第44話 列車の旅
エミリア使節団一行は、ついに大陸縦断列車の中継都市に到着し、その目の前に広がる巨大な列車を目にして興奮していた。
アルディア大陸では見かけないほど大きく、まるで馬車を何台も連結したかのようなその姿に、みんなが興奮していた。
まるでお祭りのような雰囲気の中、エミリアは疑問を抱いていた。
「これ、どうなってるの?」
エミリアは興味津々にエリシアに尋ねた。
エリシアは微笑みながら簡単に説明を始めた。
「鉄のレールを地面に敷いて、その上を鉄の車輪で走らせているの。それに、この列車は魔力炉で水を沸騰させて、その蒸気でタービンを回して動いているのよ。推進力はそのタービンから得ているわ。」
エリシアは自信を持って説明したが、エミリアの表情は少し困惑していた。
「うーん…ちょっと難しいかも…」と呟く彼女を見て、エリシアは微笑を浮かべたが、それ以上詳しい説明をするのは控えた。
一方、カレンは列車の各部を注意深く観察しながら、何やらぶつぶつと独り言を呟いていた。彼女は機械や魔力に興味があり、この列車の技術に強く惹かれているようだった。
「この旅では、この列車で大陸を縦断しながら、各中継都市に止まっていく予定よ。見て回るのも楽しみね」とエリシアが提案すると、エミリアたちはさらにワクワクした様子を見せた。
エリシアの権力と彼女が誇る白銀級の冒険者カードを活かし、使節団は一等席の予約を確保していた。
一等席は、まさに贅沢そのもので、広々とした座席、簡易的な宿泊施設、食堂、カクテルバー、さらにはトイレとシャワー室まで完備されていた。
この列車は、ただの移動手段ではなく、快適な旅を楽しむための豪華な施設そのものであった。
エミリアは驚きの声をあげながら、「まるで移動する街みたい!」と目を輝かせていた。使節団のメンバーも同じように興奮しており、それぞれが新しい体験に期待を膨らませていた。
列車の発車を待つ間、一行はそれぞれの時間を楽しんでいた。エリシアは余裕の表情で列車の旅を楽しむつもりのようだが、エミリアやカレン、そして他の使節団のメンバーたちは、これからの冒険と新しい発見に胸を膨らませていた。
列車の出発時間が迫り、車内がざわめき始めた。すると、突如として響く大きな汽笛の音が一行の耳を打った。鋭く甲高い音が空気を震わせ、まるで旅の始まりを告げる号砲のようだった。続いて、車掌の声が大きく響き渡る。
「まもなく発車いたします!」という威勢の良い声に、乗客たちの興奮はさらに高まった。
エミリアは思わず窓に身を乗り出し、列車がゆっくりと動き出すのを確認する。列車の巨体がゆっくりと進み始めるのを目にし、彼女は少し不思議そうに呟いた。
「こんなに大きいから、あまり速くないのかな?」彼女の瞳には好奇心が輝いていた。
その問いかけに対し、エリシアは余裕たっぷりの様子でビールを飲みながら答えた。
「これからよ」と、何でもないことのように肩をすくめ、手に持ったイカの干物を少し齧った。
エミリアはエリシアから少し分けてもらった干物を口に運びながら、再び窓の外に目をやった。
列車の動きは次第に滑らかになり、速度が増していくのを感じた。ゆっくりと進んでいた景色が、徐々に速く流れ始めたのだ。村の家々や畑が目の前を次々に通り過ぎていく。それはまるで、時間が加速しているかのようだった。
「すごい…!」エミリアは思わず声を上げた。
風が窓を通して彼女の髪を揺らし、その顔には驚きと興奮がはっきりと表れていた。列車は馬で走るよりもずっと速く、地上を滑るように進んでいた。
「すごいね、こんな速くなるなんて思わなかった!」エミリアはエリシアに向かって声をかけたが、エリシアはにっこりと笑いながら、落ち着いた様子で2杯目のビールを飲み干していた。
エミリアの心臓は鼓動を速め、目の前に広がる新たな冒険への期待で胸が高鳴っていた。
この列車での旅が、ただの移動手段ではなく、未知の世界を体験する扉を開くものであることを、彼女は直感していた。
列車の速度はさらに増し、外の景色はもはや一瞬で消え去るかのように流れていった。
山々が遠くに見え、広大な平野が一瞬で通り過ぎていく。その速さにエミリアは目を見張りながら、これまでのどんな冒険よりも刺激的な旅が始まったと感じていた。
「この先には何が待っているんだろう…」エミリアは期待に胸を膨らませながら、窓の外を眺め続けた。広がる大陸の風景に、彼女の心はどこまでも自由で、列車の速度と共に遠くへと飛び立つかのようだった。




