表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様のお使い  作者: 花香
六ノ話
41/46

壱、飛翔せよ! 依頼主までひとっ飛び?

「なんだ?」


目の前をひらりと何かが過ぎって、思わず手が出た。

柔らかくって、頼りない感触。

手に掴んだのは、真っ黒い一枚の羽だった。

この辺りの鳥にしては大きい。


「ってか、これ鳥の羽じゃなくない?」


よく見るまでまでもなかったか。


――――風岬の大渓谷にて待つ


そんなメッセージ機能のついた羽なんて、その辺の鳥どころか、どこにもいない。

これはただ単に羽を真似ただけだった。

多分ってか十中八九、このメッセージを送った誰かさんの趣味だ。

そして、その誰かさんの心当たりはというと――――


まぁ、ばっちりあるよ!

すぐに思い浮かぶぐらいには、ばっちりとね!


……って、あるにはあるけど、なんていうか、なんかな~


「会うのとかは、全然いいんだけど。

 むしろ久々にお会いできるのは嬉しいけど……

 問題は場所なんだよな~」


風岬の大渓谷といえば、草木も生えない不毛地帯。

人も獣も住めない大地に、ぼっかりと口を開けている裂け目の底は果てしない。

どこまで続くかわからない大地の裂け目から、世界の絶望とも言われている。

自殺志願者すら避ける、怖ろしい渓谷なのだ。

そんなところに来いと?

ちょっと、イヤだなと思うぐらいには行きたくない場所だ。


まぁ、呼ばれているからには行くけどね。

それに、ぶっちゃけ別にそこに行くのは、いいっちゃ~いいんだ。

けど、問題は移動手段だ。

そんな怖ろしいところに、連れてってくれる業者さんなんかいないよ?

観光地とかになるわけもない、めちゃくちゃ辺鄙なとこだし。

ここから行くにしても遠過ぎるんだよね。


さて、どうしたものか?


そうメッセージを見ながら考えていれば、「くわっ」と窓の外から鳴き声が聞こえた。

なんだ、なんだと見てみれば、


「さすが、よくわかってらっしゃるようで」


そこには、大きな大きな鳥が滞空。

俺の3倍はゆうにあるだろうほどの大きさに、若干及び腰になったのは、何も俺がビビりなせいじゃない!

普通に、窓の外にこんな大きな鳥がいたら驚くだろう!

しかも、そいつが俺をじっと見つめてくるのだ。


恐いだろう? 恐いって思わないか?

そいつの眼がギロッて睨んでくるんだぜ。

まるで、これから食べてやるぜぐらいの目線で!

恐いって!


「くわっ」


でも、鳥にとっては俺の恐怖心なんか関係ないらしい。

滞空状態のまま、するりと背を向け、振りかえりざまもう一声。


「くわっ」


どうやら、さっさと乗れってことらしい。


「それでは、失礼しま~す」


眼光鋭い鳥に気圧されつつ、そっと背中に乗る。

ふわりとする羽毛は、滑らかで手触りが最高!

なんか、テンションあがって、さわさわしちゃったりとか……


「くわっ」


「すいません!」


どうやら、ダメらしい。

残念だ。


そんなこんなで、気づけば俺は巨大な鳥に一路、風岬の大渓谷へと運んでもらうことになった。

余計なお触り厳禁! そんなことしたら落としてしまうぞ!

というちょっぴり切ない気分になりながら、遥か彼方へと向かうのだった。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ