第68話 混乱の中で
エミリアは旅を続け、最後の二柱の天帝と出会い、それぞれの世界観や統治理念を学んだ。
それは、彼女にとって新たな視点を与えるものであり、これからの道を考えるための大きな糧となった。
まず、彼女が出会ったのは風雷神天帝ゼフィロス。
彼の世界は、支配主義の極致とも言える体制であり、明確に上級国民、下級国民、そして奴隷に分けられていた。
ゼフィロスは絶対的な力を持ち、社会を細部に至るまで厳しく管理していた。
秩序と効率を重んじるその姿勢は、確かに安定をもたらすが、自由や個人の尊厳を犠牲にしていた。
彼の支配欲は非常に強く、他の天帝たちの領土にも手を伸ばそうとしていた。
ゼフィロスの手法には、天罰をもって悪人たちを裁く「天縋」があり、雷が街を貫くように落とされる。
しかし、無関係な人々も巻き込まれることが多く、残酷な一面が強調されていた。
その強烈な支配欲と冷酷さにエミリアは違和感を抱いたが、彼の世界観にはある種の厳格さと秩序があった。
次に、白道天帝ヴァルキアスと対面する。
少年のような見た目をした彼は、ゼフィロスとは対照的に、実権を政府に預け、ひっそりと神の社で過ごしていた。
ヴァルキアスはあまり積極的に干渉しない天帝で、時折人々に神託を与える程度で、統治というよりも人間が自らの力で生き抜くことを重視していた。
彼の考え方では、過酷な環境の中で人間が進化し、成長することが重要だとされていた。
この対照的な二人の天帝から、エミリアはそれぞれの極端な統治の姿を見た。
ゼフィロスのように強力な支配による安定と、ヴァルキアスのように放任による成長。
それぞれが持つ独自の世界観と、人々の生き方が大きく異なることに驚きを感じつつも、エミリアは彼らから多くの学びを得た。
エミリアは旅を通じて、多様な世界を目の当たりにし、さまざまな統治の形を体験した。
そして彼女は、自らが目指すべき未来について、次第にその輪郭を掴み始めていた。
統治者として何を守り、何を導くべきか、エミリアの心には新たな決意が芽生えつつあった。
彼女が望むのは、ただの支配でも放任でもなく、人々が自らの力で成長しつつも、平和と秩序が共存する世界だった。
三柱の天帝がついに反旗を翻し、元始天帝ミネアに対して討伐の動きを見せた時、世界は揺れ動いた。
風雷神天帝ゼフィロス、白道天帝ヴァルキアス、そして地獣天帝ギルガレットが、ミネアの封絶結界と秩序を打ち破り、新たな支配を打ち立てようと画策していた。
その中で、私はエミリアとして、ミネアの側に立ち続ける決意を固めていた。
長い旅の中で学んだことは多かったが、やはりミネアの目指す世界は、私が信じたい未来であった。
ミネアはその力で封絶結界を維持し、世界を守っていたが、そのために自らが動くことはできなかった。
彼女の不動の姿は、冷静でありながらも、この状況を重く受け止めていることが明らかだった。
そこで、ミネアは私に協力を要請した。
天帝たちの反乱を鎮め、世界を守るための力を貸してほしい、と。私は即座にそれを受け入れた。
そこに現れたのが、幻夢天帝エリシアだった。
自由を重んじる彼女は、これまで反乱に加わらなかったが、この状況を放置しておくこともできなかったのだろう。
エリシアは私と共に、反乱した天帝たちを討つことを申し出てくれた。
しかし、彼女の目にはどこか沈んだ表情が浮かんでいた。まるで心の中に何か重いものを抱えているかのように。
それでも、今はその理由を問う暇もなく、世界の崩壊を防ぐために集中しなければならなかった。
「エミリア、私たちは力を合わせて戦うしかないわ」とエリシアが静かに言った。
彼女の声には決意と覚悟が込められていた。
私は頷き、共に天帝たちに立ち向かうことを誓った。
これから始まる戦いは、単なる勢力争いではない。世界の未来を左右する決戦だった。
私たちはミネアの理想を守るため、そして人々の平和と秩序を取り戻すために、立ち上がった。
ゼフィロス、ヴァルキアス、そしてギルガレットとの激突は避けられない運命となり、私の心は大きな使命感で満たされていた。
エリシアの力を借り、私は戦いに挑むことを決意した。
しかし、その裏で、エリシアの沈んだ瞳が何を意味しているのか、それがこの戦いの行方に影響を与えることを、私はまだ知らなかった。




