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救世主物語  作者: アルドア
2章

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第35話 旅の目的

エミリアは、静かな夜に一人、深い悩みを抱えていた。

自身が持つ「神威の権能」が果たして本当に世界のために役立つのか、自信が揺らいでいたのだ。

彼女の力は確かに特別であり、これまで多くの人々を救ってきた。


しかし、強大な敵や明確な脅威が目の前に存在しない今、エミリアは自分の役割や使命が何なのか見失っていた。


「私は本当にこの世界に必要とされているのか…?」


彼女は、心の中でその問いを何度も繰り返した。

その力が、どのように世界を良くしていけるのか、明確な答えが見つからなかった。


強大な敵がいない今、彼女の力は無力なのか?それとも、新たな役割を見つけなければならないのか?エミリアの胸中には葛藤が渦巻いていた。

彼女は、何が正しいのか、どう行動すべきなのか、自分を試す新たな道を模索していた。


「私の力が、平和な世界にどう役立つのだろう…?」


それでもエミリアは、己の使命を放棄するつもりはなかった。


エミリアはカレンに相談し、自分の役割について思いを巡らせていた。

カレンは、アルディア大陸の現状を説明した。平和を保つため、戦争行為が禁止されているこの大陸では、紛争が起こるたびに「天理調停者」という存在が強制的に介入して調停を行う制度が確立されていたという。


「でも、昔の天理調停者は過激だったわ」とカレンは続けた。

「争いの解決策として、どちらかの国を滅ぼすか、あるいは両方を消し去るという過激な思想を持つ者が多かったの。負の連鎖を断ち切るためには、相手を滅ぼすしかないという考えだったのよ」


エミリアはその話を聞き、驚きと戸惑いを感じた。そんな極端な方法で平和を維持していたというのか?しかし、カレンは今の状況についても説明した。


「今は、調停者たちはどこで妥協すべきか、どうすれば双方にとって最善の結果になるかを考えるようになっているわ。時代と共に、考え方も少しずつ変わってきているの」


エミリアはその言葉に少し安心したものの、自分の力がどこに役立つのか、まだ迷いが残っていた。

天理調停者の過去の過激さに対する反発として、彼女の癒しの権能は無力ではないかもしれないと感じ始めたが、それをどのように活用していくかがまだ見えなかった。


「エミリア様、あなたの力はただ敵を打ち倒すためだけにあるわけじゃないわ」とカレンは優しく諭した。


「平和を保つために、調停者のような存在も必要だけど、癒しや導きの力もまた重要なのよ。あなたの神威の権能は、争いを超えた後に、傷ついた人々を救うためにあるのかもしれない」


その言葉を聞き、エミリアは少しずつ、自分の力の使い道を見つけていく希望を抱き始めた。


セレナが会話に加わり、真剣な表情で口を開いた。「エミリア様は私の救世主様です」と彼女ははっきりと言った。


エミリアは少し照れたように微笑みながら、「実際は、エリシアが大きく動いてくれたからこそ、今があるのよ。私の癒しの権能も、アイリス・ミストが適切なアドバイスをしてくれたおかげで、ここまで完治できたの」と謙虚に答えた。


しかし、セレナはその言葉に首を横に振り、しっかりとエミリアを見つめた。

「エミリア様が私に与えてくださったのは、ただの癒しではありません。心の支え、希望を与えてくれたのです。まるで夜空に輝く星のように、私にとってはその存在がどれだけ大きかったか、計り知れません」


その言葉にエミリアは思わず息を飲んだ。セレナは続ける。

「だから、どうかまっすぐにいてください、エミリア様。私は、その星を追いかけて行きます。エミリア様が照らしてくれる道を信じて、私も進んでいきます」


その真っ直ぐな言葉に、エミリアの胸には温かい何かが広がった。セレナの信頼と決意に触れ、エミリアは自分の役割に対する不安が少しずつ薄れていくのを感じた。彼女は静かに頷き、優しくセレナに微笑んだ。

「ありがとう、セレナ。あなたの言葉が、私の光になります」


その瞬間、エミリアは自分の神威の権能の意味を少し理解し始めた。癒しだけでなく、希望を与え、進むべき道を照らす力。それが、彼女の本当の役割なのかもしれないと。



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