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救世主物語  作者: アルドア
4章

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第65話 地獣天帝との謁見

翌朝、エミリア率いる使節団は天帝ギルガレットとの謁見の場に通された。


広大な玉座の間に差し込む光が、彼の威厳を一層際立たせていた。


ギルガレットは、高貴でありながらもどこか自然体の風格を漂わせ、周囲の者たちに圧倒的な存在感を示していた。


エミリアは昨日の出来事を思い出し、挨拶の一環として年老いたライオンの獣人に出会った話をすることにした。


「昨日、年老いたライオンの獣人に出会い、アルドゼファーの歴史について教えていただきました」とエミリアが話し始めると、その場にいた豹の獣人エドと虎の獣人ミドが突然笑い出した。


彼らの笑いは抑えきれず、室内に響き渡った。


エミリアと使節団は突然の反応に戸惑った。


エミリアがその理由を尋ねると、豹の獣人エドが笑いながら説明を始めた。


「アルドゼファー大陸では、年老いたライオンの獣人なんて存在しないんだよ。ライオンの獣人は、年を重ねると群れから離れて静かに死に場所を求めて大地に帰る。だから、年老いたライオンが目に見える形でいることはまずない。それに…」

エドは少し笑いをこらえながら続けた。

「百獣の王であるライオンの獣人は、皆から尊敬される存在なんだ。だから、年老いたライオンの獣人というのは、ちょっとした冗談みたいに使われることがあるんだよ。」


虎の獣人ミドも同意するように頷きながら

「そうなんだ。だから、年老いたライオンの獣人と聞いて驚いたけど、冗談としては面白いね」と付け加えた。


その言葉を聞いて、エミリアは自分が知らずにアルドゼファーの風習に触れていたことに気づき、恥ずかしい気持ちになった。


周囲の使節団も、状況を理解して微笑みを交わした。


そんな中、ギルガレットは玉座に座りながら微笑み、エミリアの話に耳を傾けていた。


そして、彼も笑いを堪えつつ、言葉を発した。


「エミリア殿、あなた方の使節団はユーモアのある方々のようだ。昨日の話を聞いて、私も大いに楽しませてもらった。だが、その知識や観察力には敬意を表する。アルドゼファーの伝統を知らない中で、あなた方は真摯にこの地を理解しようとしていることが伝わってくる」


ギルガレットの笑顔は温かく、それでいて天帝の威厳を損なうことなく場を和ませていた。彼は続けて挨拶を述べた。


「我はギルガレット、アルドゼファーの天帝だ。しかしながら、我は狼の獣人と他の血が混じったクォーターであり、純粋な血統の獣人からすれば雑種に過ぎない。だが、そのおかげでかえって気軽に接してもらえる。どうか、我も同じように接していただきたい」


ギルガレットの言葉は謙虚でありながら、その背後には圧倒的な王者の風格が漂っていた。彼の穏やかな態度と威厳は、エミリアたち使節団にとって強い印象を残した。


エミリアは天帝の包容力を感じながら一礼し、使節団としての任務を果たすため、さらに心を引き締める必要があると感じた。ギルガレットの存在が、アルドゼファー大陸の強大な力の象徴であることは間違いなかった。


エミリアは慎重ながらも、ギルガレットに対してもう一つの疑問を投げかけることにした。彼女は大陸の由来について聞くべきか迷っていたが、ついに好奇心が勝ち、少し恥じらいながら尋ねた。


「アルドゼファーという名は、どのような由来があるのでしょうか?」


その質問を聞いたギルガレットは、微笑みを浮かべながら答えた。


「アルドゼファーという名は、最初の王者の名に由来している。彼は、獣人たちを束ね、初めてこの大地を統一した強き王であり、彼の名は今も大陸と共に生き続けている」


エミリアはその答えに納得し、さらにもう一つ気になっていたこと、エーテルリアクターについて尋ねた。


「昨日、ある方が『エーテルリアクター』という言葉を使っていましたが、それは何を指しているのでしょうか?」


ギルガレットは少し考え込みながら答えた。


「エーテルリアクターとは、おそらく我々が語る『大地の精霊』のことではないかと思う。我々の魂はすべて大地に還り、やがて樹や草となり、精霊として宿る。それらは草食動物に食べられ、さらに肉食動物がそれを狩る。こうして、全ては大地の一部となり続けるのだ。だからこそ、アルドゼファーでは畑を持つことを禁じている。大地は誰のものでもなく、弱肉強食が我々の生き方の基本だからだ」


エミリアはギルガレットの話に耳を傾けながら、彼の哲学に共感する部分はあったものの、人間としての違いも感じていた。

彼女は自分の意見を述べる決意をし、静かに口を開いた。


「おっしゃることは理解できますが、人間には畑が必要です。弱者に限らず、年老いた者や、狩りに向いていない者もいる。彼らが生きていくためには、忍耐が必要ですが、それでも狩りだけに頼ることは難しいのではないでしょうか」


その瞬間、周囲にいた獣人たちがピクリと動き、目を見開いてエミリアの方を見た。控えていた獣人の一人は、驚きの表情を浮かべながら天帝に向かい声を震わせた。


「天帝陛下、このような質問を投げかけるとは…」


エミリアの使節団の仲間たちも一瞬緊張した空気を感じ取ったが、エミリアは自らの信念を曲げることなく、獣人たちに対して正面から向き合った。


ギルガレットはそんな緊迫した雰囲気にも関わらず、冷静にエミリアを見つめた。そして、ゆっくりと口を開き、穏やかに返答した。


「エミリア殿、あなたの言うことも一理ある。我々獣人は、強さと自然の法則に従い生きることが常であった。しかし、人間が持つ知恵と忍耐もまた、尊重すべき力だ。弱者や老いた者を守るために、畑を作るという考えは我々とは異なるが、それが人間の知恵であるならば、我々もまた学ぶべきことがあるのかもしれない」


その言葉に、周囲の獣人たちは驚きを隠せず、使節団もまた安堵の表情を浮かべた。ギルガレットは、自分の価値観に固執するのではなく、異なる意見を受け入れる度量を持っていた。


「だが、忘れないでほしい。我々アルドゼファーの民は、大地と共に生き、魂を還すことを最も重要と考えている。それが、この地における生命の循環だ」


エミリアは静かに頷き、ギルガレットの考えに敬意を表した。彼女は、異なる文化と価値観に触れながら、アルドゼファーの大地とその民との理解を深めていくことを強く感じた。



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