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救世主物語  作者: アルドア
最終章

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第70話 終わりの始まり2

セレスティア共和国にいるミネアは静かに震えながら、目の前の報告書を見つめていた。


彼女が積み重ねてきた業績、それは民衆のために尽くしてきた確かな歴史だったはずだった。


数々の災厄から彼らを守り、生活基盤を整え、治安を維持してきた。


その一つ一つが、民を支配し、苦しめるためではなく、彼らを守るために行われたことだ。


だが今、報告書によれば、各地で巻き起こる革命やクーデターの嵐は、彼女を独裁者、抑圧者として描いている。


「戦え! 戦え!」という民衆の叫びが、報告書の中で生々しく描かれている。


ミネアはその一文を読み終えると、重苦しいため息をついた。


「これが余が求めていた結果なのか…」

かつて、民のために尽力してきたつもりだった彼女は、今やその民衆に裏切られた形となっていた。



彼女は数え切れないほどの壁を築き、ダムを建設し、水害を防ぎ、平和な生活を提供するために世界中を飛び回ってきた。


どんな災害が起きても、天帝として自ら現場に赴き、崩壊を防いだ。


しかし、そんな努力も今は無に帰しているように思えた。


ミネアの理想と現実の間には、果てしない溝が存在していた。



「余が独裁者として見られているのか…」


かつて世界の崩壊を防ぐため、3000年ほどあらゆる敵と戦ってきた。


光の巨人、終焉の獣、六魔、これらは厄災であり幾度となく種族や文明を滅ぼしてきた。


わずかに残った者たちと再生を誓い、

このセレスティアやアルディア大陸の平和を

もたらした。



しかし、もう覚えている者はおらず、

今や世界の敵になっていた。


その苦い現実が、彼女の胸に重くのしかかった。


そして、何よりもその根源にいるのがエリシアだと、彼女は薄々感づいていた。


エリシアの神威が、何らかの形で事態を操作していることをミネアは認識していたが、その力がどれほど深く世界に根を張っているのかは定かではなかった。



しかし確かなことは、エリシアが今、この混乱を背後から操っているということだった。



その時、メイドがうっかりカップを倒し、飲み物がテーブルにこぼれた。


ミネアはその光景に、ふと自分の心の乱れを反映しているように感じ、静かに微笑んだ。


「大丈夫ですよ、誰にでも失敗はあります。怪我はありませんか?」


メイドは恐縮しつつも、その温かい言葉に励まされたのか、ふと疑問を口にした。


「天帝様、なぜエリシア様とエミリア様を使節団として送り出されたのでしょうか?」


その瞬間、彼女は自分の口がすべらせたことに気づき、すぐに謝罪して部屋を後にした。


だが、その何気ない言葉が、ミネアの心に強い衝撃を与えた。


彼女の胸の中にあった疑問が、急速に大きくなっていく。

「なぜ、余は彼女たちを送り出したのか?」それは自然な選択だと信じていた。

だが、振り返れば、最適な判断ではなかったことに気づいた。




ミネアは椅子に深く座り込み、思考を巡らせた。

二人を遠くに送り出す必要などなかった。


彼女たちを自分の目の届く範囲に置き、少しずつ情勢を教え、導くことができたはずだ。


それにもかかわらず、なぜあの時、二人を遠くへ旅立たせたのか?


「エリシア…」彼女はつぶやいた。


その名前が、まるで呪詛のように響いた。


エリシアの言葉や態度に、思考が誘導されていたことに気づいた。


エリシアの影響力が、言葉を通じて静かに浸透していたのだ。


自分の判断だと信じていたものが、エリシアの策謀の中で形作られていたことに、ミネアはようやく気づいた。


「なんと情けない…」


自身の慢心が、この事態を招いたことに思い至った。


エリシアの手に導かれたまま、世界は混乱し、狂気に飲まれようとしている。


今、彼女がすべきことは一つしかなかった。


エリシアと対話を試みるのはもう遅すぎた。


力を以て討つしかない——そう決意した。



しかし、その瞬間、ミネアは報告書の最後の一文に目を走らせた。


そこには、驚くべき知らせが書かれていた。




エリシアは死んだ——エミリアの手によって。




彼女は一瞬、何が書かれているのか理解できなかった。

エリシアが、エミリアに討たれた? そんなことがあり得るのだろうか?


しかし、現実はそうだった。


彼女が対話を試みる間もなく、エリシアはこの世を去った。


そして、エミリアがそれを成し遂げたのだ。


心の中にぽっかりと穴が開いたような感覚が広がった。これで、すべてが終わるのか? それとも、これからさらに混乱が広がるのか?


「エミリア…なぜ…」ミネアはつぶやいた。


その答えは彼女自身もわからなかった。


エミリアは、自分のもとで育ち、エリシアの声に導かれてきた。


エミリアの行動には、エリシアの言葉が影響しているに違いない。しかし、そのエリシアが今はもう存在しない。


エミリアの心には、一体何が残っているのか?


ミネアは立ち上がり、重々しい足取りで部屋を歩いた。


すべてが崩れ去ろうとしている中、彼女は一つの問いを抱えていた。


エリシアを討った後、エミリアはどうなるのだろうか?


そして、彼女が進むべき道は、果たしてどこに向かうのか?


答えはまだ見つからないが、ミネアは自らの使命を果たすため、再び前へと歩み出した。



最後の決戦が近づいているのだと、彼女は確信していた。



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