弐、俺と道行不安な先導者
遅くなってしまい、すみません!!
そしてお気に入り、評価ありがとうございます!!!
拙作を楽しんでいただけたら幸いです。
「雨乞いの魔法?」
<そう>
てくてくと道を歩いている俺とミニミニサイズの天使様。
向かう先は不明。
道は目の前を浮かぶ天使が示し、そのあとを俺はついて行っている。
なんて言うと、なんだが慈悲深き天使が迷い仔のために道を照らしているような、そんな心温まるエピソードが想い浮かべられるが、そんな優しさにあふれた展開は今のところ全っっっっくない。
もう一度言う。
全くもって、これっぽっちも、ぜんぜんナイ!!
むしろ、こいつ天使じゃなくて悪魔なんじゃないか? と思う場面の数々。
今は、比較的普通な、それこそ整備された安全な道をてくてくと歩いているが、昨日、一昨日は俺に何をさせたいんだと何回言ったことか。
なぜか獣道でもない藪の中に入らされるのは、まだいい。
蜂の巣をわざと刺激してるとしか思えず、そんでもってそれを止めようと全力を振り絞った俺に被害がきたのも、まぁいいさ。よくないけど、いいさ、いいさ!
けどね。なんで魔獣の巣の中、しかも今の時期子育て真っ最中で警戒態勢ばっちり、殺す気満々の森のクマさんとか、森の狩人(主に狩られるのは草食の獣とやわい人間種)の巣の中を通るんだよ!
なんで、広大な湖を泳がせたり、川の中を遡らせるんだよ!
川はひどすぎるだろ! 泳いで向こう岸に行くとかならまだいいけどさ、遡れって何だよ!
激流の中、溺れてるんじゃないかって思える無様な姿をさらした俺を笑ってんのか、ああん?
しかも、流れに逆らってまで泳がされたと思ったら、急に方向展開して今度は一気に流されろとか言われた俺の気持ちがわかるか?
俺を何だと思ってやがる!
ヒトの脆弱さをナメンなよ!
極めつけは、川の先に待っているのは轟轟と呻る盛大な水音。
そして勢いを増す水。
開けた視界。
もう、わかるだろう?
この先に待ち構えてるのなんて一つしかない。
滝壺へ真っ逆さまだよ!!
落ちた先、目覚めた俺は生きていることに感謝しつつ、当然の如くキレた。
天使だからって、全て許されるとでも思ってんのかよ!!
許されるわけないだろが!
御仁方に進言(という名の告げ口)ぐらいするに決まってんだろうが!!
天使を鷲掴みしていた拳を、ギュっギュと握りしめつつ、愚かで阿呆なミニミニサイズの天使様……いやもうこんなバカを天使と言うのも癪だ。こんな奴チビでいいだろう、チビで。
俺は要請された側で、本来ならそっちだけで解決される問題なのに、何故こんなチビに殺されかけにゃならんのだ!
……というキレてチビを握り潰す夢を見たときには、妙に心がすっきりした。
だが、夢ですっきりするのは一瞬のこと。
起きて数十秒もすれば、目の前で寝こけているチビを夢の如く鷲掴みにしたのは言うまでもない。
天使がなんだ!
ここまでされて、許せるほど俺は出来た人間じゃない!
ギュッと力を込めたせいか、苦しさで目が覚めたチビを前に俺は笑った。
うんでもって、死にそうな目に会ったここ2日について、散々お説教……いやいや正当な抗議をしまくった。
その熱いトークは日も昇らぬ早朝から、すっかり太陽が昇ってさらに中天に近づくころまで続き、さらに昼食を挟んで夕方にまで及んだのは、俺のせいではない!
むしろ、俺の熱い魂からの叫びが1日で半日過ぎぐらいで終わったことに感謝してもらいたい!
その成果のおかげか、やっとこさ回避した道なき道。
そして、ウェルカム整備された歩きやすい道よ!
今なら、その素晴らしさを俺が熱く語れそうだぜ!
というテンションの高さも、歩き続けれているうちに下がってきた。
そこで、今回の件についてそういえば何も知らなかったなとチビに振ってみたわけだが。
俺の疑問に、短い返答が返ってきただけで、そのあとには一言も説明もない。
「雨乞いの魔法」ってのも御仁方が言っていただけだ。
詳細なんか聞く余裕も、今回は御仁方からの“情報”も頭に送られてはこなかった。
ってか、「雨乞いの魔法」って何だよ。
盗まれた魔法が「雨乞いの魔法」って、一体……
水不足で悩んでるってことにしても……
いや、そもそも盗む価値って?
水関係に強い魔道師やら、魔法師、やら魔術師を派遣してもらえば……まぁ、“情報”がそこまでないからわかりはしないし、それに。。。
知らんことを考えるのも馬鹿らしいか。
なので、知ってそうなチビに聞いてみたんだが……
「どうして、その魔法が盗まれたんだ?」
<盗んだ輩に聞けばわかる>
「それで、それを盗んだのは?」
<行けばわかる>
「どうして盗まれたんだ?」
<人間が知る必要はない!>
「……おい」
俺の質問に、何一つ明瞭な答えを返さないばかりか、見下した態度を隠そうともしないチビ。
低く怒気を込め、睨みつけたくもなるってもんだろ?
ここ2日間の苦しみは、半日過ぎの説教ごときで晴らせると思うなよ。
俺の怒りは全く治まってないんだからな。
そんな恨み節を乗せて更に睨みつけてると、チビの身体がピキッと固まり、背中の翼も動きをとめ……
「おちた」
ぽてっと地面に落下した。
ふよふよと復活を果たしたチビはこう言った。
<実を言いますと、私も知りません。>
上からの命令だと答えたチビの態度は、随分と好感を持てる。
やっぱ上から見下した態度を取られるよりも、対等な立場が一番だよな。
互いを尊重しあうっていいことだよ。
「それで?」
でも、こっちの態度がそれですぐに軟化するわけじゃないから、多少ぶっきらぼうになるのは御愛嬌ってことで。
俺とチビとの旅路は続く。
どこに続くのかは、俺には全く判らぬままに。