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いつものはじまり
「お前、どこの?」
人でごった返す室内で、何を思ったか唐突に振り返って尋ねた男に、俺はあっさりと返した。
「神霊課一種」
「どこだそれ」
「魔法省の1つだよ」
怪訝そうな顔に答えたのに、男の顔は更に輪をかけて怪訝になった。
モゴモゴと「そんなのあったかな……」との疑問には聞こえなかったことにして、俺はさっさとその場を去ることにした。
一々応える謂れはないし……
≪早く来なさいな≫
性別不明な美声音が脳裏を揺すぶったからだ。
『はいはい』
と脳裏でこれから直ぐにという意思を送る。
そうでもしないと、<彼ら>はとっても不機嫌になるのだ。
不機嫌になった<彼ら>ほど手に負えないモノはない。
我が侭とか、理不尽なんて何のその。
<彼ら>の『些細な願いごと』に幾ら胃が痛い思いをしようと、<彼ら>のようなモノ達を相手に何を言っても無駄だ。
俺が出来るのは精々胃を痛めない程度にするために、日々<彼ら>の『お願いごと』に諦めて付き合うしかない。
嗚呼、いやだ
空は、俺の心を反映しているかのように、どんよりと曇っていた。