表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様のお使い  作者: 花香
弐ノ話
14/46

六、俺と押しつけられた役目

評価、お気に入り、ありがとうございます!

少しでも楽しんでもらえたら、嬉しい限りです。



「お前ら、何やってんの?」


俺が呆れ顔で言うのは、正しいと思うんだよね~。


マージナルにはいろんな奴らがいるし、奇人変人なんてのもざら。

ちょっと変わってるよね~なんて言われるぐらいで、さらっと流すようなとこなんだけど、ね。


これは、ちょっと変わってるってレベルを超えている。

超えまくっている。


その証拠に、この一角だけみんな避けて通ってるし……

まぁ、変な奴には関わるまいってのは賛成だけど、賛成なんだけどさ~

何で俺はそこに行かないといけないんだよ!

ほんとに、俺が行かないとだめ?


ちらっと後ろを向いたら、鋭い眼光が幾つも突き刺さった。

送り主はカウンターの内側にいる面々。

同僚たちからの「お前の知り合いだろ!お前がなんとかしろ!」という意思がバシバシ伝わってきた。

かなりの痛みと冷たさを伴って。


だから俺は、厭々ながらこの異次元空間と化した一角に近づいているというわけだ。

誰も、好き好んでこんなヤバイ状況に首突っ込むわけないって。

いや、だってさ~


「この空間は何だ?」


いや、分かってるけどさ。

あえて分かりたくもないよ。これ。

精霊2体の喧嘩のせいで、こうなってるなんてさ。

ここに来るまでもなく分かってはいたけど、精霊力の無駄遣いもいいとこだ。

んで、


「わたしは、「ぼくは <だってこいつひどい <あなたに言われたくない 「別に何もしてないわよ!「頼まれたこと <こいつ! <あなたは!「をしようと……」」」」


声をかけた途端ぶわっとまくし立てられた。


「何言ってんのか全然わからん」


俺はどっかの10の声を聞き分けられる偉人さんじゃないんだから、一気に言われたって分かるわけないだろうが!

一人ひとり順番に言え!

それか、全員黙ってろ!


そう言いたかったが、仕事でお疲れ気味の俺は人間2人は無視して、喧々囂々と低次元の喧嘩で盛り上がり、全く周辺状況を認識していない精霊たちに、


「うっせーんだよ!」


とりあえず襟首捕まえて地面に下ろし、その頭上に拳骨を落としておいた。

<痛い>と頭を抑える精霊たちに、ちょっとばかりスーッとした。


<ひどいです!>


<なんで、こんなことすんのよ!>


<そうですよ! 悪いのはこの人だけじゃないですか! なんでこんなことを>


<なに言ってんのよ! あなたのせいじゃないの!>


涙目で睨んできたかと思ったら、もうこっちのことは気にせずに睨みあって言い争う。

ついでにさっきにまして空間を歪めはじめた……っていうか、歪みから氷雪が? あれ? 今度は熱風!

変な現象をまた引き起こし始めた精霊たちに、俺は思う。


「ストレスってよくないよね!」


俺の拳は、ギリッとイイ音を立てて、再度標準を定めて呻りをあげた。




「そんで、お前ら何やってんの?」


痛いとかひどいとか言ってる精霊(バカ)はほっといて、俺は最初にした質問を繰り返した。


「なにって、なにもしてないわよ」


姫さんがぐちぐちと文句を言ってる精霊たちから目をそらし、あさっての方向を見ながら言えば、


「僕は、頼まれてたことを……」


赤の水使いが青ざめた顔で言った。

あっ、ちなみに“赤の水使い”ってのはマージナルでのこいつの通称。

理由はいたって単純。赤茶の髪をしている水の精霊使いだから。


水の精霊使いなのに、蒼とか青とかでもなく“赤”ってついてるからなのか、こいつのことを知らない連中は“赤の水使い”って名前にビビっちゃうとかなんとか言ってたのを、ちらっと聞いた。

“赤”ってついてるだけに、残酷残忍非道の限りを尽くす奴とか、通る道全てを血で染めるみたいな戦闘狂とか思われてんのかね~?

俺の前で小刻みに小動物みたいに震えてる、こいつに?

ちゃんちゃらおかしいだろ?


おっと、そんなどうでもいいことは脇に置いといて……


「姫さんは何もしてなくて、お前は頼んだことをね~」


俺はハンっと鼻で笑って、コツコツと足を鳴らせた。


「それじゃ、こうなった経緯を教えてもらいたいんだけど?」


指差すのはそこら辺。

見たくないけど、見えちゃうもんはしょうがない。

けどさ~、ほんとにどんな展開でこんなことになったわけ?


2人と精霊2体の周囲一帯は、床は凸凹になってて、水でびしゃびしゃ。

ニョキニョキ氷柱が出てるところもあれば、水柱に、あれはお湯柱かな? 

そんであっちには竜巻発生中で……お~~、椅子とか盛大に回ってるね~。


すごいね~

マージナルの中でこんなことを、ね~

ここら辺、誰が修繕すんのかね~

椅子とか完全に買い替えだよね~。

もう木くずになってるのもあるし……


「ねぇ、君らマージナルに恨みでもあんの?」


精霊2体の動きを止めても、まだ蠢いている“力”に、流石に涙が出てくるよ。

なんで俺がこんなの止めなきゃいけないんだよ。

俺は何の力もない“一般人”なんだぜ。

ここは、無駄に力がある奴らが来るべきところなんじゃないのかよ!!

俺の嘆きを、誰か聞いてくれ!

そんで、俺の代わりになんとかしてくれよ!


そんな心からの願いは、どこにも届いてはくれなかったのに、同僚たちからの痛いくらいの「早くなんとかしろ」コールは俺の方に届きまくりだった。


がっくりだよ。ほんとうに。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「僕は、本当に何もしてないんだよ」


「わたしだって、ただ話を聞いてただけで、なにもしてないわ!」


2人が俺に縋りつかんばかりに迫ってきて、俺はちょっと身を引いた。

ついでに心も2人から距離を取った。一歩も二歩も。

適度な心の距離感って大事だよね。


「一体何の話をしてたら、こんなことになるんだよ」


そんでもって、言うべきことをしっかりと言うことも大事だよな。

こうして聞いた俺に返ってきたのは、


「最初に会った湖での話だよ」


ってなことで、俺は宙を見つめた。


湖?

どの湖で、赤の水使いと会ったっけ?



考えることしばし。


ああ~。あの、いつもの如く呼び出しくらって、有無を言わさず飛ばされてた湖か。


思い出した。

あの湖は確か、自然発生的に生まれた水の精霊たちが何故か変に集まり過ぎてるから、何とかしろって言われたんだっけ?

解散させても良し。人の立ち入れない精霊の地にするのも良しとかなんとか。

一目に付き過ぎてちょっと困ってるけど、御仁方自らが出張るほどじゃないし……ってな理由だったかな……


「今は“迷いの森”の奥だったか?」


「そう、あの湖だよ。あの後急に濃霧が発生して、地場が狂ったみたいになったんだよね。」


故郷に帰省したときに何回か試したけど、やっぱり行けなかったってカリカリと頭を掻きながら言う赤の水使いに、俺はさらに思い出した。


あれって確か……


“迷いの森風”にするためにめっちゃ濃い霧を発生させて、精霊結界を張らせて、幻覚魔法とか方向感覚を狂わせる魔法とかをかけるようにしたんだよな~。

あの湖が居心地いいから退きたくないとか言われて、それなら湖を不可侵領域にしろって条件つけたような気がする。


頭の隅に追いやられている記憶をぼんやり思い出して、俺は一人あのときも大変だったな~と黄昏た。

立ち退き反対運動に熱くなる水精霊(じゅうにん)たちとの、頭が痛くなる会話。

あれには苦労したよ。ほんとに。


異種間交流の難しさっていうのを、まざまざと教えられたね! 

まったくあいつらときたら! 

こっちが眉間に皺を寄せたぐらいで何か暴れだしそうにするし、態度でかいし、うるさいし。

にこにこ作り笑いで顔面筋肉痛になったあの痛さを、あいつらは知るまい!

それに、長々とそんでもって延々と愚痴られ、暴れられて、それを宥めさせられて………

あ~~、思い出したくない!!



<ねぇ。ちょっと、聞きたいんだけど。>


俺があの時のことで、仏頂面になってたら、くいくいっと髪を引っ張られた。

いつの間にか復活を果たした風の精霊が俺の顔をひょいっと覗く。

何だ?と視線で促せば、


<あれをどうやって精霊使いにしたの?>


興味津津という感じで聞いてきた。


「さっき、言ったじゃないですか。」

<ついさっきのこと、もう忘れたんですか?>


間髪いれずに、そして全く同じタイミングで赤の水使いと水の精霊が言い放つ。


<あんなの、言った内に入らないわよ。>


「何でですか?」


<だって、ちゃんと全部言ってないし。>


「僕が言えることはあれで全部ですよ。」


首を傾げる赤の水使いに、風の精霊は<あなたには、聞いてないから大丈夫よ>と手をひらひらとさせた。

そんな風の精霊に、<ちょっと……風の方!!>と憤る水の精霊。


<なによ。ほんとのことじゃない。>


<今はそっちではなく、なんですかその態度は。失礼じゃないですか!>


<なにが?>


<私の主に対するその態度ですよ!> 


<わたしの主じゃないもの。別にいいでしょ。>


<あなたという方は!!!>


そして始まる水の精霊VS風の精霊。

戦いのゴングが、カーンと鳴った………ような、そんな幻聴に俺は頭が痛くなりそうだよ。


質問されたの俺なのに、俺完全に蚊帳の外だし。


もう、こいつら他の奴らに任せた方がいいんじゃないか?

ってか、むしろそっちの方がいいよな。

俺“一般人”だし!!!


決意を込めて、後ろをチラ見。


はい、ダメなんですね。

俺が何とかするしかないんですね。

そうなんですか~~。

同僚たちの視線は弱まることなく、むしろこの事態を見にでも来たのか、確実に増していた。


はぁ~、なんかすっごい面倒くさい。

赤の水使いに姫さんを弟子にしろって言っただけなのに、なんでこんなことになってんだろ?


再び渦巻く力にがっくりと肩を落とす、俺。

そんでもって、三度拳を振りかざす俺。

振り下ろす場所は当然


「お前ら、いい加減にしろ~~!!」


ガコン!とイイ音を鳴らして、キュ~っと2体の精霊は仲良く目を回した。




過去編の湖で、“俺”がどんなお願いごとを叶えるために行ったかでした。

俺が、ぶーぶー文句を言ってくる精霊たちを相手に、笑顔を武器に心で泣いてがんばっていたというのは、赤の水使いは永遠に知ることはないと思います。彼と契約した水の精霊さんも。。。

次回はまた視点が変わります。お楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ