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救世主物語  作者: アルドア
3章

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第39話 冒険者ギルド

エミリアたち使節団がバモスカラ大陸に到着し、こちらでの身分証明と使節団の活動費として冒険者ギルドに登録しようとしている時、ルクシア教団の紹介状を持っていることが彼女たちに大きな利点をもたらしていた。


教団はこの地において光の女神ルーナを信仰する強力な組織であり、その推薦はギルド内でも特別な信頼の証とされていた。


ギルドの建物は、木造の大きな扉を開けると、広々としたホールが広がっていた。壁には依頼がびっしりと貼られ、ギルドのスタッフや冒険者たちが忙しなく動き回っていた。冒険者たちは、魔物退治や都市の細かな依頼をこなすことで生計を立てており、このシステムは国々にとって貧困対策や治安維持にも繋がっている。


カウンターに近づくと、ベテランの受付嬢が微笑みながら出迎えた。「ようこそ、冒険者ギルドへ。ご登録ですか?」と彼女は丁寧に尋ねる。


途中で冷やかしに来たベテラン冒険者は

エルンケ・ギを見てクルッと引き返した。


エミリアは紹介状を差し出し、「はい、ルクシア教団からの紹介でこちらに来ました。私たち4人でパーティを組んで登録をお願いしたいのですが」と伝えた。


受付嬢は紹介状を確認し、驚いた表情を一瞬浮かべた後、敬意を込めて微笑んだ。「ルクシア教団からの推薦とは、非常に信頼のおける方々なのですね。こちらのギルドでも特別な評価をいただいている方々が属するものです。それでは、お名前と簡単な能力をお伺いしてもよろしいですか?」


エミリア、カレン、エルンケ・ギ、アイリス・ミストの4人が順に名前と自己紹介をした。それぞれの能力やスキルが異なることが、チームとしてのバランスの良さを感じさせた。エミリアは高い攻撃能力を持ち、カレンはサポートとデバフ、エルンケ・ギは戦闘のエキスパートであり、アイリス・ミストは治癒士を得意としていた。


「なるほど、皆さん実力がある方々のようですね。ギルドのシステムにはランクがあり、木級、石級、鉄級、銅級、銀級、金級、そして別格の白銀級があります。皆さんの実力に応じてランクが決まりますが、最初は木級から始めるのが通常です。依頼をこなすごとにランクが上がり、より難しい依頼に挑戦できるようになります」と受付嬢が説明を続ける。


「木級…そこから始めるのか」とエミリアが少しだけ期待を裏切られたように呟いた。


彼女は自分たちの実力なら、もっと上のランクからスタートできるのではないかと思っていたのだ。


受付嬢は微笑みながら続けた。

「ただし、ルクシア教団からの推薦がある場合、特別に初期ランクを引き上げることも可能です。皆さんの力量を考慮して、最初から鉄級に登録させていただくことになります。鉄級からであれば、都市外の魔物討伐やより重要な任務にも挑戦できますよ。」


「鉄級からスタートとは嬉しい驚きだね」エミリアが笑顔を見せる。


「それなら私たちの実力を存分に発揮できるわね」とアイリス・ミストも期待に胸を膨らませていた。


「でも、冒険者としての生活は思った以上に厳しいものかもしれん」とエルンケ・ギが警戒心を抱きつつも、仲間たちを見渡した。


「大丈夫、どんな困難でも私たちなら乗り越えられるわ」とエミリアが自信を込めて言い、仲間たちに力強い視線を送った。


こうして、エミリアたちは正式に冒険者ギルドに鉄級で登録された。これから待ち受ける数々の冒険と試練に胸を躍らせつつ、彼らは新たな旅路に思いを馳せた。市場の喧騒や農地の平和な風景とは対照的に、ギルド内の活気は彼らに新たな刺激を与え、冒険者としての第一歩を踏み出す準備が整ったのだった。


エミリアたちがギルドに登録を済ませた後、受付嬢が手際よく書類をまとめながら、壁に貼られている依頼の掲示板に目をやった。


その中でも一際目立つ大きな依頼があった。

それは「悪竜アジ・ダハーカ討伐」の依頼であり、依頼内容には危険度の高い討伐任務であることが書かれていた。


報酬額は途方もない金額が提示されており、明らかに並の冒険者が手を出せるようなものではなかった。


エリシアはその依頼に目を留め、しばし掲示板をじっと見つめた。


彼女の瞳に鋭い光が宿り、周囲の空気が一瞬で引き締まるのをカレンたちが感じた。


「エリシア様…?」カレンが声をかけるが、エリシアは無言のままカウンターへ向かって歩み出す。


受付嬢はエリシアの真剣な表情を見て、少し驚いた様子で声をかけた。

「何か気になる依頼がございましたか?」


エリシアは無言で懐から一枚のカードを取り出した。

それは銀色に輝くギルドカードで、通常の冒険者カードとは明らかに異なる白銀の輝きを放っていた。

ギルド内の冒険者たちがそのカードに気づき、ざわめき始める。


白銀のカードは、ギルド内でも最高峰のランクに位置する者にしか授けられない特別なものであり、その数は世界中でごく僅かしか存在しない。


「白銀級…!?」受付嬢が驚愕の声を漏らす。


エリシアはそのまま無言でカードを差し出し、「この依頼、私が引き受けるわ」と静かに告げた。


「ですが…!」受付嬢は困惑した様子で言葉を続けた。

「アジ・ダハーカ討伐は非常に危険な任務です。これまでに何人もの冒険者が挑んで命を落としました。白銀級の方とはいえ、どうか慎重に…」


エリシアは受付嬢の言葉を遮るように微笑んだ。

「心配は無用です。私はすでにいくつもの難敵を倒してきました。アジ・ダハーカも、その中の一つに過ぎないでしょう。」


その言葉に周囲の冒険者たちは息を呑み、彼女の後ろに立っているエミリアたちも驚きを隠せなかった。エリシアがこれまでどれほどの強敵を倒してきたのか、その片鱗を知る者は少ないが、白銀級であること自体が彼女の実力を証明していた。


エミリアが不安げにエリシアを見つめた。「エリシア、本当に一人で行くつもりですか?私たちも一緒に行けるのなら…」


エリシアはエミリアの方に振り返り、優しく微笑んだ。「大丈夫よ、エミリアちゃん。これは私一人で十分だわ。アジ・ダハーカは強大な力を持つが、それを倒すための力も私は持っているわ。それに、これは私の宿命の一部でもあるの。」


カレンはその言葉を聞いて、何も言い返せなかった。エリシアの決意と覚悟が伝わり、彼女に対しての深い尊敬と信頼が湧き上がった。


エリシアは再び受付嬢に向き直り、

「手続きをお願いします」と静かに言った。

受付嬢は一瞬ためらったが、エリシアの確固たる意志を感じ取り、依頼書を手に取って迅速に手続きを進めた。


「これで正式にアジ・ダハーカ討伐の依頼をお受けいただきました。どうか、ご無事をお祈りしています…」と、受付嬢は少し不安げな声で言葉を締めくくった。


エリシアはその言葉に軽く頷くと、再び仲間たちの方を向き、

「さあ、私は行くわ。あなたたちはここで待っていて。必ず戻ってくるから」と告げた。


エミリア、カレン、エルンケ・ギ、そしてアイリス・ミストは、それ以上何も言えず、ただ静かに見送るしかなかった。彼らはエリシアの力を信じていたが、同時にアジ・ダハーカという悪竜の恐ろしさも耳にしており、心の中では不安が募っていた。


エリシアはそのままギルドを後にし、静かに次の目的地、アジ・ダハーカが潜む場所へと向かって歩き出した。


その背中には、これから繰り広げられる壮絶な戦いの気配が漂っていたが、彼女は全く動じることなく、冷静にその一歩一歩を踏みしめて進んでいった。


悪竜との戦いは、彼女にとって単なる試練ではなく、神域に至るためのさらなる一歩であると彼女自身が理解していた。そして、その背中を見送る仲間たちもまた、彼女の強さを信じ、無事の帰還を心から祈っていた。



エリシアは内心、焦っていた。

これあのときのやつだ。

ギルドから出て行ったあと、しばらく悩んでいた。




※時は遡りアルディア大陸を出発する数ヶ月前※



その日、エリシアは夢の中で気ままに歩いていた。

彼女の夢の世界は、現実とは異なる幻想的な風景で彩られ、あらゆる可能性が無限に広がる場所だ。

突然、彼女はふと立ち止まり、目の前に広がる荒れ果てた大地を見つめた。


「ふふん、この風景、何か物足りないわね。何か…そう、刺激が足りない。」


彼女は、夢の中で指を一振りした。

すると、地面が割れ、黒煙が立ち上る。その中から、巨大な双頭の竜が現れた。

その竜は、片方の頭からは炎を、もう片方からは氷を吹き出し、エリシアの指示を待つかのように、威圧的に周囲を見回している。


「いいわね…でも、もう少し派手にいきましょう。」


彼女は楽しそうに笑い、手を再び振った。


すると、竜の周囲にさらに幾つかの魔物が生成された。巨大なグリフォン、狂暴なミノタウロス、彼らはエリシアの周りを囲むように現れ、彼女の命令を待っている。


「さあ、みんな、外の世界へ遊びに行ってきなさい。そして、どんな反応があるか、見せてちょうだい。」


エリシアは軽い調子でそう言うと、手を振り下ろした。その瞬間、夢の中の魔物たちは一斉に姿を消し、現実世界へと送り出された。


***


バモスカラ大陸の各地で、突如として現れた魔物たちにより、街や村は混乱に包まれた。

冒険者ギルドは非常事態宣言を発し、冒険者たちを派遣して魔物の討伐を命じた。

しかし、彼らは想像を超える魔物の力に圧倒され、手がつけられない状況が続いた。


その頃、エリシアはどこか別の場所でのんびりと昼寝を楽しんでいた。


彼女は夢の中で生み出した魔物たちが、現実世界でどのように暴れているのかを思い浮かべ、微笑んだ。


「ああ、どんな反応をしてるのかしら…きっと面白いことになっているでしょうね。

でも、どうでもいいわ。

なんだか眠たくなっちゃった。

今はただ、静かに過ごしたいだけ。」


彼女は気まぐれに生み出した魔物たちの行動には興味がないかのように、再び目を閉じ、夢の中へと戻っていった。


エリシアの気まぐれによって生み出された混沌は、バモスカラ大陸に大きな爪痕を残し、その後も長い間語り継がれることとなる。


しかし、その中心にいる彼女自身は、そんなことにはまるで興味がなく、ただ自由に、そして気ままに、自らの時間を過ごしていた。


−−−−−−−−−−−−


エリシアはギルドを後にしてから、しばらく考え込んでいた。

彼女の中でよみがえっていたのは、数ヶ月前に自らの夢の中で気まぐれに生み出した魔物たちのことだった。

あの時はただの遊びだった。

現実と夢の境界が曖昧な彼女にとって、それは特別なことではなかったが、どうやらその「遊び」が現実世界に深い影響を及ぼしてしまったようだ。


「アジ・ダハーカ…あの双頭の竜、間違いないわ…」


彼女は内心で焦燥感を覚えた。

自分の夢の中で楽しげに作り上げた竜が、今やバモスカラ大陸を恐怖に陥れているのだ。

それが悪竜アジ・ダハーカとして知られる存在であり、冒険者ギルドの討伐依頼にまで至ったことを知り、エリシアは予期せぬ責任感に囚われていた。


「まさか、こんな形で再会するとはね…」


エリシアは自嘲気味に笑いながらも、心の中では複雑な感情が渦巻いていた。彼女にとって、夢の中での行動は自由で無責任なものであり、それが現実に大きな影響を与えるとは想像もしていなかった。しかし、今は違う。

彼女自身が生み出した災厄が、人々を苦しめている現状を目の当たりにし、エリシアは次第に自分の行動に対する責任を感じ始めていた。


「…もう逃げられないわね。私が生み出したものは、私が片付けなきゃいけない。」


エリシアはギルドの扉の前で立ち止まり、再び空を見上げた。彼女の心の中で、あの時の無邪気な遊びが引き起こした混沌の記憶が鮮明に蘇ってくる。だが、その無邪気さが今では後悔と交錯している。


「まぁ、いいわ。今は楽しいものが見つかったからね。」


彼女は決心することにした。

アジ・ダハーカを討伐することが、自分の償いでもあると感じていた。

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