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救世主物語  作者: アルドア
3章

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第47話 センチュリア帝国の影で

列車から降りたときの喧騒は、エミリアにとってもディレードにとっても圧倒的だった。

バモスカラ大陸中央部に位置するセンチュリア帝国の首都は、見渡す限り人と列車があふれ、広大な帝国の力を誇示するようにその壮麗さを放っていた。

大勢の人々が行き交い、列車は並んでホームに停車し、都市全体が活気に満ちていた。


「すごい…」エミリアは立ち止まって目を見張った。何両もの列車が並び、多くの乗客が降りてくる光景は、彼女の想像をはるかに超えていた。


「ここがセンチュリアか…大きいな。」ディレードも驚いたように周囲を見渡していたが、その目にはどこか違和感が漂っていた。彼が見ているのは単なる風景ではなく、まるで何か別の存在が彼を通して見ているかのようだった。


エリシアはエミリアとディレードの様子をちらりと見てから、ふと立ち止まった。

「エミリア、ここで別れるわね。私はディレードを連れて、彼の知り合いに会いに行くから。」


エミリアは少し寂しそうな表情を見せながらも、

「うん、気をつけてね。私もすぐに帝国の責任者と会わないと。」と答えた。


エリシアとディレードはエミリアを見送ったが、エリシアはディレードの様子にすぐに気付いた。

彼の目はどこかぼんやりとしており、エミリアやセレナと遊んでいたときの活発な姿とはまるで違っていた。


「ディレード、私を見なさい。」エリシアは厳しい声で命じ、ディレードは反射的に顔を向けた。


その瞬間、エリシアは彼の顔を両手でつかみ、目の前に自分の顔を近づけた。「ヴァニティ・テンプテーション」彼女の声が甘く、誘惑的な響きを帯びた瞬間、ディレードの意識はぼやけ、頭の中が霧のように曇っていく感覚に陥った。彼の警戒心がすっと解け、無意識のうちにエリシアに従い始めた。


人気のない場所へと足を運び、エリシアはディレードの右目をじっと見つめた。

「あなた、こそこそ覗いているわね。」彼女がそう言うと、突然ディレードの右目から不気味な触手のようなものが現れ、目玉の怪物が姿を現した。


「さすがは魔王エリシア様、よくぞお気づきに。」目玉は不気味に笑いながら、彼女に語りかけた。


エリシアは冷たい目で怪物を見下ろしながら、「今すぐ私を本体のところに案内しなさい。そうしないと、あなた達の巣穴にアジ・ダハーカを十匹ほどぶちこむわよ。」


目玉の怪物は震え上がり、「わ、わかりました…ここから少し進んだ先に、小さな小屋があります。そこに案内します。」と恐る恐る答えた。


ディレードは痛みに顔を歪めながらも、エリシアの後について行った。彼の右目が抜けたことで、頭の中に漂っていた誘惑の霧が少しずつ晴れていくのを感じていた。


「お前がやったのか?」ディレードは痛みに耐えながら、エリシアに問いかけた。


エリシアは歩きながら、「そうよ。虚魔幻惑ヴァニティテンプテーションという魔王の力を使ったわ。相手を誘惑し、心を操ることができるわ。最初に会ったときは魔剣もあって効かなかったけど、今は隙ができたみたい。エミリアの影響かしら?」


「でも、安心しなさい。私の命令に従っておけば、悪いようにはしないわ。」

エリシアの冷たい声に、ディレードは背筋が凍るような感覚を覚えた。彼女の言葉が信じられず、恐怖が彼を包み込んでいたが、彼にはもう逆らう力は残されていなかった。


目玉の怪物により案内をされながら、古びた小屋があった。


二人は、古びた小屋の扉を静かに開いた。

中に入ると、薄暗く、ほこりっぽい空気が漂っていた。

息を潜めて進むと、薄明かりの中にフードを深く被った小柄な影が立っていた。

その姿は子供のように見えたが、その存在感は異様だった。

「ようこそ、ここまでの旅路、大変だったでしょう。どうぞ、ここでしばらくお休みを。」

その影が冗談のような調子で言うと、エリシアは無言のままディレードに目を向けた。


「ディレード、やりなさい。」


彼女の静かな命令が降りると、ディレードの手は大剣を握り、一瞬のうちに動いた。

その動きは風さえも起こさず、

まるで時間が止まったかのように滑らかだった。

その瞬間、鋭い斬撃が部屋全体に響き渡り、フードを被った影の身体がまるで幻のように消えた。そして、その後ろに現れたのは、タコのような姿をした男。

8本の腕を持つ異形の魔族だった。

そのうちの一本が床に転がり、切り落とされた断面から血がしたたり落ちていた。

「ぐあああ。!」魔族は叫び声を上げ、痛みにのたうち回りながら自分の状況を理解しようとしていた。

何が起こったのか、あまりにも早すぎて理解できていない。

エリシアは冷ややかに魔族を見下ろし、ロ元に不敵な笑みを浮かべた。

「舐めたマネをすれば、あなたは魚の餌にしてあげるわ。」


彼女の声は冷酷で容赦がなかった。

まるでその言葉が現実になるかのような迫力があった。

「先に一つだけ命令するわ。彼の姉を今すぐここに連れてきなさい。ここにいるのは分かっているのよ。さあ、さっさと従いなさい。」


魔族は痛みに耐えながら、エリシアの言葉を理解しようと必死だった。

彼女が持つ圧倒的な存在感と力に、体が本能的に震えていた。

彼らが計画していたことが、彼女の前では何もかも無力であることを悟り始めていた。

「さぁ、聞かせてちょうだい。あなたたちが何を企んでいるかを。」エリシアはゆっくりと一歩前に出た。

その視線は鋭く、魔族の心の奥底まで見透かすかのようだった。

「俺おいらは、ただ、」魔族は啤きながら、どうすればこの場を切り抜けられるかを必死に考えた。

しかし、目の前に立つエリシアの姿に恐怖が染み込んでおり、言葉が詰まる。

「言い訳は聞きたくないわ。」

エリシアは冷たく言い放ち、ディレードに目をやった。

「もしこの男が口を割らなければ、次はもう一つの腕を切り落としてちょうだい。」

ディレードは無表情のまま大剣を持ち直し、再び構えた。

その瞬間、魔族は焦り、声を震わせて言った。「待ってくれ!話す…話すから! 」


タコ魔族オイスタはエリシアに屈した。

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