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神様のお使い  作者: 花香
弐ノ話
12/46

四、僕と秘密の湖【後編】

ちょっと短めです。

うそだろ……

そんな、バカな………


「すごいだろ」


言ってることが少しもすごくないみたいな、よく言えば冷静な、ぶっちゃけ、すっごくどうでもよさそうな声が横からした。

だけど、僕はその声に無反応。

ぽかんとただただ口を馬鹿みたいに開けていることしかできなかった。


連れられてきたのは、さっき僕がこいつの腕をとったところ。

秘密の湖………のはずなんだけど。。。


「なんで???」


湖だよね?

来た道を引き返してきただけなんだから、間違いなく湖だよね?

毎週2、3回は来てる湖だよね?

あの、秘密の湖だよ、ね?


僕はもう一度なんで?と小さく呟いて、手で目を思いっきりこすった。

力いっぱいこすって、顔が痛くなってやめた。

そして、またぽかんと口を開けて目の前を凝視した。


そこにあるのは、湖。

ただし、真っ青な、底さえも見えるのでないかと思うぐらい透明な、湖。

さっきまでのエメラルドグリーンの湖は一体どこにいったの?


「さっきよりいいだろ。」


ああ、確かにイイと思う。

すっごく綺麗だなって思う。

もう、綺麗すぎるっているか、美しすぎるっているか。

こういうのを、神秘的っていうのかな?


透き通る湖は、神聖な気配がして近づいちゃいけない気がした。

さざ波が立つと、さっきまで宝石の輝きと思っていた波紋が、ただのおもちゃみたいにちゃちに思えるぐらい綺麗すぎて、


「なんだよ。泣くほどのことじゃないだろ? 何泣いてんの?」


呆れた声で、頬を伝った涙に気付いた。

気付いたところで、止めることはできなかったけど。

だって、きれいなんだから、仕方ないだろう!

きれいすぎて、泣けるなんて知らなかったんだし!


「まぁ、いっか。」


そう言ったこいつは、「ちょっと機嫌が直ったみたいだね。よかった。」湖に向かって柔らかい笑みを向けた。

それは、僕にかけてくれた言葉じゃないってことは、すぐにわかった。

僕へと声をかけるんだったら、さっきまでみたいに、こいつはきっとこっちを向いて言った。

ほんの十数分ぐらい前に初めて会った奴だけど、話すときに目をそらさない奴だってのはなんとなく分かったから、だからこいつは僕に向かって言ってないなって思ったんだ。


じゃあ、誰に向かって言ってんだろ?


湖の側には僕とこいつ以外はいない。

だけど、こいつは湖面に向かって、まるでそこに誰かがいるかのように優しい声で話している。


やっぱり、こいつヤバイ奴なのかな?


ちょっと前に浮かんだ考えが再浮上してきた。

そうなのかもしれないって思う。

でも、僕はちょっと前みたいに、ずるずると足を下げることはしなかった。


だって、もったいないじゃないか!!!

こんなに綺麗な湖なんだよ!!!!

涙が出ちゃうくらい、綺麗なんだ。


僕は、横で一人でブツブツと、まるで誰かと会話でもしているかのように話しているこいつを無視することにして、陶然と神秘的な変貌を遂げた湖を、色とりどり、緋や碧、蒼や黄金に煌めく湖面を見つめることにした。





「えっ! うそだろ~」


熱に浮かされたような目で湖を見ていた僕の耳に、素っ頓狂な声が聞こえた。

それは、さっきからぶつぶつと湖に向かって独り言をしていた奴だ。

さっきまでと声の調子が違ってたし、急に大声を出されたから僕は驚いてこいつを見た。


こいつは頭を抱えて、勘弁してくれよとか、できるわけないとか、他をあたってくれとか言って嘆いていた。

それをぽかんと見ていた僕だったが、はぁ~~っとため息をついた奴の視線がこっちに向けられて、慌てて視線を外した。


み~~た~~~な~~~~


とか言われるかもなんてことは、ちょびっとしか思わなかったけど、なんか見ちゃいけないものを見ちゃったような気がして……

何にも見てないよ。僕はただ湖を見てるだけだよ~って態度でいることにした。

そんな僕の肩に、ぽんっと奴の手が乗った。

びくっっっっとなった僕に構わず、視界いっぱいに奴のニヤけ顔が広がる。


「なぁ~お前もっとすごいの見たくない?」


それは、悪の組織への勧誘?


頭に浮かんだのはこれだけだった。



僕が邪悪な笑顔に固まっている間に、間近に迫ってきた手。

それを叩いてしまうことは簡単だったはず。

だけど、僕は金縛りにあっているかのように身体が動かなかった。

そして、


「痛っ!」


パチッと静電気みたいな、ビリっとした刺激が眉間に刺さった。

こいつがしたのは、ただ人差し指で僕の眉間を突いただけなのに、どうして?と思うが、そんな些細な疑問は一瞬にしてどっかに飛んで行った。


<どうも、はじめまして>


「ななっっっな、なに???」


目の前に突如として現れた美貌の主に、僕はあたふたすることしかできなかった。


「こちら、ここに住んでる水の精霊。お前のこと気にいったらしいよ。」


淡々と横で言われたことを、僕は全く理解できなかった。




中途半端に次回に続いてしまい、すいません。

次話は早めに投稿します。

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