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神様のお使い  作者: 花香
四ノ話
27/46

壱、放り込まれて洞窟任務!?

「う~~~~わ~~~~~~~」


なんかきてるよ!

こっちに、やって、き て  る~~~~~~~


「く~~~~~る~~~~~~な~~~~~~~~~~~」


ひ~~~、なんか黒い物体がこっちにきてる~~

しかも、ケタケタ笑いながらきてるよ~~~~


≪それ、全部片付けてくれたらいいからね~≫


≪期待していますわ≫


≪おぬしに渡したそれがあれば、ちょちょいのちょいじゃ≫


あはは、おほほ、ふふふっ。

彼らの笑い声に俺はひっっと悲鳴をあげた。


冗談じゃない!


そう言いたいところだけど、


「ええいっ!くっっぅっっっそ~~~~」


わけのわからない洞窟の中、黒い何かに追いかけられている俺には、文句を、言ってる


「よ、ゆ、う、が、な~~~~い~~~~~~~」


ひ~~、勘弁してくれよ~~~~

きてる、きてる、きてる、きてる~~

まんまるの黒い物体とか、とげとげの黒いのとか、四角いのとか、ぶにょぶにょのが、


「い~~~や~~~~だ~~~~~」


俺のすぐ後ろを、ケタケタ笑いながら追ってきてる~~~


夢に見ちゃうよ!

トラウマになっちゃうよ!

もう、これは、


「逃げるしか、ないだろ~~~~~~」


ひたすら全力疾走!!!!!!!!!

これしかないだろう!!!!!!!!



っということで、どうして、こんなことになっているのか、聞いてくれるか?



ことの起こりは、いつものごとく呼び出しをくらって、いつものように出向いたときだ。


≪最近、異常気象が起こってなあい?≫


何気なく切り出されたセリフに、俺はここのところの気象を思い出した。

確かに、最近やたらとおかしいことが起こっている。

北の方では雪が一夜にして溶け、雪祭りの最中だったそこでは観光収入がゼロどころか、ありえない水害のせいでマイナスになったとかなんとかいっていた。

かと思えば、リゾート地として有名な南国のパラダイスが、過去最低気温を軽く更新してマイナス5℃を記録し、ついでに100年ぶりの雪を観測したとか。

んで、南国特有の生物の危機とか叫ばれていた。


そのせいで、気象系に強い魔道師、魔術師、魔法師はマージナルからも民間ギルドからも、果ては国家の魔法連隊たちも駆り出されて対応する羽目になっていたはずだ。

昨日は、その手続きとかなんとかで対応に大わらわだった。


あれは、疲れた。

かなり、疲れた。


手が空いてるのを手配するのも、国から予算をブン取るから根回ししろとか、民間にも国にも負けないぜとかなんとか、わけわからん理由で上から言われたときには、は~? 何言っての? とか他人事みたいに思ってたのに、なんか、周りがやたらと盛り上がったせいで、俺まで、俺まで……


なんで、あんなに仕事しないとなんないんだよ!

ほんと、徹夜になるんじゃないかって、泣きそうだったよ。マジで。


あのときのことを思い出して、俺はちょっと思い出し笑いならぬ、思い出し泣きが出来そうだぜ。

まったく!


≪聞いておるか?≫


おっと、いけない。

昨日のことを思い出してたら、すっかり。

俺は居住まいを正して彼らを見上げた。


≪あれね~。実はね……≫


「はい。」


≪風邪ひいたからなのよ。≫


「はい?」


風邪?

なんか、唐突すぎてわけわかんないんすけど?


≪雪の姫神は、身体が弱くてな~≫


いや、だからですね~。

何の話です?


≪そうなのよね。季節の変わり目によくかかるし。この時期は免疫力が落ちるのかしら?≫


≪う~ぬ……そうではないのではないか? あの子はがんばり屋さんだからな。きっと、過労ではないかの~?≫


≪そうかもしれんな。もっと労わってもよいと思うのだがな。≫


「しみじみとしているところ、申し訳ないですが、ほんとに何のことですか?」


≪うん?わからんか?≫


「ぜんぜん。」


≪だからな。あの子が風邪をひいたんじゃ≫


だから、それの意味がわかんないんすけど?


≪それでね。あの子の管轄は“雪”なのよ。≫


 ゆ き  ? 

 ま さ か


≪体調を崩しておるからの~。調整ができんのじゃ。≫


だから、地上は大変なことになってると?


俺の無言の疑問に、御仁方は力強く頷いた。


≪それで、今回のお願いなんだが……≫


≪あの子のために、病魔を倒してきて欲しいの。≫


≪今回はなんと、特別サービス付きじゃ! 喜び勇んでちょちょいとやってくるのじゃぞ!≫



それじゃ~~がんばってね~~っと言われた次の瞬間。


「へっ?」


俺は見知らぬ洞窟の中、一振りの剣を手に突っ立ていたのだ。

そして、冒頭に戻るわけだが……………




「ようは、あれを、何とかしないと、だめってことか?」


ぜーはーと肩で息をして呼吸を整えている俺は、真っ黒いのがいないことを確認して腰を下ろした。

っていっても、完全に座ってはいない。

すぐに立てるように片膝立ちだ。

じゃないと、黒いのがまた来たときに対処できやしない。


「あれを、倒せってことであってんだよな?」


御仁方の言ってたことを反芻して、俺はあの黒いのが病魔なんだろうな~とため息をついた。

そして、あの黒いのを全部倒さないと、俺はここから出ていけないんだろうと確信して、さっきよりも大きなため息をついたのだった。



そんなこんなで、「こんなとこでため息ついててもしょうがないか」と思って歩き出した俺だが、


「なんじゃこりゃ?」


歩き始めて十数歩。

まだ、1分も経っていないってのに、俺の視界は奴らに占領され、しかも……


あ~~なんか、もうだめ。

もう見たくない。

ってか、これ誰かウソって言ってくれない?


人間、自分が把握できないってか、したくない事態に陥ると、考えることを放棄したくなるんだな~と実感しちゃったよ。

ほんとに、いやになるね!

なんだよこれ!!!!


目の前には、大小様々、形も色々なまっ黒けとか、青みどろとか、どす黒い紫とか、ごちゃごちゃな斑とかがいて。ついでに言うとケタケタ笑ってたり、ガオガオ吠えてたり、シクシク泣いてたり、フンフンっと歌ってたりと、なんかかなり混沌としている。

さっきはケタケタ笑っているまっ黒けだけに追われてたから、病魔ってのは全部そいつらのことだと思ってたけど、そうじゃなかったんだね。

へ~~~。ふ~~~ん。

そうなんだ~~~。

あははははははははっっくぅっぅ~~~


もう、泣いてもいいですか!!!!!!!


かなり、きもい。

かなり、きしょい!

ってか、見てると気持ち悪くて吐きそうだよ。


これを倒す?

ほんとに、これ倒すの?

これで?


俺は人形のような動作で、右手で握っている剣を見た。

どこにでもありそうな味気ない柄とは対照的に、鍔から伸びている刀身はあまりにも美しすぎる。

何を打てばこうなるのか?

俺の頭じゃ到底わからないその刀身の色は、光を固めたかのように純然たる白。

優美にして繊細なそれは、確かに神々の祝福を受けていると一目でわかる。


………けどね~、わかっちゃいるよ。

そりゃ、これでアレを切りゃ、倒せるんだろうな~とは思うけどさ。


これ、衝撃波とか、光線とか飛び出ないかな? 

飛び出ないよな。。。

はははは………はぁ~~


ってことは、つまりってか当たり前だけど、あいつらの側までいってバサバサ倒さないといけないに決まってんだよな。

うわ~、まじでイヤなんだけど。


真っ黒、ケタケタ。

青みどろ、シクシク。

どす黒紫、ガオガオ。

ぐちゃぐちゃ斑は、フンフンっと。


ちらっと見て、ぱっと目をそらした。

ちら見しただけでも、インパクトがでかすぎる。

やりたくない。

逃げ出したい。


「……けどな~~~」


後ろをちらっと振り返った。


「もう、逃げ場がないんだよな。」


声に出して言ってみると、余計ズーーーンときた。


さっきから、わかってはいたさ。

なんか、うるさいなとは思ってはいたさ。

けど、まさかこれほどとは!っと目を剥くってか、目にしたくない光景が広がってるとは思いたくはなかった。


前も後ろも、カオスだ。




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