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救世主物語  作者: アルドア
4章

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第59話 アルドゼファー大陸出発

翌朝、改めてアルドゼファー大陸に到着したエミリアと使節団の一行は、目の前に広がる雄大な平原に驚嘆した。

遠く地平線まで続く平らな大地には、草原が一面に広がり、野生の動物たちが悠々と暮らしているのが見えた。

空は澄み渡り、風が優しく吹き抜ける、まさに自然そのものの楽園のようだった。


「広い…」とエミリアは呟き、足を止めた。彼女の瞳は遠くを見つめ、アルドゼファー大陸の壮大さに心を奪われていた。これまでの過酷な旅路を思い返すと、この静けさと広がりはまるで別世界のように感じられた。


「ここがアルドゼファー…」カレンもまた、その壮大さに言葉を失っていた。


この大陸は、地獣天帝ギルガレットが治めており、彼は獣人として知られる強大な存在だった。

この地には獣人たちが多く住み、彼らは自然と共存しながら、厳しい環境の中でも独自の文化を育んできた。


「ギルガレット…彼については聞いているが、どんな者なんだろうか?」エミリアは興味を抱きつつも、少し警戒を滲ませた表情で言った。


使節団の一人が答える。

「地獣天帝ギルガレットは、この大陸の全ての獣人族を統率している人物で、強大な力を持つ戦士と聞いています。彼の力は、この広大な地に住むあらゆる生物からの信頼を得ており、平和を守る存在として知られています。」


エミリアは頷きながら、広がる平原の奥に視線を移した。

地獣天帝ギルガレットは、彼女たちをどう迎え入れるのか、それはまだわからなかったが、この大陸に住む人々や獣人たちとの関わりが、彼女たちの旅に新たな展開をもたらすことを予感させた。


「さあ、行こう。この大陸の新たな冒険が始まる。」エミリアは一行に声をかけ、彼女たちは再び歩き出した。

遠くのほうで、人影がこちら向かってきた。

どのような来訪者か分からないが、構えて待機することになった。


ところが、迎えにやってきたのは、豹の獣人と虎の獣人だった。


彼らは天帝ギルガレットの遣いとして、エミリアたちを案内するためにやってきたと言う。

獣人たちは恭しく一行を迎え、笑顔を浮かべながら「お待ちしておりました」と一言。


「この地では大型の獣を使って移動するのが普通です」と、虎の獣人が説明した。彼らが連れてきたのは巨大な四足の獣で、その背中には大きな小屋のような構造物が固定されていた。小屋の内部には10人ほどが座れる広さがあり、快適なソファまで設置されていた。移動速度はゆっくりだったが、その高さからは大平原の風景が一望でき、乗っているだけで新鮮な気分にさせられた。


エミリアは興味深そうに窓から外を眺めながら、虎の獣人に尋ねた。

「あなたたちは、どうして人間のような姿と虎や豹の特徴を持つのでしょうか?獣人族というのは、どのようにしてその形になったのですか?」


虎の獣人は少し考えてから、口を開いた。

「私たち獣人族の起源には、古くから語り継がれる伝説があります。昔々、この大陸には強大な霊獣たちが住んでいました。その霊獣たちは、自然と共に生きる術を極めた存在で、強力な魔力と長寿を持っていたと伝えられています。彼らは人々に多くの知識と力を授け、次第に私たちはその力と霊獣の特性を受け継ぎ、獣人としての姿を得たと言われています。」


「つまり、霊獣の力を分け与えられた結果、こうした姿になったのですか?」

と、エミリアは興味津々に尋ねた。


「そうです。私たちは、霊獣の魂を守り続け、その教えを受け継いで生きている存在です。この大陸での暮らしは、自然と共存し、霊獣の意志を大切にしてきました。そして、その力が我々の姿に現れているのです」と、豹の獣人が続けた。


エミリアは頷きながら、

「とても興味深い話です。自然と共存するという考え方が、あなたたちの強さや優しさに繋がっているのでしょうね」と微笑んだ。


獣人たちの起源に触れたエミリアは、この地の文化や価値観に対する理解を深めながら、アルドゼファーでの冒険がさらに興味深いものになることを感じていた。


夕方が近づくにつれ、空はオレンジ色に染まり始めた。

虎の獣人ミドが、笑顔で「この先にある村で一晩泊まりましょう。食事は海の幸が豊富ですよ」と提案した。

しかし、使節団のメンバーたちは、アルドゼファー大陸に渡る際に経験した海魔との戦いを思い出し、互いに顔を見合わせ、遠慮気味に首を振った。


「いや、海の幸はちょっと……」と使節団のノアが答えた。


その横で、豹の獣人エドが「イカが本当に美味いんだがなぁ……」とつぶやき、少し残念そうにしていた。


エミリアはその言葉を聞いて、戦闘中のクラーケンを思い出してしまい、思わず身震いをした。

「イカってあの大きなやつ……?」と声を震わせながらつぶやいたが、すぐにその光景を頭から追い出そうと努めた。


「今日は大地の恵みをいただくのもいいんじゃないかしら?」と、カレンが気を利かせて、少し笑いながら場を和ませた。


ミドは「なるほど、では地元の特産物を準備しますよ。海の幸は無理に勧めませんから、安心してください」と笑い、村へ向けて一行を案内した。


村に到着すると、現地の獣人たちがささやかな歓迎会を開いてくれた。

村は活気に満ち、シンプルだが温かみのある飾り付けがされていた。エミリアと使節団は、テーブルに並べられた地元の食材を見渡しながら、獣人たちの生活に感心した。


ミドが説明を始めた。

「この村では主に狩りをして生活しています。山々の恵みをいただき、必要なものは交易で手に入れます。畑はありませんが、山の動物たちや野草、果実が豊富で、食料には困りません。」


エミリアは山の恵みで成り立つこのシンプルな生活に深い興味を持った。

「自分たちの手で自然から食べ物を得るんですね。とても素晴らしいです。」


獣人たちは満足げにうなずきながら、狩りで得た獲物や山菜の料理をすすめた。

香ばしく焼かれた肉や新鮮な果実がテーブルに並び、使節団も食事を楽しみ始めた。


「この村には長い歴史がありますか?」エミリアはさらに話を聞きたくなり、質問を投げかけた。


「ええ、私たちの祖先はこの地で長い間暮らしてきました。獣人の文化は自然との共存を大切にしていて、山や森、動物たちへの感謝を忘れません」とミドが誇らしげに答えた。


エミリアは自然と共に生きる獣人たちの文化に心を打たれ、その純粋な生活に触れることができて嬉しく感じた。そして、村の人々との交流を通じて、この地での滞在が特別なものになる予感を抱いた。



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