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神様のお使い  作者: 花香
伍ノ話
36/46

四、俺とげんなり砂漠旅

随分あけてしまって、すいません!!

みなさまに楽しんでいただけたら幸いです。

それでは、どうぞ~~


「はぁ~」


精霊たちにノリで殺されかけた俺だが。。。

砂漠横断のあまりの、そう、あまりにも辛く過酷なこの横断に、懲りずに何度か頼んでみた。

この灼熱地獄の中にいるよりは、少しでも……いや、もしかししなくても大幅に改善しうる存在が眼と鼻の先にいるのだ。

頼まないほうがおかしい。


と、何度も思って、何度も頼み、何度も後悔して、それでも懲りずに頼んでみて……


結局頼むのは諦めた。


「あぁー」


暑くて、だるくて、しんどい……


けどね~今のあいつらには頼むのなんか、無理無理。

何回頼んでも、何度試してみても、所詮酔っぱらい。

どんなに言葉を尽くしてもあいつらにまっすぐに届かないんだよ。


凍るは、暗闇に閉じ込められるは、風で飛ばされるは……散々だ


「ふぅー」


御仁がいるだけで、精霊がこんなことになるなんて……


「はぁ~」


きゃらきゃらご機嫌な精霊たちを見る俺は、大きな溜息が後から後から出てきて止まらない。

無駄に多くいるんだから、1体ぐらいまともな奴がいてくれてもいいのに。


「はぁ」


とぼとぼ歩きながら、また一つ。

そんな俺の様子が頭に来たのか、俺より龍一頭分前を歩いていた御仁がじろりと凶悪な視線を向け、間髪いれずに怒鳴ってきた。


「うるさい!」


「いてっ!」


もれなく拳骨らしき衝撃を頭上に入れるという、器用なおまけつきで。


はぁ、がんばって愚痴らず、騒がず、粛々と御仁の後を着いて行くしかないわけですか。


「はぁぁ」




って思ってるのにも限度ってあるよね!


「どこまで歩けばいいんですか~」


すたすたと歩く御仁に、俺は疲れ切った声で問う。


いや、ね。

これが、ちょっとやそっとのことなら、俺だって我慢するよ?

あんまりグチグチ言ってれば、またぞろ御仁の機嫌がまだ下がんの? 

ってぐらい下降することなんてわかってるからね。

一度はため息も我慢しようって、小さく心で誓ったりもしたさ。

でも、それにも限度があるってのは当たり前のことだろう?


「ああ、夕日がきれいだ……」


砂漠で見る夕日は、妙に大きく感じる。

それは風にさらさらと流れる砂に、赤々とその色を混ぜるからだろうか?

遥か彼方に沈む太陽は、目を細めても眩しく感じる癖に、ひどく穏やかだ。

あんなに仄白く反射していた砂が、急速に色を変えていく。

白から、黄色へ。黄色から赤へ。そして赤から紫へ。

刻一刻と沈む夕日を追うように、砂漠もまたその色合いをくるくると変える。

それは、ひどくきれいな光景だった。


だったが、だ――――


「うれしくねぇ………」


それが見れて、「まぁ嬉しい!」なんて言えるわけないってーの!

あれからどれだけ歩いてると?

砂漠観光ツアーに来てるわけでもないってのに、砂漠の夕日に感動できるわけない。


「もう、いやだ」


砂漠を渡る格好ではないだけに、長時間灼熱の太陽に曝されたせいで、体中が痛い。

最早日焼けなんてもんじゃなく、火傷だ火傷!

顔も手もジンジンと熱を孕んで痛みだしている。

明日と言わず、今夜にも肌が剥けそうだ。

体中にまとわりつく砂にも辟易する。


こんな状態で景色にうっとり、感動しまくることなんかあるわけがない。

きれいな景色よりも、目的である未知の物体に遭遇したい。

そんでもって、さっさとここから帰って、砂まみれの身体をさっぱりしたい!


ああ、もう!

ほんとにザラザラするのはイヤなんだよ!

髪を払えば砂が落ちてきて目に入りかけるわ、口がガリガリするわ……

服の間に入りこんだ砂も、地味に肌をこすって痛覚を刺激するしで、ほんとに頭にくる!

この不快さを一発で解決できる方法が目の前にあるのに、それが出来ないのもムカつく!


もう、もう、もう、ほんとうに


「いーやーだーーーー!!」


「うーるーさーーーーい!!」


思わず夕日に向かって叫んだ思いのたけに、御仁の思いがこもった鉄槌がゴツンッと降ってきたのはほぼ同時だった。

気力、体力がすり減っていた俺は、夕日が沈む砂漠よりも早く、一人暗闇に吸い込まれていった。




「さむっ」


ひゅるっと身体を撫ぜた風に、ぶるりと震えが走った。


「気付いたか?」


寒さでうっすらと目を開ければ、暗がりにも関わらず神々しく輝く御仁が目に入った。


「ええ」


生返事をしながら、ぐいっと身体を起こす。

立ち上がろうかなとも思ったけど、少し離れたところにいた御仁が側に来てくれているので、座っていることにした。

来てくれるんなら、こっちから行かなくてもいいし。

正直、身体の節々が痛むから助かる。

投げ出している足は、締め付けられるように痺れて……


うん? 痺れる? 何で?


何で締め付けられるように痺れてるんだ?

いくら疲れているといっても、痺れたり、まして締め付けられるような感覚になるなんてことはないはずだ。

なのに、何故?


俺は首を傾げながらそっと目線を下げた。


「はぁ?」


すっとんきょうな声が出る程度に抑えた俺はなんて理性的っ!

……じゃなくって、あまりの事態にただただ硬直してしまった。


これは一体どういうことなんでしょうか?


思わず御仁に目だけで助けを求める俺の態度は、間違っていないと思う。




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