

 この寒さからだけでも守ってください。お願いします。この通り!!!」


『ふんっ。まったく。』


不機嫌そうな声をだしつつ、俺の側にぴたりと張り付いてくれたのは、風岬の大峡谷で勝手気ままに過ごしていた風の精霊だ。

羽にしがみつく前に交渉しておいて、本当によかった。

こいつのおかげで、凍死しそうな寒さから身体が震えるぐらいの寒さに戻る。


「ありがとう」


礼を言えば、『ふんっ』と顔をそらして照れる姿は、この羽にしがみついている過酷な状況下では癒しだ。

しかも、さっきよりも寒さも和らいでいる。


こんなに助けてくれるとは。

まじで、ありがたい!


そんな風に、俺が感激しているところに、恐怖の声がかかる。


「スピードをあげます」


「いや、ありえないだろ!

 ってか、今の段階で早すぎだろうーが!!」


「いえ、まだいけます」


「って、おい、俺は――――」


「あげます」


反論する間もなく、更にスピードがあがる。

おかげ様で和らいだ寒さは元通り。

風の勢いは更に増した。


ほんとに、ありえねぇ~~~~~


ってか、どっから声出してんだろう、こいつ?

声って思ってるだけで、思念なのか?

まぁ、そんなことはどうでもいいか、取りあえず今思うのはこれだけ。


「マジ、怖いって」


いや、ほんとに。

不毛な問答のあとに突如、御仁がくれた黒羽が巨大化して今に至るわけだが、何故こんな超上空を飛んでいるのかはさっぱり分からない。

行きと同じように、あの巨鳥とかが運んでくれればいいのに。

よりにもよって、なんでこんな薄っぺらい羽に乗らねばならないんだ?

しかも、スピード狂かよって言いたくなるぐらいに飛びやがって。

俺を、殺す気なんじゃないか、この羽め!!


もう、本当に勘弁してもらいたい。

なんで何もできない俺が、こんな過酷なことをせにゃならんのだ!

御仁の御力なら、ぱぱっと瞬間移動とかできるだろうに。

わざわざ、こんな危なっかしい乗り心地ので飛ばなくたっていいじゃないか。

なにか、俺に恨みでもあるっていうのかよ!


そんな恨みごとをグチグチと唱えながら、俺はひたすらぶるぶると寒さと恐怖で震えていた。

俺に張り付いている風の精霊も、何気に震えているのは、もしや――――――


『ボクよりはやいなんて、悔しい!!』


ああ、悔しがって震えてたのか。

ってか、風の精霊もスピード狂なのか……


がくりと俺は、羽に突っ伏してしまった。

もう早くこの状況から抜け出したくてたまんないよ、俺は。




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