第31話 エルダークレスト神聖国編その9
エミリアの表情は一瞬で怒りと悲しみで歪んだ。
彼女はセレナの姿を見て、その無惨な状況に心を痛めながらも、自らの立場を冷静に考え直した。
目の前のセレナは、痛々しいほどの傷を負いながらも、エミリアを巻き込まないために自身の罪を認めている。
エミリアは深く息を吸い込み、感情を抑えながら口を開いた。
「ゴーラン・ベルシオ、これは何の茶番ですか?」エミリアは冷静だが鋭い声で問い詰めた。
「明らかに彼女は不当な拷問を受けている。そして、これをもって『証拠』とするおつもりですか?」
ゴーラン・ベルシオは肩をすくめながら答える。
「エミリア様、これはあくまで彼女自身の自白です。私たちはただ、彼女の言葉を信じるだけです。」
「信じる?」エミリアの声には怒りがにじんでいた。
「これは信仰の名を騙った偽りの裁きです。彼女が自白したのは、拷問によるものだと明白です。このような行いが神聖なる裁きだとでも?」
ゴーラン・ベルシオは一瞬怯んだが、すぐに態度を改め、冷静を装って答える。
「エミリア様、貴女のおっしゃる通りかもしれませんが、私たちはこのような事態を防ぐためにも、秩序を守らねばなりません。改革派の動きがある以上、我々も断固たる対応を取らざるを得ませんでした。」
その時、カレンが再び冷たい声で口を開いた。「ゴーラン・ベルシオ、秩序を守るための名の下で、無実の者を拷問し、自白を強要することが貴方の正義か?」
ゴーランは少し苛立った表情でエミリアを見つめ、周りの神聖騎士たちに合図を送った。
彼らはエミリアとカレンの周りに集まり、さらに緊張が高まった。
シリウス・クレイヴが静かに状況を観察し、エミリアに影魔法で筆談した。
【エミリア様、ここは一時的に引くべきかもしれません。彼らは武力でこちらを黙らせるつもりかもしれない。】
しかし、エミリアは一歩も退く気配を見せなかった。
「セレナをこの状態のまま引き渡すわけにはいきません。正当な裁判の場での彼女の証言を求めます。これ以上の暴力的な手段は認められません。」
ゴーラン・ベルシオはため息をつきながら、「では、神聖裁判の場での決定をお待ちいただくということで。」と応じた。その言葉には何か含みがあるようだったが、エミリアはそれを受け入れざるを得なかった。
「わかりました。しかし、我々は彼女が公正な裁きを受けることを確認するまで、ここを離れることはありません。」エミリアの声には揺るぎない決意が込められていた。
預言者カルミーヌはここで苦しい胸をおさえ
「いけません、エミリアさんこのまま神聖裁判はいれば、どうすることもできなくなってしまいます。」
ゴーラン・ベルシオが間に入り、
「なるほど、ではどのような証明を持って
彼女の無実を晴らすのでしょうか?
そう神聖裁判できちんとやるほか無いのではないしょうか?
それとも神聖裁判を上回る神託、そう神託が下れば納得できますよ。」
カルミーヌはエミリアに癒しの権能のを使ってもらい、喋るのがやっとであった。
「神託を使えなくなったのは、おぬしがいちばんわかっとるであろう。」
カルミーヌのお付きの人がこれ以上はお身体に触りますと退場を促す。
ゴーラン・ベルシオは、にやりと笑い
「ではエミリア様、神聖裁判所までお付き合いください。
セレナの方は簡単に治療はしますが、くれぐれも容疑者なので裁判が終わるまで手出し不要でお願いします。」
エミリアはセレナが心配であったし、
罪を犯しはずないと信じ
「公正な判断が下るのを見届けるまで私は離れません。」
そうして一同は神聖裁判所まで向かう事になった。




