表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
救世主物語  作者: アルドア
4章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

73/85

第64話 獣人の生まれ

大浴場から上がったばかりのエミリアたちは、ほのかに頬を染めながら外の風に当たっていた。


夜風は心地よく、彼女たちの体に溜まった温もりを優しく包み込む。


空を見上げると、満月が静かに輝き、その周囲に星々がきらめいていた。


しかし、彼女たちの目を引いたのは月のそばに見える異質な白い影だった。


それは、まるで天を突く塔のようにそびえ立っていた。


「ねえ、あれは何かしら?塔みたいだけど…」

エミリアが声を上げた。


その時、背後から重々しい足音が近づいてきた。

振り向くと、そこには年老いたライオンの獣人が立っていた。


彼の鬣は灰色に変わりつつあり、深い皺がその顔に刻まれていたが、その目には不思議な知恵と優しさが宿っていた。

彼は彼女たちの視線を追うように空を見上げ、ゆっくりと口を開いた。


「あれは方舟だ…アルドゼファーだよ。かつて落ちてきたのだ。」


彼の低く、しかし静かな声が夜の静寂に溶け込んだ。


「方舟…?」一エミリアが小さくつぶやいた。「それは、どういう意味ですか?」


年老いた獣人はゆっくりとうなずき、語り始めた。

「ずっと昔…この世界は戦火に包まれていた。人間同士の争いだけではなく、異なる種族、異世界の存在たちとの壮絶な大戦が繰り広げられていたんだ。どこに行っても死と破壊しかなかった。そうした絶望の中で、選ばれた人々が方舟計画を立てたんだ。この星を脱出するために、そして新しい始まりを求めて…」


彼は空に輝く方舟を見上げ、かすかに苦い笑みを浮かべた。


「エーテルリアクターという強力な動力を使い、彼らは方舟を作り上げた。その方舟には、人間だけでなく、動物たちも乗せられた。戦いの中で滅びゆく種族たちを守るために。そして、その方舟こそが、星間移動方舟アルドゼファーだったのだ。」


「それで…どうして方舟はこの地に降りてきたのですか?」エミリアが興味深そうに尋ねた。


獣人は目を閉じ、遠い過去の記憶を呼び起こすように息を吐いた。


「計画通りにいかなかったのだ。方舟は無限の星々を目指して航行していたが、ある時、エーテルリアクターに異常が生じた。制御不能になった方舟は、行き場を失い、やがてこの星に降り立った。そして、方舟内部では異変が起こった。エーテルリアクターは人の魂と動物の魂を不思議な形で融合させてしまったのだ。」


彼の言葉を聞いて、エミリアは思わず息をのんだ。

彼女たちは獣人の存在には慣れていたが、その起源について深く知る機会はなかった。


「その結果が、私たち獣人だ。」

獣人は自分の胸を軽く叩きながら続けた。

「人と動物の魂が混ざり合い、新しい命として生まれたのが我々だ。かつての人間でもなく、かつての動物でもない。私たちは新たな存在として、この地で生き延びてきた。」


彼の声には、深い悲しみと同時に誇りが混じっていた。


「つまり、方舟がこの地に降りたことで、獣人が生まれたんですね…」セレナがそう確認するように言った。


「その通りだ。そして、今もなお、あの方舟はそこにある。まるで、過去の罪と運命を背負い続けるかのように…」獣人は静かに言葉を紡いだ。


彼女たちは再び空を見上げた。

月の隣に浮かぶ方舟アルドゼファーは、静かにその場に佇んでいた。

それはまるで、過去の悲劇を語りながらも、未来への希望を見守るかのようだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ