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救世主物語  作者: アルドア
4章

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第63話 大浴場

空は暗く始まり、山の頂上に立つ大きな神殿の灯りが、ほっとするような温もりを提供していた。


まず、豹の獣人エドが教えてくれた大浴場に

女性陣だけ行くことになった。


男性陣は先にご飯を食べるそうだ。


「今日はゆっくり休みましょう」とカレンが声をかけ、みんなで神殿の大浴場に向かうことにした。


女性陣たちは浴衣に着替え、大浴場へと向かう途中で笑い合っていた。


旅の疲れを癒す温泉が彼女たちを待っている。


湯気が立ちこめる広い風呂場に足を踏み入れると、誰もが自然に声を上げた。


湯船の中で波のように揺れる湯は、まるで柔らかな布に包まれているかのような心地良さを感じさせた。


セレナは湯船の端に座り、静かに体を浸していった。彼女は優しく湯をすくい、慎重に肌を慣らしていく。「柔らかい湯だわ」と、目を閉じながら呟いた。


一方で、カレンは静かに目隠しをして浴室に入ってきた。

彼女の魔眼は、その強大な力を封じなければならないため、普段から目を覆う布を外すことができない。

目隠しをしたまま、掛け湯をする彼女の姿は不思議と凛とした美しさがあり、湯の中に漂う彼女の姿がどこか儀式めいて見えた。


エミリアは皆を観察した。


セレナは年下だけど、胸は大きくかった。

湯船に浮かんでた。


カレンは綺麗に整っていて隙がなかった。

目隠しもして妖艶さが増していた。


アイリスはハーフエルフだと言ってたけど、

見た目の違いがわからなかった。

このメンバーの中では、一番スレンダーな体型かなと失礼な事を考えていた。


エミリアは自分も大分成長してきた。

セレナには及ばないけれど大きくなったし、

背もカレンに近づくほど高くなった。


エミリアは、ふとカレンとアイリスの関係が気になった。

二人は仲が良いが、どこかライバルのような雰囲気も感じさせない。

そんな疑問を抱いた彼女は、そっとアイリスに尋ねてみた。


「カレンとどれくらい付き合いが長いの?」


アイリスは少し驚いたような顔をしたが、すぐに小さな笑みを浮かべて答えた。

「私たちの付き合いは学院時代からよ。セレスティア王立学院では、カレンが首席、私は次席だったの。まさに完璧なライバル関係って感じでしょ?」


彼女の声には、どこかひねくれた響きがあった。

エミリアはその言葉に含まれる感情の微妙な揺れを感じ取った。


「でもね、カレンは全然ライバルとして意識してないのよ。どんなに勉強しても、彼女には勝てないって、わかってしまったから」と、アイリスは髪をお湯で流すカレンの姿を見ながら言った。

「入学試験で彼女が全問正解して、それから何もかも上手くいく人なんだって思い知らされたの」


カレンはそんな会話には気づかないかのように、黙々と髪を洗っていた。

その背中は静かに湯気の中に佇んでおり、湯の光を浴びて美しく輝いている。

エミリアは思わずその背中を見つめ、「綺麗だな」と心の中で呟いた。


ふと、アイリスが語り始めた。

「私が薬草学や衛生学に興味を持ったのは、母の影響なのよ。母はエルフだったんだけど、彼女が未知の病気にかかった時、誰も手を打てなかった。私は必死で薬を調合して、何とか治したの。でも薬師としては前例のない調合は、禁忌とされたせいでね。エルフと人間のハーフということもあって、村から追放されちゃった。」


彼女の声には、かすかに悔しさが混じっていた。それでも彼女はあくまで冷静だった。


「私はそれが正しいと信じていたし、だからこそセレスティア王立学院に入って勉強してきた。でもね……学院にはカレンがいた。彼女に勝てると思っていたのに、やっぱり彼女は特別だった」


アイリスの目が細められ、笑みを浮かべた。悔しさと同時に、どこか誇らしさも滲んでいた。


カレンという存在が、彼女の人生にどれほどの影響を与えていたのか、その一言一言から深く伝わってくる。


カレンは、そんなアイリスの言葉に耳を傾けるでもなく、静かに湯の中で自分の時間を楽しんでいた。


その背中にかかる濡れた髪を撫でる仕草は、どこか無防備でありながらも美しく、エミリアはその姿をずっと見つめていた。


湯船の中、4人の女性はそれぞれが抱える思いを胸に、温かな湯に包まれながら静かに語り合う。


湯けむりが漂い、時間がゆっくりと流れていく中、4人はそれぞれの思いを抱えつつも、少しずつ心を開いていった。

セレナは湯に浸かりながら、優しい笑みを浮かべ、彼女なりの穏やかな空気を保っていた。

エミリアはアイリスの言葉に興味を抱きつつも、心の中で一つの疑問がくすぶっていた。


「それで、カレンに負けたって思ったのに、どうして今でも彼女と一緒にいるの?」エミリアはふと、口に出してしまった。


アイリスは少し目を細めて笑った。「どうしてかしらね……」彼女は湯の表面を撫でるように手を動かし、目を伏せた。

「悔しいけど、私はカレンのことが嫌いじゃない。むしろ、尊敬しているのかもしれないわ。あの強さと揺るぎない自信、それが私にとっては、目標であり続けてるの」



「目標?」エミリアは驚いたように反応した。「それでも、ずっと一緒にいるって、何か辛くない?」


「辛いわよ、もちろん」とアイリスはあっさりと答えた。

「でもね、彼女を見ていると、私ももっと成長できるんじゃないかって思えるの。だから、こうして彼女について行くことにしたの。たとえ私が次席であろうと、彼女のように強くありたいってね」


アイリスの声には、覚悟のようなものが感じられた。

エミリアはその答えを聞いて、少し戸惑った。

アイリスがカレンをただのライバルとして見るのではなく、深い敬意を持っていることが伝わってきたのだ。

そんなアイリスの姿に、エミリアは感心しつつも、同時に少しの羨望を抱いた。


その時、カレンが不意に口を開いた。

「もういいだろう、アイリス」


その声に二人は驚き、アイリスは少し顔を赤らめた。

カレンは目を覆ったまま、静かに湯の中で髪を絞っていた。


「わざわざ昔話をする必要はない。それに、アイリスは私に負けているわけじゃない。自分の道を進んでいるだけだ」


カレンの声は冷たくもなく、しかし感情を押し殺したような響きがあった。

それがかえって、彼女の本心を見せているようにも感じられた。

アイリスは小さく笑って、湯に浸かったまま頷いた。


「そうね。あなたの言う通り、私は私の道を進んでいるわ」


エミリアはそんな二人のやり取りに、ますます興味を引かれた。

彼女たちは表面上はライバルのように見えて、実際には強い絆で結ばれているのだ。

それは単なる友達でもなく、深い信頼関係が根底にあるように思えた。


「でも、カレンさんが強すぎます。」とセレナが柔らかく微笑んで、冗談めかして言った。


カレンは少し肩をすくめた。「ただ、やるべきことをやっているだけだ。それに、私が強いわけじゃない。私が選んだ道が、たまたま他の人より険しかっただけだ」


その言葉に、エミリアもアイリスも一瞬黙り込んだ。カレンの言葉は、シンプルでありながらも重みがあった。

彼女がこれまでに歩んできた道、その孤独と苦悩が垣間見えた気がした。


エミリアは湯船の中で、自分の手を見つめながら、カレンの強さに対する憧れと、同時にその背負うものの重さを感じていた。


「私も……もっと強くならなきゃ」と、エミリアは心の中で決意した。


湯の中に静けさが戻り、4人はそれぞれの思いを抱きながら、湯気に包まれていた。


旅の疲れが少しずつ癒されていく中、彼女たちの絆は、これまで以上に強く深まっていた。



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