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救世主物語  作者: アルドア
最終章

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第73話 終わりの始まり5

アルディア大陸の南西に浮かぶ孤島は、かつて平和と自然の美しさを象徴する場所であった。


しかし、戦乱の時代が進むにつれて、その地はかつての姿を失い、戦火と運命の渦に巻き込まれようとしていた。


ここが、運命に翻弄された者たちの最終決戦の舞台となる。


エミリアは、目の前に広がる荒れ果てた風景を、まるで感情を失ったかのように眺めていた。


かつてはこの地を訪れるたび、心が癒されるほどの美しさがあったが、今はただ荒涼とした死の気配が漂っている。


彼女の胸には、憎しみと怒り、そして裏切りへの絶望が渦巻いていた。


そのすべての感情は、エリシアによって植え付けられた魔王の力  虚魔幻惑ヴァニティテンプテーションという呪いに由来していた。


その呪いは、エミリアの感情を激しく歪め、彼女のかつての冷静な判断力を奪っていた。


かつての仲間や友人の声は、今や遠い過去の記憶となり、もはや手の届かない存在となっていた。


彼女は自らの怒りに従うまま、ただひたすらに天帝を滅ぼすことだけを目的に歩み続けていた。


そんな彼女の前に、ミネアが静かに現れた。


かつてエミリアに神威と戦術を教え、彼女にとっての師であり、また母のような存在でもあったミネアは、今や冷たい眼差しで彼女を見下ろしていた。


かつてのエミリアを知っているからこそ、その変わり果てた姿を前にして、ミネアは深い悲しみを抱いていた。


「もう話し合う余地も残されていないのか……」

ミネアは、静かにそう呟く。


エミリアは拳を握りしめ、荒れ狂う呼吸を漏らす。

その目は、かつての仲間に対する信頼や愛情を忘れ去り、ただ怒りと憎しみだけが宿っていた。ミネアの声は耳に届いていたものの、その言葉はもう彼女の心には何の響きも与えなかった。


「ここで終わりにしよう、エミリア……」

ミネアは、決意に満ちた声で呟く。


彼女はかつての教え子であったエミリアを、救い出すことができなかった自らの無力さを呪いながら、彼女に最後の安息を与えることを決意する。


エミリアをこれ以上苦しませるわけにはいかないという強い思いが、ミネアの手に力を込めさせた。


祖は破滅の(エンドオブ)運命を導く者(カタストロフィ) ――」


ミネアが唱えたその言葉と共に、彼女の手から放たれた強力な神威がエミリアを包み込んだ。


瞬間、エミリアの体は黒い霧に包まれ、その場に崩れ落ちた。


彼女の最後の感情は、何もなかった。


怒りも、悲しみも、すべてが虚無に帰していく中で、エミリアはただ静かに息絶えた。




はずだった。



しかし、次の瞬間、ミネアはその場に何か異常な気配を感じた。


エミリアの身体から放たれた力が、まるで生き物のように周囲の空間を歪ませ始めたのだ。


ミネアは何が起こっているのか理解できず、ただその場に立ち尽くした。


「まさか……」彼女はその現象に目を見張り、驚愕した。


エミリアが最後に解き放ったその力は、彼女の死によって制御不能となり、暴走し始めていた。


その力は島全体を覆い尽くし、次第に大地を蝕んでいく。


ミネアは全力でその力を抑え込もうと試みるが、エミリアが残した憎しみと怒りは、止めることができなかった。


エリシアによって歪められたエミリアの力が、無差別にすべてを破壊し始めたのだ。


この最後の戦いが、終焉を迎えるはずだった。


しかし、エミリアの力によって引き起こされた破滅的な力は、新たな破滅の序章を告げるものでしかなかった。


ミネアは、ただその暴走するエネルギーの中で、自らも飲み込まれていくことを悟った。


「終わりじゃないとは……」


ミネアのつぶやきは、破壊の嵐の中でかき消され、


彼女の姿もまた、暴走するエミリアの力に飲み込まれていった。


戦いの舞台となった孤島は、まもなくして完全に消滅し、そこにはただ荒れ果てた虚無が広がるだけとなった。



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