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救世主物語  作者: アルドア
2章

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第36話 謁見の間にて

エミリア使節団は、ラグナ魔導王国へ向かうための船を手配する目的で、セレスティア共和国に一旦帰還した。


エミリアとエリシアは、使節団の代表としてミネアに謁見し、これまでの旅路について詳細に報告を行った。


エミリアは、ライオハルト連邦王国で目にした孤児たちの問題について触れた。


彼女は、「皆の協力のおかげで、目の前にある問題は一時的に解決しましたが、これからどうなるかは全く分かりません」と不安な気持ちを正直に述べた。


孤児たちの未来や、この国がどのように成長していくのかに対して、エミリアは深く考えさせられていた。


さらに、ヴェルデミナ自治領で聞いた奴隷狩りの悲劇についても報告した。

エミリアは「その真実を聞かなければよかった、と一瞬思いました。人は家族や自分を守るために弱さを見せてしまうことがありますが、その弱さが引き起こす結果はあまりにも悲しいものでした」と語り、心に残る痛みを明かした。


エルダークレスト神聖国についても、エミリアは自身の思いを述べた。

彼女は「最初に聞いた『おのが神に問いなさい』という言葉が頭から離れませんでした。

神託によって信仰が支えられているのか、それとも人々は内部から神に祈ることで精神を保っているのか、ずっと考えていました」と振り返る。エミリアは、信仰心と日常の生活が密接に関係していることを実感したものの、

「神聖裁判においては、身分の低い人々ほど犠牲にされやすく、信仰が権力者たちの都合のいいように利用されている現実も目の当たりにしました」と結論づけた。


彼女の報告を受け、ミネアは静かに頷き、深く考え込む様子を見せた。


「神威の権能に目覚めた私ができることは、まだ限られています」と、エミリアは深く自分を見つめて話し始めた。

「それでも、この世界を少しでも悲しみのない世界にできるのであれば、私の力を役立てたいです。」


彼女は、自分の過去と家族についても触れた。「私の父は星になり、今でも遠くから私を見守ってくれています。そして、共にいたけれど救えなかった人々も、星になってこの空のどこかで私を見守り続けています。」


特に、エルダークレストで出会った少女、セレナの言葉がエミリアの胸に深く刻まれていた。「セレナという子は、私に『輝く星になって私たちを導いてほしい』と言ってくれました。その言葉が、私にとってどれほど大きな力になったか、言葉では言い表せません。」


エミリアはその願いに応えたいと強く思うが、その先が見えないことに不安も抱いている。

「この願いがどれだけ叶うかはまだわかりませんが、少しでもその理想に近づきたい。そして、皆の期待に応えられるよう、私自身も成長していきたいです。」


彼女の声には、決意と共に少しの不安が混じっていたが、同時にその不安を乗り越える覚悟も感じられた。


ミネアはエミリアの言葉を静かに受け止め、深い沈黙の後、静かに口を開いた。


「エミリア、そのような気持ちを抱くことは、誰もができるわけではありません。あなたの思いは尊いものであり、誰かの光となる存在であることに気づいているのでしょう。それこそが、あなたが背負っている『神威の権能』の本質なのかもしれません。」


ミネアは柔らかな眼差しでエミリアを見つめ、その言葉には温かな重みがあった。


「世界がすべてを受け入れることはありません。時に、善意であっても人々が傷つき、誤解されることもあるでしょう。それでも、あなたがその光を絶やさず進んでいくことが、この世界を少しでも良くするための一歩になるのです。」


彼女はさらに続けた。

「人々の期待に応えることも重要ですが、最も大切なのは、あなた自身が自分の道を見つけ、信じること。自分を見失わず、その光を誰かのために輝かせる。それが、あなたの進むべき道です。」


ミネアの言葉は、エミリアの不安を少しずつ和らげ、彼女の心に新たな決意を灯すようなものだった。


ミネアはエリシアにも聞いた。

アルディア大陸とバモスカラ大陸ではどう違うと。

エリシアはアルディア大陸では戦争行為の禁止をしているため、文明の衰退期に入っているようだ。それと比べるとバモスカラ大陸では成長期の過程で戦争と淘汰の繰り返しであると答えた。


ミネアはエリシアの返答に深く考えながら頷いた。彼女の言葉には、それぞれの大陸の文明が歩んできた異なる道の対比が鮮やかに表れていた。


「なるほど、アルディア大陸では平和のために戦争行為を禁じ、結果として文明が衰退の道を進んでいる。一方で、バモスカラ大陸では戦争と淘汰が繰り返され、成長の過程にあるということか…」


ミネアは少し間を置き、静かに続けた。

「戦争を禁じることで文明が停滞することは避けられないものなのかもしれない。平和と安定は大切だが、それが挑戦や進化を阻むこともある。一方、バモスカラのように戦争が成長を促す場合もあるが、その犠牲もまた大きい。」


彼女はエリシアに目を向けた。

「そなたはこの二つの大陸の違いをどう見ているのか?どちらが正しいとは言えないかもしれないが、未来に向けて私たちが選ぶべき道について、何か考えがあるのか?」


ミネアの問いは、単なる答えを求めるのではなく、エリシアが自身の経験と知識から未来をどう見据えているのかを問う深いものだった。

「どちらいいか悪いかなんてあと数百年経たなければわからないじゃない?何度も言うように

戦争行為自体は愚かであるかもしれないけれど、生きるために守るために救うために戦うの。家畜のままでいいならそれでもいいじゃない」と過激な意見を述べた。



ミネアは静かに話を続けた。


「私はかつて、この世界が戦争に苦しんだ時期を経験した。無数の命が失われ、何も残らない惨状を目の当たりにしたとき、私は自分に問いかけた。厄災や魔物との戦いなら、私自身の力で対処できる。だが、人同士の争い、それは私が解決すべきものではないと気づいた。」


彼女は天を仰ぎ、過去を振り返るような目をしていた。


「500年前に『天理調停者』という制度を生み出したのも、そうした思いからだった。人々の争いは、彼ら自身で解決すべきだと。天理調停者の役割は、どちらかを滅ぼすためではなく、争いの連鎖を断ち切るためにある。最初は過激な者も多かったが、今は妥協点を見つける者が増え、平和のために力を尽くしている。」


ミネアはエミリアとエリシアを見つめ、穏やかな声で続けた。


「戦いがなくなれば、平和が続けば、それに伴って文明が停滞することもある。しかし、暴力によって進化する社会には、常に悲しみと犠牲が伴う。私たちはその間で、どの道を選ぶべきか常に問われている。」


彼女はゆっくりと息を吐き、決意を込めて言葉を締めくくった。


「エミリア、エリシア、あなたたちがこれから進む道も、きっと困難が伴うだろう。だが、私は信じている。あなたたちは、過去に囚われず、新しい未来を切り開く力を持っていると。」


ミネアは一瞬の沈黙の後、静かにエミリアに向き直った。


「エミリア、あなたにはこれから重要な役割がある。だからこそ、私はあなたに『バモスカラ大陸』を見てほしいと思っている。」


彼女の声には重みがあったが、どこか優しさも感じられた。


「アルディア大陸とは異なる、成長期にあるバモスカラ大陸は、戦争と淘汰を繰り返しながら未来を模索している。そこでは、人々が新しい秩序を作ろうと苦しみながらも前に進もうとしているんだ。」


ミネアは深く息をつき、エミリアの目を見つめ続けた。


「エミリア、あなたの神威の権能は、ただ戦うためにあるわけではない。それは人々を導き、彼らの未来を照らす光になるべきだ。バモスカラ大陸に向かい、その目で現実を見てきてほしい。そして、あなた自身が何を成すべきか、その答えを見つける旅にしてほしい。」


彼女は微笑んで付け加えた。


「大陸を見つめ、あなたが感じたことを私に教えてくれる日を待っているよ。」



エミリアはミネアの言葉をしっかりと受け止め、明るく微笑んで答えた。


「はい、やります!必ずバモスカラ大陸を見て、自分にできることを見つけます!」


その決意に満ちた声には、エミリアの心の中に新たな希望と使命感が芽生えていた。彼女は一歩を踏み出す覚悟を固めた。


ミネアも微笑んでうなずき、エミリアに見守るような視線を送った。


「それでこそ、エミリア。道は険しいかもしれないけど、あなたなら乗り越えられるはずだ。」


エミリアは、エリシアに目をやり、仲間たちの期待を感じながら、次なる目的地への旅に思いを巡らせた。バモスカラ大陸は、戦争と成長が繰り返される地。そこには新たな出会い、そして新たな挑戦が待っている。


「次の目的地はバモスカラ大陸ね」とエリシアが静かに口を開く。


「そうだね。きっと、そこで何か大切なものを見つける気がするよ」とエミリアも応じた。


エミリアの心には、ミネアの言葉とセレナの願い、そしてこれまでの経験が深く刻まれていた。彼女は、星空の下に広がる未来に向かって、まっすぐに進む決意を胸に、旅を続けるのだった。




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