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救世主物語  作者: アルドア
4章

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第60話 それぞれの生き方(挿絵あり)

エミリアは食事を進めながら、ふと気になっていたことを問いかけた。

「ところで、地獣天帝ギルガレット様はどのようなお考えの方なのですか?統治の仕方についても教えていただけますか?」


虎の獣人ミドは少し考えてから、慎重に答え始めた。

「ギルガレット様は非常に賢明で、力強いリーダーです。このアルドゼファー大陸は、彼の統治のもとで各獣人の部族ごとにまとまりながら共存しています。彼は、部族ごとの自主性を大切にしており、それぞれの部族が独自の文化や生活様式を保ちながらも、争いを避けて平和に暮らせるよう配慮しているのです。」


豹の獣人エドが付け加えた。

「ギルガレット様は力に頼るだけの統治ではなく、知恵と寛容さを持ち合わせておられます。彼は、強者が弱者を守り、全ての部族が共に繁栄することを目指しているんです。しかし、何よりも自然との共生を重んじていて、無理な開発や過剰な資源利用は厳しく制限されています。」


「なるほど……」エミリアは興味深げにうなずいた。

「その中で、稀に人間の集落もあると聞きましたが、彼らはどのような立場にいるのでしょうか?」


豹の獣人エドは少し困った顔をしながら答えた。

「そうですね、人間の集落は確かに存在しますが、彼らは天帝ギルガレット様の庇護には入っていません。基本的に獣人とは異なる文化や価値観を持っていて、こちらからも干渉することはありません。細々と自分たちの生活を営んでいますが、獣人部族とはあまり交流はなく、独自に暮らしています。」


エミリアはその話を聞きながら、人間と獣人の共存の可能性や、彼らの関係性について考えを巡らせた。

「人間の集落も、いつかこの大陸全体ともっと深い絆で結ばれることがあるのでしょうか……」


虎の獣人ミドは柔らかく笑って、

「それはギルガレット様と、人間たちの意思次第かもしれませんね。ですが、今はお互いを尊重し、無理に干渉し合わないことで平和が保たれているのです」と答えた。





虎の獣人ミドはエミリアの質問に答える際、少し重い口調で話し始めた。

「実は、なぜ人間が天帝ギルガレット様の庇護に入っていないのかには、重要な理由があります。この大陸では『大地は誰のものでもない』という考えが根底にあり、畑を作って土地を支配しようとする行為は厳しく禁じられています。」


エミリアは驚きながらも興味深く聞き入った。


豹の獣人エドが続けた。

「ところが、かつて人間たちはこの掟を破り、自分たちの土地を耕して『ここは私たちのものだ』と主張しました。天帝ギルガレット様はこれに激怒し、人間たちを見放しました。それ以降、人間の集落は天帝の庇護の外で暮らすことになり、他の獣人部族からも距離を置かれることになったのです。」


エミリアは考え込んだ。

「大地を所有しようとする行為が、天帝にとってそんなに重大な裏切りだったのですね……」


虎の獣人ミドは静かに頷いた。

「そうです。この大陸では、大地は全ての生命が共有するものとされています。土地を占有し、私物化することは自然の摂理に逆らう行為と見なされます。だから、獣人たちは狩りや自然の恵みを分け合って生活しているんです。」


エミリアは、獣人たちの価値観が自然と共に生きることを重視していることを理解し、これが人間と獣人の間に深い溝を生んだ理由であることを知った。


「狩りは強くないとできませんが、畑なら弱くてもできます。日々の忍耐が必要ですが、それすらもダメでしょうか?」


エミリアが問いかけた後、虎の獣人ミドは少し厳粛な表情で答えた。

「狩りというのは確かに強さを求められるものです。しかし、それがこの大陸での生き方であり、自然の摂理に従うものです。

私たち獣人にとって、食べられない者が生き残るために畑を持つことは、自然に逆らう行為だとされています。」


豹の獣人エドが補足するように言った。


「年老いた生き物が自力で食べることができなくなれば、それは自然に還る時が来たということ。誰もそれを無理に延命しようとはしない。それが、この大陸の生き方なんだ。」


エミリアはその言葉に驚きを隠せなかった。


「でも、畑を持つことで、増えすぎたり年老いた者でも生き延びられる。それがそんなに悪いことなのでしょうか?」


虎の獣人ミドは静かに首を振った。


「悪いとは言わない。しかし、それは自然の摂理に反する。増えすぎた生物が生き延びるために、無理に生を続けさせることは、自然の循環を止めてしまう。だから、畑を持って生きるということは、ただ生かされているだけの存在を増やしてしまうことになる。それは、私たちにとって受け入れがたいことなんだ。」


エミリアはその考えに深く考え込んだ。

獣人たちが持つ自然への畏敬と、厳格なまでの自然の循環への尊重。

それは、人間の文明とは異なる価値観であり、エミリアには理解しがたい部分もあったが、同時に一種の理にかなった生き方とも感じられた。


「それがこの大陸の生き方なのですね……」


エミリアはそう言いながらも、心の中で人間との違いを痛感していた。










挿絵(By みてみん)

虎の獣人ミドと豹の獣人エド

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