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救世主物語  作者: アルドア
3章

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第37話 海の境界線に

エミリアは、バモスカラ大陸への進出を進める上で、避けて通れない「封絶結界」について詳しく聞く機会を得た。


封絶結界は、この世界全体を七つの面に分け、それぞれの境界線に光の巨人、終焉の獣、六魔といった厄災たちを封じている強力な防御システムだ。

これらの厄災は、結界を越えようとする存在を阻むために設置されており、厄災たちが近づくと自動的に封印が働く仕組みになっているという。


ミネアから説明を聞いたエミリアは、封絶結界の厄災を倒さなければその境界を突破できないことを理解した。

封印は強力であるが、一時的に突破する方法として、その場所で封じられている厄災を倒すという手段があることも説明された。


エリシアが口を開いた。

「そういえば、私がアルディア大陸に来た時も、この封絶結界を突破したんだよね。比較的に弱めの厄災を教えてもらって、倒してここまで来たのよ。でも、今回は終焉の獣か…少し厄介かもね。」


エリシアは魔獣生成によって時間はかかるが、

物量で攻めていた。


ミネアが話す「終焉の獣」は、封絶結界に封じられた存在の中でも強力な厄災の一つであり、過去に多くの者たちを苦しめてきた存在だった。バモスカラ大陸に向かうためには、エミリアはこの「終焉の獣」を倒さなければならない。


エミリアは少し不安げに表情を曇らせたが、同時に強い決意が胸に湧き上がった。

「大変そうだけど、乗り越えなければ次に進めない…。やるしかないね。」


終焉の獣は、かつての大戦において生み出された「生きた兵器」であり、文明が衰退期に現れ、その力を持って滅ぼす存在として君臨している。

普段は巨大な石や銅、鉄などの彫刻として静止しているが、結界を突破しようとする者が現れると、眠りから目覚めて襲いかかる。


その姿は多様であり、獣の種類によって強さが異なるが、いずれも共通して耐魔法性を持つため、通常の魔法や人類の兵器では太刀打ちできないほどの強大さを誇る。


過去の数多くの戦士たちがこの終焉の獣に挑んだが、そのほとんどが歯が立たず、敗北を余儀なくされたという。


「終焉の獣」を倒すには、山一つを吹き飛ばすほどの圧倒的な威力が必要であり、それほどの力でなければ、その硬い皮膚に傷一つつけることができないと言われている。


このため、封絶結界の厄災の中でも特に厄介で、強力な存在として恐れられている。


エミリアが挑む「終焉の獣」は、その圧倒的な力と耐久性が試練となる。


通常の戦術では通用せず、何か特別な手段や秘策を用いなければ勝利は難しいことが明らかだ。


エリシアは、かつて封絶結界を突破した経験があるが、今回の「終焉の獣」は一筋縄ではいかないと警告した。

「エミリア、今回は普通の戦いじゃないわ。魔法もほとんど効かないし、私たちが持っている力以上のものが必要になるかもしれない。準備をしっかりしないと…。」


エミリアは静かにうなずきつつも、決意を固めた。「どんなに強大な相手でも、突破してみせます。私が必ず道を切り開いてみせます。」





エミリアは静かな決意を胸に、荒れ狂う海の上に立っていた。


目の前には、巨大な鉄の彫刻が波しぶきを上げながらゆっくりと動き出している。


終焉の獣──その名が示す通り、文明を滅ぼすために創られた存在。

何百年も眠っていたこの生きた兵器が、今まさに目覚めようとしていた。


海風が彼女の長い髪を吹き上げ、周囲の波は不安定に揺れ動く。


空は暗雲に覆われ、雷鳴が遠くで鳴り響いていた。エミリアは深く息を吸い込み、心を静める。


仲間たちは別の場所待機している。


この戦いは、自分一人で乗り越えなければならないのだ。


終焉の獣はついにその全容を現し、海を割るように立ち上がった。


鋭利な爪、鉄のように硬い皮膚、そしてその巨大な体は、あたかも自然そのものが形を成したかのように山が動いて見える。


どんな魔法も、その硬い鉄の肌には通用しないとされているが、エミリアは一歩も引かない。


「私一人でも、あなたを止めるわ…!」

エミリアは叫び、自身の神威の権能を発動させる。


彼女の体から光が放たれ、周囲の空気が震え始める。エミリアはその光を集中させ、神聖なるエネルギーを光の剣として召喚した。


終焉の獣が大きく口を開き、凄まじい咆哮を上げた。


その一声で海は激しく乱れ、波が壁のように押し寄せてくる。


しかし、エミリアはそれを恐れず、その波を真っ直ぐに切り裂いた。


彼女の足元にできた光の道が、まるで世界と終焉の獣を隔てるかのように広がっていく。


「これで終わらせる…!」エミリアは海上を駆け抜け、終焉の獣に向かって突進する。


その体から放たれる神威の光は、目を焼きつくすほどに眩しい。

獣は彼女に向かって巨大な腕を振り下ろすが、エミリアは軽やかにかわしながら、その腕に一撃を加えた。


だが、彼女の剣はまるで鉄を切るかのように弾かれ粉々になった。

獣の皮膚は予想以上に硬く、彼女の力でも傷をつけることができなかった。


しかし、エミリアは諦めない。彼女は再び距離を取り、獣の動きを観察し始める。


「何か…何か弱点があるはず。」エミリアは心の中で自分に言い聞かせながら、神威のエネルギーをさらに高めていく。


獣の動きは重く、そして遅い。

その巨大さが逆にエミリアにチャンスを与えていた。


その時、エミリアは獣の口ににわずかな隙を見つけた。

そこにはほんの少しだけ、鉄ではない柔らかい部分が見えていた。

彼女は、全力でそこを狙うことに決めた。


「これで終わりよ!」エミリアは全身の力を込めて、光のような速度で獣の顔に向かって跳躍する。

彼女自身が輝き、神威の権能が集約されたその一撃は、まさに世界を裂くかのごとき力を秘めていた。


きっと遠くから見てた人はこう言うだろう。


()()()()()()


一瞬、空気が止まったかのように静まり返り、エミリアの体当たりが獣の上半身を突き刺さる。獣は咆哮を上げる間もなく、体全体が揺れ動いた。

やがてその巨体が崩れ始め、鉄のような皮膚が次々と砕け落ちていった。


エミリアは荒れ狂う波に飲み込まれそうになりながらも、海面に着地した。


終焉の獣は崩れ去り、その巨体は再び静かに海に沈んでいった。


「やった…!」エミリアは息を切らしながらも、勝利を実感した。


しかし、その目にはただ勝利の喜びではなく、どこか悲しげな光が宿っていた。


倒したとはいえ、これは終焉の獣──かつて文明を滅ぼした恐ろしい存在である。

自分がその力に打ち勝ったことで、この先どんな未来が待っているのか、彼女にはわからなかった。


「少しでも、世界を悲しみのない場所に…それが、私の願い。」エミリアは呟き、遠く水平線を見つめながら、静かにその場に佇んだ。



終焉の獣を倒した後、エミリアが海上に佇む姿を目の当たりにした使節団のメンバーたちは、言葉を失い、その場に静まり返った。

彼女の体から放たれていた神威の光がまだ周囲に残り、海と空を照らしている。


嵐のように荒れ狂っていた海は、まるで彼女の勝利を称えるかのように、徐々に静けさを取り戻していった。


使節団の一人が呟いた。

「あれが…終焉の獣だったのか? あんな存在を…エミリア様が、たった一人で…。」


他のメンバーもその言葉に同意するようにうなずき、震える声で話し始めた。

「人間では到底太刀打ちできない存在と言われていたのに、彼女は…一人で。」


エリシアも、エミリアの背中を見つめながら、内心の驚きを隠せなかった。

彼女は長い間、エミリアの力を知っていたが、ここまでの力を見せつけられるとは思わなかった。エミリアの神威の権能がここまで成長しているということは、彼女がすでに神域に達しつつあるという証だった。

「素晴らしいわ!実に実に素晴らしいわ!

これほどまでに育つなんて、想像以上だわ!」

一人、狂乱乱舞してた。


カレンは恐れながらも

「エミリア様は…ただの人間ではない。もう神の領域に足を踏み入れている…。私たちはその存在を目撃しているのだ。」

使節団のリーダーは声を震わせながらそう呟いた。

彼の目には畏敬の念が浮かび、他のメンバーも同じ感情を共有していることが明らかだった。



エミリアは、使節団の視線を感じながらも振り返らず、静かに空を見上げていた。


自分が神域に達したという自覚はなく、ただ一つの思いが胸にあった――「この力を、悲しみを減らすために使いたい」と。


彼女が強くあろうとする理由は、目の前の敵を倒すためではなく、世界に少しでも光をもたらすため。


だが、使節団の仲間たちの中では、その圧倒的な力を前に、エミリアがもはや神の領域に立つ存在であるという恐れが広がっていた。


それは、彼女が今後直面するであろう運命の大きさを示唆しているようでもあった。



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