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神様のお使い  作者: 花香
参ノ話
19/46

参、俺と本当の依頼【前編】

ミニミニサイズの天使様ことチビと出逢って7日、チビに示された道を歩き始めて6日が経っている。

俺とチビとの関係は当初と比べると、まぁイイかなって感じだが……


「これから、どうすりゃいいんだ?」


<わたしに着いてくれば、それでいいのです>


チビといえども天使は天使ってことなのか。

それともこいつの性格なのかもしればいが、横柄な態度は相変わらずだ。

若干最初の頃よりもよくなったのは、その語気の中にこちらを窺う要素が含まれていることだ。

3日前の朝っぱらからの説教が効いたかな?

それとも、教育的指導のおかげかな?


「それで?」


つんっと澄まし顔のチビは、ついっと俺から離れて前へと進む。


<ここを抜けます>


「どうやって?」


間髪いれずに問うた俺に、チビはむっとするが、言わせてもらう。


「どうやって?」


チビの指し示したのは洞窟。

ただし、洞窟は洞窟でも完全に入口が塞がれていて、入ることができない洞窟だ。

隙間なくびっしりと落石で覆われている洞窟を、“洞窟”だと認識できる(わかる)のは、若干ながら周囲の壁と年月の差があるからだが、それもよくよく見ないと分からない。

この洞窟が落石で塞がれたのは、ここ何カ月とか何年なんかじゃなく、十数年単位なんじゃなかろうか。

下手すると何十年前とかに塞がれたのかもしれない。

じゃなきゃ、苔とか蔦とかがこんなに張り付いていたりしないだろう。

従って、重ねて「どうやって?」と訊く俺は、絶対に悪くないし、間違っていない。

だというのに、


「なんで、そんな目で見るんだよ」


チビの目はメチャクチャ俺のことを見下し、バカにしまくっていた。




<っこっこここちらから、どうぞっっっ>


それから数分後、洞窟を覆う岩に手を翳したチビの手が淡い輝きに包まれたと思ったら、ずずずっと鈍い音を立てながら岩が地中へと沈んで行った。

「おおっ!」ってちょっと声が出るぐらいには驚いた。


やっぱ、天使は天使なんだな~。

人間にはできないとは言わないが、俺には逆立ちしたってできない芸当を見せられれば感心もするってもんさ。

やっぱ力あるモノはすごい!

目をキラキラさせて、尊敬の眼差しとかは送らないけど、心の中では一応拍手しておこう。


いや~、こんなすごい力があるのにね~。


つ~っと視線をやれば、


<わわわわたしの後を、つっ着いてきてください>


かなりどもりながら、涙目で俺の前を飛ぶチビ。

そんでもって、


「中、暗いけど?」


ぼそっと言った俺の声に、はい~~~っと悲鳴にも似た返事をして明りを生み出し、洞窟を照らすチビ。


うん、教育の賜物だな。


やっぱ、天使様といえども協力者には親切にしないとな。

それに気付いてくれて、よかった、よかった。

数分の間に何があったかって?

いやいや、それは聞かぬが花って奴だよ。

天使様にも見られたくないものとか、聞かれたくないものの一つや二つはあるって。


<もう、許してください>


お尻を抑えながら、うるうるとこっちを見るチビなんか知らないよ。

天使ともあろうものが、こんな矮小な地上種、しかもそんな中でも取りに足らない“一般人”に、幼児のようにお仕置きをされて泣いてるなんて!

いやいや、天使様に限ってあるわけないじゃないか。

ね~、チビ助。


<ううう、こっち、です>


屈辱的なのか、顔を赤らめながら、それでも最早横柄な態度をしないように気を付けているチビの後を、俺は悠々と着いて行くのだった。




さて、どうしたものか?


俺はチビの後ろを追いながら、考えを巡らす。

というより、やっと考えを巡らせるだけの余裕ができたから、考えることにした。


これから、どうするか?


おっと、そういえば、今回の俺のおかしな点に気付いているだろうか?

今回俺が、チビといえども天使を相手に強気でいるという、このあり得なさに。


実を言うと、俺がこんなにも強気な態度を取れるのには、裏がある。

思い出すのは3日前の真夜中。

お説教地獄をチビにブチかますまで、後数時間。

チビに振り回されて死にかけて、疲労困憊。

もう、一歩も動けん! ってことで、泥のように眠りについたはずの真夜中。

俺は不意に目覚めた……のではなく、


<おはよう>


極上の笑み。麗しい美声。

けれど、決して優しくも何ともない御仁方に、俺は、無理やり起こされたのだ。


「真夜中におはようも何もありませんが……」


御仁方相手に、こんな皮肉も言いたくもなるぐらい、本当に優しくない起こされ方だった。

何せ、疲労困憊で身体も精神も睡眠を欲求し、それこそ前後不覚、失神同然で寝ていたのだ。

それを御仁方に脳と精神を揺さぶられて、起こされたんだから機嫌の一つも悪くなる。


頭いて~

身体いて~

全然、回復してない~


って感じて、起こされた今も身体も精神も赤信号を送っている。

けれど、御仁方の気配のせいで本能的な機能さえ凍りついているから、たまったもんじゃない。

本能を凍結するぐらいの強制力に、恐怖心よりも失望感が募る。


苛立ち? 

そんなものなんて、ないない。

御仁方に苛立つほど、俺は人間捨ててるわけじゃないし。

御仁方に苛立てるのは、御仁方と対等かそれに近しい存在じゃないと無理でしょ。


<いや、我ら相手に皮肉を言えるのも、充分ヒトの枠外だがな>


小さく呟く大地の御仁のセリフは、聞こえなかったこととして……


「それで、どういった御用向きでしょうか?」


見れば、ここはいつもの空間だ。

一体どうやって?

などと考えても意味がない。

この白い空間に呼ばれた、それの意味だけがわかればいいだけだし。

そんで、早く聞いて、早く寝たい。


<ふむ、ちょっとは急に呼ばれて、びっくりしてくれればよいのにの~>


<ほんとうに、冷めちゃって。あ~あ、昔はかわいかったのに>


<慣れられてはつまらんな>


なんですか、御仁方!

こんな風に慣れるぐらいに呼ばれなきゃ、もっと可愛げある態度の一つもできますがね~。

頻繁に呼び出されりゃ、いくら“一般人”の俺でも慣れますって!

人間は、慣れる生きモノなんですから!

それと、これとは別として……


「あの助っ人の天使様、何なんです?

 俺を殺す気、マンマンなんですけど?」


ちょっと愚痴るのは情けないけど、いい機会だ。

ここ2日間の苦境。

死にそうな目に遭う頻度の高さに、流石に御仁方への口も刺々しくもなるってもんさ。


<あ~。見ておったよ。>


そう言う御仁方は苦笑。

俺の愚痴を寛大に受け取っているのかと思えば、その視線は何やら申し訳ないと謝っているようで……

思わず、こっちが目を白黒させてしまう。


<実はな………>


そうして真夜中に起こされた俺は、今回の本当の“お願いごと”を聞かされることになったのだった。






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