第69話 終わりの始まり
数年の歳月が過ぎ、世界はまさに変革の只中にあった。
かつて天帝候補として見込まれた私、エミリアは、今では革命軍のリーダーとして、天帝の支配から人々を解放するために戦いを続けていた。
かつての仲間達は解放軍に入り、世界各地に散っていた。
各国や大陸で次々と解放軍が立ち上がり、革命の波は全世界に広がっていく。
目指すは、最後の天帝——元始天帝ミネア。
彼女を倒せば、この長きにわたる戦いに終止符が打たれ、私たちは自由を手にするのだと、エリシアが私に囁いていた。
しかし、その言葉を信じながらも、私の心の中にはいつも霧がかかっているような感覚があった。
ゼフィロスやヴァルキアス、そしてギルガレットを討ち取った時も、頭の片隅にずっと居座る違和感——それが何なのかはわからないけれど、何か大事なことを忘れている気がする。
それでも、エリシアの言葉は甘く、私の耳元で常にささやいていた。
「あと一歩よ、エミリア。ミネアを倒せば全てが終わる。あなたならできるわ。」
その言葉は私に強烈な使命感を与え、その道を進む勇気を与えてくれた。
振り返ってみると、ここまでの道のりは決して簡単ではなかった。
多くの仲間が倒れ、血を流しながら、私たちは天帝たちに立ち向かってきた。
各大陸での戦い、様々な国や文化に触れ、支配者として君臨する天帝たちの強大さに幾度も打ちひしがれた。
それでも、私たちは立ち上がり続けた。
ギルガレットとの出会いもその一つだった。
彼は一時、私をその強大な力の同盟に誘おうとしたが、私はミネアに忠誠を誓った。
彼女の導く世界が正しいと信じていた。
だが、そのミネアが今、私たちの目の前に敵として立ちはだかっている。
私の心は混乱していた。
彼女は、私をここまで育て上げ、数々の試練を通じて力を与えてくれた恩人でもある。
彼女の教えがなければ、今の私はいない。
彼女は世界の平和を守ろうとしていた。
そのミネアを裏切るという感覚が、私の心の奥底でかすかな痛みをもたらしていた。
それでも、私はエリシアの言葉に従っていた。彼女の声は私にとって救いのようだった。
彼女の「自由」や「解放」といった理想は、世界に新しい秩序をもたらすように思えた。
そして、エリシアは一度も私を誤った道に導いたことがなかった。
彼女と共に、私は革命のリーダーとして成長し、多くの戦いを勝ち抜いてきた。
だからこそ、彼女が
「最後の天帝を討つべきだ」と囁けば、私には従うしかなかった。
「ミネアを倒せば、この世界は救われる。」
その言葉は、私にとって信念となっていた。
みんなのために、世界を救うために、私たちがここまで戦ってきた理由はただ一つ——天帝の支配を終わらせること。
そのためには、元始天帝ミネアを倒さなければならない。
しかし、心の片隅では何かが引っかかっていた。
ミネアを本当に倒すべきなのか?
彼女が封絶結界を維持し、世界の秩序を保ってきたことを私は知っている。
彼女の目指すべき世界は、戦争や暴力を排除し、平和を築くためのものであった。
それは決して間違った理想ではなかったはずだ。
ミネアを倒してしまえば、この世界はどうなるのか?
それでも、私はその疑問を振り払う。
今はそんなことを考えている場合ではない。
仲間たちは私を信じて戦ってくれているし、エリシアもまた、私に期待している。
最後の天帝を討つ使命が私に課されている。
自分が信じた道を進むしかない——そう自分に言い聞かせ、私は前へと進む。
だが、その歩みはどこか重く、頭にはモヤがかかっているような感覚が消えなかった。
何かが足りない。何か、大切なことを忘れている気がする。
それでも、私はその感覚を無視し続けた。
エリシアの声が、再び耳元でささやく。
「もうすぐよ、エミリア。元始天帝を倒せば、あなたが目指してきた自由な世界が手に入るの。」
そうだ——もうすぐ終わるんだ。
この長きにわたる戦いに、終止符を打つために私は進んでいる。
そして、この世界に新しい時代をもたらすのだ。




