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救世主物語  作者: アルドア
3章

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第45話 3人の子供たち

列車の中では、使節団の一同がそれぞれの時間を楽しんでいた。

豪華な座席や洗練されたサービス、列車内の施設に驚き、彼らの顔には自然と笑みが浮かんでいた。

もっとも、悪ノリし過ぎたエルンケ・ギが乗務員に軽く叱られた件は、みんなの笑い話として早々に忘れられたが、全体としてこの旅は好評だった。


一方、エリシアは少し疲れがたまっていたのか、ビールを飲んで席に沈み、そのまま眠りについていた。

心地よい揺れとアルコールが、彼女を穏やかな眠りに誘ったのだろう。寝息を立てる彼女の横顔は、普段の厳しい表情とは違い、どこか無防備で優しいものだった。


そのころ、エミリアは興奮が収まらず、列車内を探索していた。

ふわふわの座席や大きなガラス窓、窓の外を流れる景色、列車内で提供される美味しいジュースに、上からお湯が出る不思議な装置――すべてが彼女にとって新鮮で、目を輝かせるものだった。


探索の途中でカレンに出くわすと、エミリアは無邪気に

「セレスティア共和国にもこの列車を作ろうよ!」と提案した。

しかし、カレンは少し難しい顔をしながら答えた。「この列車はね、いくつもの複雑な技術が組み合わさってるんだ。魔力炉やレールの設置、列車を動かす仕組み、タービン、どれも専門知識が必要だし、それを維持する技術者もたくさんいるんだよ。だから、すぐには無理かもしれないね」と慎重に説明した。


エミリアは一瞬残念そうな顔をして、「無理かぁ」と呟いたが、次の瞬間には新たな興味に目を輝かせた。ふと目に留まったのは、列車と列車の間の隙間に腰を下ろしていた少年魔剣士ディレードだった。


彼がこんな場所にいることに少し驚きながら、エミリアは好奇心のままに近寄って話しかけた。

「ディレード、あなたってこの辺りの出身?それとも別の場所から来たの?この列車、すごいよね!あ、それと、これ食べた?イカの日干し、美味しいよ!」


エミリアの口からは次々と質問や話題が飛び出し、まるで止めどなく流れる滝のようにディレードに襲いかかっていった。

彼は少し困惑したようにエミリアを見つめていたが、その無邪気で純粋な好奇心には抗えず、彼なりに答えることにした。


「えっと…俺はここ出身じゃないよ。あちこち旅してるだけだ。この列車も初めて乗るけど、確かにすごいな…それに、イカの日干しって、まだ食べてない…」


ディレードは少し戸惑いながらも、エミリアの勢いに押されて淡々と答えていった。その姿は、周囲の喧騒に紛れて控えめであったが、どこか心地よさそうにも見えた。


エミリアはイカの日干しを自分の腕で二本に切り分け、ディレードに差し出した。

「はい、どうぞ!」と明るい笑顔を浮かべながら、無邪気に彼に勧めた。その無防備で純粋な笑顔は、ディレードの心に小さな波紋を広げた。彼は普段、他人との距離を保つようにしていたが、エミリアの無垢な振る舞いにどう応じていいか分からず、戸惑いながらもイカの日干しを受け取った。


「ありがとう…」と、少し照れくさそうに呟いたディレード。

彼はこのような親しげなやりとりに慣れていなかったが、エミリアの明るさが不思議と心を和ませてくれた。彼女の目には、まだ少し幼さが残りつつも、好奇心に満ちていた。彼が日常的に感じる緊張感や警戒心は、彼女の前では急速に解けていくようだった。


その時、セレナが合流した。

「エミリア様、何してるの?」と、彼女は微笑みながら近づいてきた。エミリアは嬉しそうに「一緒に列車内を探索しようと思って、ディレードも誘ったんだ!」と返事をした。


ディレードは一瞬ためらい、二人の間に立つ形で、少し居心地の悪さを感じたが、エミリアの輝く瞳とセレナの優しい微笑みを前にしては、断るのも難しかった。

「えっと…ちょっとくらいならいいよ」と、声を低めに答え、探検に付き合うことにした。


列車内を歩く三人。エミリアは先頭を元気よく歩きながら、時折ディレードに「これ見て!すごいでしょ?」と話しかけ、彼を楽しませようとしていた。その背中は、どこか姉のような優しさが感じられた。ディレードはその後ろを少し控えめに歩きながら、彼女のテンションについていくのが精一杯だった。


「これが列車の食堂だよ!」エミリアが食堂の扉を開け放ち、中に入ると、豪華な内装と美味しそうな香りが彼らを迎えた。ディレードは一瞬その豪華さに圧倒されたが、エミリアとセレナはすでにメニューを見ており、何か楽しそうに選んでいた。


食堂での軽い食事の後、エミリアとセレナは列車内にある小さな雑貨店に立ち寄り、髪飾りを手に取った。エミリアはセレナに向かって、「ねえ、どれがいいかな?」と女の子らしい話題を持ちかけ、二人はあれこれと楽しそうに話していた。


ディレードは少し距離を置きながら、二人の楽しそうな様子を眺めていた。彼にとって、こうした普通のやりとりは非日常だった。旅の中で何度も戦いに身を置いてきた彼にとって、こんなに平和で、柔らかな時間を過ごすことは珍しく、どこか不思議な気分を味わっていた。


エミリアがふとこちらを振り返り、微笑んで「ねえ、ディレードも一緒に選んでよ!」と言った。その無邪気な笑顔に、彼は言葉を失った。警戒心は、いつの間にか彼の心から溶け去っていた。今ここで感じているのは、ただの安らぎ――それも、いつしか失っていた感覚だった。


ディレードは自然に微笑み返し、「じゃあ…この青いのがいいんじゃない?」と、少し照れながら答えた。その時、彼はこの旅が今までのどの旅とも違うことを感じ始めていた。



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