第27話 エルダークレスト神聖国編その6
数日後、エルダークレスト神聖国で一連の事件が急展開を迎えた。
神聖騎士たちがセレナを捕らえに現れ、彼女を横領、着服、そして資金流失の罪で拘束した。
セレナは必死に無実を訴えたが、神殿の規律に厳しい神聖国では、その声はすぐには届かなかった。
さらに、セレナの罪状にはエミリアも関与しているという嫌疑がかけられ、彼女もまた事情聴取を受けることとなってしまった。
エミリアが巻き込まれたことで、事態の深刻さが増し、陰から見守っていたシリウス・クレイヴはすぐさま状況がまずいと悟った。
エミリアとセレナの安全を確保するために動く必要があると感じたシリウスは、影魔法「シャドウスワロー」を使って、仲間であるカレンともう一人、エルンケ・ギというリザードマンの戦士に緊急伝達を送った。
影の中からの伝達は、迅速かつ秘匿性が高いものであり、シリウスの仲間たちに素早く事態を知らせることができる。
カレンとエルンケ・ギはすぐに伝達を受け取り、エミリアとセレナを救うための対策を立て始める。
カレンはすぐさまエミリアのとこに向かい、
エルンケ・ギはカレンの行動が不安であった。
かつて鉄血の革命と呼ばれた事件にならないよう先回りし事をおさめないと大変なことになる。
シリウス・クレイヴと連携を取りながら
神殿都市アルマ=セリスに向かった。
エルンケ・ギはいち早く、神殿へと辿り着き
「どこじゃ!シリウスよ!」と叫んだ。
付近を警備していた神聖騎士たちは、いきなり
リザードマンが現れて、叫び始めてびっくりしている。
神殿の柱の影からダークエルフのシリウスがニュッと現れ、指をさして案内をする。
途中、何度も神聖騎士たちにより止められるが
セレスティアの使節団ある書状を見せ、
無理矢理押し通していた。
「むむっ、こういうのがすかんっちゃ」
エルンケ・ギの見た目で何度も止められる。
シリウスは喋れないので、なかなか時間はかかったがエミリアのいる場所までたどり着いた。
そこにいたのはエミリアとゴーラン・ベルシオと部下の数人がいた。
「これは・・・セレスティアの使節団の方ですかね?」ゴーランが困ったように対応した。
「ほうじゃ!」
何言っているか分からないのでエミリアが変わりに答えた。
「そうよ、これは冤罪よ。
寄付金の着服なんてしてないわ。
何度も同じことは言わせないで。」
ゴーランは「これは誠に申し訳ありません。
どうやら調査の手違いのようですな。」
さっきまではしつこいくらい寄付金を着服したのはセレナとエミリアの2人が関わっていると
言われ同じ質問を何度も繰り返してきたのに、
使節団の人が来た途端、態度を変えた。
エミリアはいらいらしたが、セレナのことが心配だった。
「エルンケ・ギ! セレナが心配だから一緒についてきて。別々に取り調べているの。」
エルンケ・ギは「ほうか、いったん落ち着かせる奴がおるけん、先にそっちから構わんか?」
エミリアは怪訝な顔して「うん?とりあえずそっちからね。分かったわ。」
そう言って出て行った。
部屋に残ったゴーラン・ベルシオは
「全く好き勝手にやりやがって。」
悪態をついていた。
だが、彼の態度が変わったのは、エミリアとセレナを取り巻く事件の背後に大きな力が働いていることを、彼自身も感じ取っていたからに違いない。
一方で、別室で取り調べを受けているセレナは
ボロボロな状態で、精神的にも肉体的にも限界に近づいていた。
無情にも爪は剥がされ、顔が腫れ上がり、
意識が朦朧としていた。
それでも頑なにやってないと言い続ける。
その様子を見て審問官は別の切り口で話しかけると、その言葉に彼女の心を鋭く刺した。
「エミリア様も今頃どうなっているのかねぇ。素直に白状してくれたらありがたいだけどねぇ」と、審問官が皮肉っぽく言った。
セレナは一瞬でハッとして、焦ったように問いかけた。「なぜエミリア様まで…?どうして彼女が関わるのですか?」
審問官は鼻で笑いながら、あくまで淡々と説明を続けた。
「今回の件は、セレナとエミリアの共犯だと聞かされているよ。状況証拠もあるしね。君が寄付金の台帳管理を任されていた。それを使ってエミリアに資金を渡し、国外に流出させたとされているんだ。」
その瞬間、セレナの顔は青ざめ、全身が震え始めた。
彼女にとっては、何よりも敬愛するエミリアが疑われている事実が耐え難かった。
これ以上エミリアが危険にさらされるのを防ぎたいという一心で、彼女は強い決意を固めた。
「私が一人で寄付金を隠し持ち出しました」と、セレナは目を閉じ、深い息をついてから審問官に向かって力強く言い放った。
審問官はニヤリと笑い、
「えらいねぇ。仕事が早く終わるから助かるよ」と皮肉たっぷりに応じた。彼の顔には冷たい満足感が漂っていた。彼にとっては、真実かどうかはどうでもよく、ただしらばっくれる必要がなくなったことが嬉しかったのだ。
セレナの心は傷つき、体は疲弊していたが、彼女はエミリアを守るために嘘をつくことを選んだ。
彼女の信念と覚悟は、純粋な愛と忠誠心の証であった。
神殿にカレンは到着した。
シリウスの伝達には
【エミリア様が寄付金の着服で問われている。冤罪だ。至急、応援を求む】と書いており、
カレンは飛び出した。
そんな事があるはずないと
また教団の取り調べは苛烈であると聞いて
気が気ではなかった。
カレンはゆっくりと神殿の大理石の床を踏みしめながら、冷ややかな目で周囲に取り囲む神聖騎士たちを見据えていた。
彼女の纏う空気には凍てつくような冷酷さと、爆発寸前の狂気が漂っていた。
彼女の眼を覆う布は少しずつ緩み、そこから血のような赤い痕跡が滲んでおり、その異様な光景に神聖騎士たちは恐れを感じて後退した。
「私の知る限り、この地で罪人とされる者たちには正当な裁きが下されるべきだ。
だが、もしもその裁きが神の名の下に行われる不正と知れば…」
彼女の声は低く冷たく響き渡り、その一言一言が神殿全体にこだました。
カレンは、あくまで静かに、しかし確実に神殿の中心へと歩みを進め、彼女の圧倒的な存在感が周囲を圧倒していく。
彼女が立ち止まると、神殿は一瞬、静寂に包まれた。見守る者たちは息を飲み、彼女の次の言葉を待ち構えた。
「正義が行われぬ場所には、我が眼が裁きを下す。
エルダークレストよ、貴方たちの信仰の本質を問うのだ。」
その言葉が響くやいなや、神聖騎士たちの中には動揺し、明らかに恐怖を覚える者も現れた。カレンの言葉には、彼女の信念と覚悟が込められており、彼女が放つ「発狂の魔眼」が持つ圧倒的な力の噂を知る者にとって、その警告は無視できるものではなかった。
カレンの眼を覆う布がさらに緩み、彼女の魔眼の力が徐々に解放されていく兆候が現れる。彼女の意志の強さと狂気の混ざり合った冷たい視線は、神聖騎士たちの背筋を凍らせ、神殿全体に緊張感が漂い始めた。
「さあ、真実を見せよ。私の眼は嘘を許さぬ。」
その瞬間、神聖騎士たちの心に恐怖が押し寄せ、彼は正義の名のもと真実を隠すことが出来ないことを悟った。




