第52話 星の救世主(挿絵あり)
エミリアがセンチュリア帝国を巡る旅を続けていたある日、北部の小さな村で大規模な災害が発生したという知らせが届いた。
北部の寒冷地は、長年凍てつく雪と氷に覆われており、食料不足や資源の枯渇に悩まされていた。しかし、今回はそれに加え、大規模な魔物の侵攻が確認された。
帝国の情報部及び、冒険者ギルドによってその情報をもたらされた。
3日後には北部の小さな村は飲み込まれる見込みであった。
帝国は速やかに北部前線に兵を結集させ、南下したところで叩くつもりだった。
つまり小さな村は見捨てるつもりであった。
仕方がなかった。そこまでに辿り着くまでの兵の損耗や、遠征までにかかる時間を考えれば、南下した砦に兵を集めるのは定石であった。
帝国の判断は戦略的に正しかったが、彼女の心はどうしてもその結論を受け入れられなかった。
村人たちが魔物の餌食になる未来が許せなかったのだ。
その報せを聞いたエミリアは、すぐに村へ向かう決意を固めた。
彼女の仲間たちが止めるのも聞かず、「私には何かできるはず」と信じていた。彼女の能力であれば、魔物達侵攻を食い止め、埋もれた人々を助け出せるかもしれないと思ったのだ。
カレンや使節団の警告や懸念を振り切り、
エミリアは光の防御壁を纏い
「星よ落ちろ!」
自分自身を光の防御壁でまとい、敵に体当たりする技であったが移動手段としてエミリアは使った。
何度もつぶやき、北部へと夜空を駆け抜けた。
そして現地の冒険者ギルドでは、少ないながらも善戦はできていた。
だが時間の問題で住民の避難に間に合わないと支部長が判断し、撤退の命令を下して再度、南下した砦に再結集図ろうとした。
村への救援要請が帝国中に発信され、各地から援軍が向かうも、地形や悪天候のために思うように救助活動が進まない。
多くの人々が絶望に沈み、救助が間に合わないと悲観していた。
その時、エミリアが空から光の流星のごとく現れた。
彼女の出現とともに、暗雲のように立ちこめていた恐怖が一瞬にして消え去った。
「星よ輝け!」
エミリアが力強く唱えると、無数の光の矢が空から降り注ぎ、魔物たちを貫いていく。
光の雨は魔物の群れを切り裂き、次々と消滅させていった。
彼女の力は圧倒的だった。神々しい光に包まれた彼女は、まさに天から降り立った救世主のようだった。
「なんという…力だ…」
冒険者たちはその圧倒的な光景に息を呑み、村人たちは祈るように彼女を見つめた。エミリアは、ただ一人で戦況を逆転させた。無数の魔物たちは、彼女の放つ光の力によって次々と崩れ落ち、やがて戦場は静寂に包まれた。
次に、彼女は村中に響き渡る声で「皆さん、大丈夫です!私が助けに来ました!」と叫んだ。エミリアは両手を高く掲げ、
「星よ導け!」と唱えた。すると、彼女の周囲から光が広がり、村全体を包み込んだ。
その光は温かく、凍える大地を溶かすような力を持っていた。
瓦礫の下に埋もれていた人々が次々と光に包まれ、その場所を導いてくれた。
まるで奇跡のような光景に、村人たちは涙を流しながら彼女を見つめた。
「みなさん、手伝える人は手伝ってください。
この光の下に生存者たちがいます。」
エミリアの声に冒険者達や動ける村人達は一緒に救助活動をした。
崩れそうな瓦礫は光の防御壁によって支えられ、救助活動は速やかに行われた。
だが、瓦礫や魔物達によって大きな怪我は多かった。
その中に生命があっただけで良かったと思う者は多かった。
しかし、エミリアは深く息を吐くと、今度は傷ついた人々へと歩み寄った。
彼女は両手を掲げ、
「星の癒やしを」と優しく唱えた。
すると、光が村全体を包み込み、冒険者たちや村人の傷が次々と癒されていく。
「ありがとう、救世主様…」
村人たちは涙を浮かべ、エミリアに感謝を伝えた。彼女はただ微笑み、静かに頷くだけだった。自身の行動を誇示することもなく、彼女は謙虚にその場に佇んでいた。
「私はただ、助けたいと思っただけです。命が失われることは、誰にとっても悲しいことですから。」
その言葉に、冒険者たちも深く感銘を受け、村の人々と共にエミリアを讃えた。
こうして、エミリアはその力で村を救い、人々から「星の救世主」として語り継がれることとなった。帝国全土に、この勇敢な若い女性の名が広まり、彼女の存在は多くの人々の希望となっていくのであった。




