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救世主物語  作者: アルドア
2章

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第23話 エルダークレスト神聖国編その2

エルダークレストでの生活が始まり、エミリアの面倒を見るセレナは修道院での一日の流れを説明した。



エルダークレストの朝は早い。

日の出前、暗闇の中で鐘の音が鳴り響き、信仰と労働の一日が始まることを告げる。

セレナはエミリアの肩を軽く叩きながら起こした。

「エミリアさん、起きる時間ですよ。日の出前の祈りがあります。」


眠い目をこすりながら起き上がったエミリアは、まだ星が輝く空の下で冷たい空気を吸い込み、少し目を覚ました。

彼女は素朴な衣装に着替え、セレナの後を追って修道院の祈りの場へと向かう。




祈りの場では、修道女や僧侶たちが静かに集まっていた。

小さなろうそくの光がともり、荘厳な雰囲気が漂う。

セレナはエミリアに小声で説明する。「ここでは、日の出前に神への感謝と新しい一日への祈りを捧げます。心を静めて、ただ感じてみてください。」


エミリアはその指示に従い、瞑想に近い形で祈りを捧げる。

頭の中はさまざまな考えでいっぱいだったが、徐々に心が落ち着き、周囲の静けさに身を委ねることができるようになった。



祈りが終わると、次は朝の作業が始まる。

エルダークレストでは、労働もまた信仰の一部とされている。

エミリアとセレナは畑に向かい、野菜の手入れや収穫の準備を行った。

山岳地帯の厳しい環境での農作業は、身体的にも精神的にも負担が大きい。


作業が終わる頃には、簡素な朝食が待っている。パンと薄いスープ、少しの野菜だけで、量も限られている。


エミリアは普段の豊かな生活と比べて質素な食事に驚きを隠せないが、セレナは微笑んで「これが私たちの日常です」と語った。



このようにして、エミリアのエルダークレストでの生活が始まった。

彼女は次第にこの厳しい環境に適応しながら、信仰と清貧の意味について深く考えるようになった。

セレナの指導のもと、彼女は修道院での生活に溶け込み、少しずつエルダークレストの人々の価値観を理解していく。


これからの1ヶ月間、エミリアは物質的な豊かさとは異なる「豊かさ」を求める人々の生き方に触れ、彼女自身の心の中に何か新しいものが芽生えるかもしれない。


朝の食事が終わると、神殿の掃除が始まる。


エミリアとセレナは、神殿の掃除を担当するために集まった修道女たちと合流した。


神殿はエルダークレストの中でも特に神聖な場所であり、厳しい清掃が日課となっている。


巡礼者たちが訪れる神殿は、細かな装飾や彫刻が施されているため、掃除には丁寧な注意が必要だった。

埃ひとつ残さないように、石の床を磨き、彫刻に溜まった汚れを一つ一つ丁寧に取り除いていく。


神殿が清掃されると、巡礼者たちが次々と訪れ始める。


エルダークレストは巡礼地として有名で、多くの信者が祈りを捧げるために訪れる。


セレナはエミリアに、巡礼者への対応について説明した。

「巡礼者が祈りを捧げるとき、我々は彼らを導き、祈りを補助します。そして、祈りが終わった後に寄付をお願いするのです。」


巡礼者たちは、神に感謝を捧げるための儀式や祝福を求める。


その際、彼らが神殿に寄付をすることで、エルダークレストの運営資金がまかなわれている。


寄付は金銭だけでなく、時には食料や衣類、他の物資であることもある。


信仰と寄付の行為は深く結びついており、巡礼者たちはそれを当然の義務と受け入れている。


エミリアはこのやり方に少し戸惑いを覚えた。彼女にとっては祈りという行為が純粋な信仰の表現であるべきだと感じていたからだ。

しかし、セレナはその意図を見抜いたようで、静かに語りかける。

「エルダークレストにとって、神聖法の実践と寄付は一つのもの。神聖な活動を続けるためには、私たちも生きていかなければなりません。」



ある日、一人の巡礼者がエミリアのもとを訪れ、祈りの補助を依頼した。


彼は重い病に苦しむ家族のために祈りを捧げたいと言い、エミリアに助けを求めた。


エミリアはまだ未熟ではあったが、セレナの助言を受けながら、祈りの言葉を一緒に唱えた。


祈りの終わりに巡礼者は少額の寄付を神殿に捧げ、深く感謝の意を示して去っていった。


エミリアは、その寄付が彼の全財産に近いことに気づき、複雑な感情を抱えながらも、信仰の力と人々の思いの重さを感じ取る。


エミリアは巡礼者に家族のもとへ連れて行ってほしいと頼んだ。


エミリアが癒しの権能を持っていることを知っていたからだ。


セレナはその申し出に驚きながらも、すぐにその場を離れ、直属の上司である神殿の神官に相談をした。神官はエミリアが癒しの権能を使うことで、巡礼者とその家族に大きな恩恵をもたらす可能性を理解し、許可を出すことにした。ただし、「夕刻までには必ず神殿に戻るように」という条件を付け加えた。




エミリアとセレナは巡礼者と共に、彼の家族のもとへ向かった。道中、エミリアはセレナにこう告げた。「私はこの土地でいろいろなことを学んでいます。人々の信仰、彼らの苦しみ、そしてその中にある強さを。」


セレナは静かにうなずきながら、「エミリアさんがここで感じたことを大切にしてほしいです。信仰はただの儀式ではなく、人々の生活そのものですから」と答えた。



巡礼者の家は小さな山あいの村にあった。


彼の家族は病で床に伏している母親と幼い妹で、どちらも痩せ細っていた。


エミリアは彼らの前に膝をつき、癒しの権能を使い始めた。


彼女の手のひらから温かな光が放たれ、その光は病に苦しむ母親の身体に吸い込まれていく。


しばらくすると、母親の顔色が少し良くなり、呼吸も穏やかになってきた。


エミリアの癒しの力は確かに効いているようだった。妹もまた、その光に包まれると目を開き、弱々しくも笑みを浮かべた。



巡礼者とその家族はエミリアに深い感謝の意を表し、涙を流しながら何度もお礼を言った。


彼らにとって、エミリアの訪問はまさに救いの手そのものだった。


エミリアとセレナは、巡礼者とその家族に感謝されながらも、夕刻までには神殿に戻らなければならなかった。


しかし、帰り道は険しく、特に上り坂が続くため二人は疲労していった。


途中、セレナがつまずいて転んでしまい、ボロボロになりながら進んだが、結局神殿に戻った時にはすでに日が沈み、夜の松明が灯されていた。


修道院の寮長は二人の帰りの遅れを咎め、神聖法に基づき、罰として夕飯抜きを命じた。


エミリアはすぐに反論しようとしたが、寮長から「最初に規律を破ったのはあなたたちです。それに、これはセレナの指導不足でもある」と厳しく指摘され、エミリアは押し黙ってしまった。


その夜、エミリアの腹がぐるぐると鳴り、寝ようとするが空腹で眠れなかった。


そこで彼女は水飲み場に行き、水を飲んで空腹を紛らわせようとした。

すると、そこにセレナが現れた。


彼女はこっそりとエミリアのところへやってきて、友人が預かってくれたという夕飯のパンを取り出した。


「これは神様からのお目こぼしですよ」

とセレナは微笑んで言った。

「だから、神聖法に則ってありがたくいただきましょう。」


エミリアは少し驚きながらも、その言葉に安心し、二人で仲良くパンを分け合って食べた。


その味は、彼女たちの疲れた身体と心にしみ渡るようだった。



セレナはエミリアにそっと告げた。「実はね、寮長が日持ちするパンを私の友達にこっそり渡してくれたの。あの方も、私たちのことを案じてくれているんだと思う。」


エミリアはその話を聞いて目を丸くした。

「寮長さん、厳しいけど優しいところもあるんだね。」


「うん、そうだね。明日は感謝のお祈りをみんなに捧げないといけないね」とセレナが笑顔で答えた。


エミリアも微笑み返し、二人は穏やかな気持ちでその夜を過ごした。


神聖法の厳しさの中にも、人々の優しさが感じられる、エルダークレストでの一日だった。



翌日、エミリアが祈りを捧げる者たちの中で、怪我や病気に苦しむ人々に癒しの権能を使うことができるようになったのは、神殿から正式な許可を得たからだった。


神殿側もまた、エミリアの権能によって人々が救われることで、寄付が増えることを見越して許可を出したのだ。


これにより、エミリアの癒しの力はエルダークレストで広まり、神殿への信仰と寄付は着実に増えていった。



エミリアは毎日、多くの巡礼者や信者たちの前に立ち、癒しの権能を発揮した。


病に伏せる者、怪我を負った者、長年の痛みに苦しむ者たちが、エミリアの力に希望を見出し、次々と神殿を訪れるようになった。


エミリアが手をかざすたびに、その光が彼らの苦痛を和らげ、奇跡のような回復を見せた。


エミリアの治療を受けた人々は感謝の意を込めて寄付をし、神殿の財政は潤っていった。


神殿の神官たちも、エミリアの存在によってこの神聖な土地に新たな信仰の息吹が吹き込まれていると感じるようになった。


一方で、エミリアと共に行動するセレナも彼女の力に強い感銘を受けていた。


初めはただの善意ある外部者として見ていたが、次第にエミリアの存在がエルダークレストにとって特別なものであると感じ始めた。


彼女の姿には、どこか聖典に記された救世主の姿を重ねて見てしまうほどだった。


セレナはエミリアの穏やかな微笑みと温かな力に心を奪われるようになり、彼女に深い敬意を抱くようになった。

「もしかすると、この方こそが我々の長き祈りに応えてくださる真の救い主なのかもしれない」と考えるようになったのである。



エルダークレストの人々の間でも、エミリアの評判は広がり始めていた。

「エミリア様の癒しは、ただの力ではなく、神の導きそのものではないか」という噂が囁かれ、彼女を神聖視する動きも少しずつ生まれつつあった。


エミリアは自分が救世主として慕われ始めていることに気づき、戸惑いも覚えたが、彼女の本質的な優しさと使命感がそれを上回っていた。


彼女はただ、人々の苦しみを少しでも和らげ、信仰に根ざした生活の中で助け合うことの大切さを感じていた。



エルダークレストでの生活は厳しいものだったが、エミリアの存在はその日常に新たな光をもたらした。


彼女はこれからも人々を助け続け、信仰とは何かを深く学びながら、この地での役割を果たしていこうと決意した。


セレナをはじめとする人々の信頼と期待に応えようと新たに決意した。

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