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救世主物語  作者: アルドア
2章

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第22話 エルダークレスト神聖国編その1


エルダークレスト神聖国に辿り着いたエミリア使節団は、その厳かな雰囲気と山岳地帯に溶け込む神殿の光景に息を呑む。


ここでは、神託として掲げられる神聖法が絶対的な規範として人々の生活を支配している。


神殿はまるで山そのものと一体化したように複数存在し、それぞれの神殿は異なる神を祀り、神託の源となっている。


エルダークレスト神聖国の特徴


神聖法の厳守: 神託に基づく神聖法はこの国における絶対的な法であり、それを疑うことや逸脱する行為は許されない。

そうした者には一切の慈悲がなく、厳しい処罰が下される。

神官や神聖騎士たちが法の執行者として常に目を光らせている。


神殿と山岳地帯の融合: 神殿は険しい山岳地帯に沿うように建てられており、自然と一体化するように設計されている。

神殿からの道は急峻で、巡礼者や信者は体力と信仰を試されるかのように登らなければならない。


神官たちの役割: 神官たちは神聖法を読み解き、神託を授ける役割を担っている。

彼らは各神殿で祈りを捧げ、神託を受け取るとされているが、その実態は神秘のベールに包まれている。


セレスティアを出発する前、エミリアは天帝ミネアから「信仰とは何かを学べ」という助言を受けていた。


彼女はそれを心に留め、エルダークレスト神聖国でその答えを見つけようとしている。


神威の修練中、エミリアはミネアに「神託は誰が授けるのですか?」と尋ねた。

その問いに対して、ミネアは静かにこう答えた。


「**おのが神に問うているのだよ**。」


その言葉はエミリアにとって謎めいていた。


ミネアの言葉が意味するところは、信仰の本質が外部の教えに従うのではなく、自らの心の内なる問いに向き合うことにあるのだろうか。


それとも、神託を授けるのが人ではなく、自らの内なる神性に関わるものなのか。


エミリアはエルダークレスト神聖国での滞在中、信仰がいかに人々の生活に根付いているかを学び、神聖法の下での秩序と統制の意味を考えることになる。


彼女はミネアの言葉の真意を探るため、神官たちとの対話を重ね、時には巡礼者たちと共に祈りを捧げる。


彼女にとっての「信仰」とは何か、それを理解するための旅は、今まさに始まったばかりだ。


エルダークレスト神聖国での経験が、彼女の心に新たな洞察をもたらすことになるだろうか。




エルダークレスト神聖国に到着したエミリアを出迎えたのは、若く褐色の清楚な修道女セレナだった。


彼女はエミリアの案内役を務めることになり、エルダークレストの神殿やその土地の文化について丁寧に教えてくれた。


セレナは黒色の修道服を身にまとい、長い黒髪を清潔にまとめている。


その穏やかな眼差しと優しい口調からは、修道女としての清らかさと誠実さが滲み出ていた。


「エミリア様、遠路はるばるお越しいただきありがとうございます。エルダークレストの神聖なる地において、貴女様をお迎えすることができ、大変光栄に思います。私がこの地の案内をさせていただきます。」


セレナはそう言うと、エミリアに向かって丁寧に一礼した。

エミリアはセレナの姿を見て、彼女が持つ信仰と誠実さに好感を持ち、彼女の案内を受けることを決めた。




セレナはエミリアを連れて、山岳地帯に点在する神殿を案内した。


険しい道を登るたびに、エミリアはセレナの信仰の深さと、エルダークレストの厳格な戒律に支えられた生活の一端を垣間見ることができた。


「この神殿は、エルダークレストの守護神を祀っております。ここでは毎日、夜明けと共に祈りが捧げられ、神託を受けるための儀式が行われているのです。神託は神官たちが受け取り、それに従って私たちの生活が導かれるのです。」


セレナの案内で、エミリアは神殿の内部を見学することができた。


石造りの柱と厳かな祭壇、祈りを捧げる人々の姿が印象的だった。


また、神官たちが神託を受けるために使用するという特別な聖堂も見学した。


そこは荘厳な雰囲気に包まれ、光が差し込むと神秘的な模様が浮かび上がるように設計されていた。



「預言者様にお会いする前に、エルダークレストの戒律と神聖法についての理解を深めていただきたく存じます。預言者様はこの地の真実を見抜き、神託を授けるお方ですので、心を清め、信仰への理解をもってお臨みください。」


セレナはそう言い、エミリアにエルダークレストでの生活のルールや、信仰の深め方について話してくれた。


そしてセレナは声を小さくして

「ここだけのお話なるのですが、

今のエルダークレスト神聖国は保守派と改革派に分かれ対立関係にあり、その事で心を痛めた預言者様は体調を崩しており、しばらく時間がかかりそうです。」


エミリアはその話を聞き

「もしよしければ、私の癒しの権能で和らぐのであればいつでも申し付けください。」


セレナはにっこりと笑い、神官様に伝えておきます。


彼女にはエミリアの力を信じてもらえないようだ。


その後、セレナは各神殿の案内を続けてくれて

エミリアは、ミネアの言葉の意味を再び思い返していた。



「おのが神に問うているのだよ」という言葉が、エルダークレストの信仰の在り方とどう結びついているのかを探るために、

彼女はさらに理解を深める必要があると感じた。


エミリアは、エルダークレストの教えやその厳格さに触れながらも、どこか違和感を感じていた。


神託とは本当に神からの言葉なのか、それとも人が作り出したものなのか。


セレナの案内を受けながら、彼女は自らの心の中でその答えを求め続けた。



エルダークレストの旅は、エミリアにとって信仰の在り方を見つめ直す機会となるだろう。


そしてエルダークレスト神聖国の生活は、質素で厳格なものであった。


その土地に住む人々の暮らしは清貧で、日々の生活に制約が多い。


信仰を基盤としたこの神聖国では、すべてが神聖法に基づいて管理されているため、日常のささいな事柄にも厳しい決まりがあった。


お酒は日常的には飲むことを許されず、祝意の日や宗教行事の際に限られていた。


お祝いの日以外には、誰も酒を口にしないのが常であり、祝祭の場で飲む酒は神々への感謝の印としてのみ意味を持つ。


食事は日に2回と決められており、それもまた質素なものであった。


麦や豆、山岳地帯で育つ野菜を中心にした食事が主であり、肉や魚はほとんど食卓に上ることはない。


たまに巡礼者たちが寄進する食物や物資があっても、それはすぐに神殿や預言者のために使われるか、厳重に管理されてしまう。


服装もまた貧しく、下位の者たちは古びた衣服を修繕して着るのが常であった。


神殿の修道士や信徒たちの服は、年季が入り、継ぎ接ぎだらけのものが多い。


修繕ができないほどに痛んでしまった場合でも、布の一片すら無駄にすることはなく、それを新たな衣服や雑巾として再利用する。



エルダークレストでの滞在中、カレン・ファースはその厳しい生活条件を見て、冷静に分析した。

彼女の博識と観察眼は、この地の問題を分析した。


「ここは山岳地帯に位置しているため、農地として使える土地が限られているのね」とカレンは言った。

「畑も限られているし、収穫物も多くはない。人口が増えれば、それだけで生活は圧迫される。人々はここを去るか、あるいは外部からの支援や寄進に頼るしかないでしょうね。」


エルダークレストの都市としての存在は、主に巡礼地として成り立っている。


巡礼者たちが神聖な地を訪れ、祈りを捧げるために持ち込む物資や寄付が、都市の経済を支えているのだ。


しかし、巡礼者が減れば、その分だけエルダークレストは立ち行かなくなるだろう。



彼女はミネアからの課題を胸に、エルダークレストの人々がどのように信仰に生き、清貧の中で何を見出しているのかを探ろうとした。


セリナの案内を通じて見えてきたのは、エルダークレストの人々が持つ揺るぎない信仰心であり、それが彼らの生活の基盤となっていることだった。


物質的な豊かさはなくとも、彼らは精神的な豊かさを追い求め、その信仰を守り抜くことに誇りを感じているのだ。


エミリアは、この地での経験を通して、信仰の本質とは何か、そしてそのために何を犠牲にするべきかを深く考えるようになった。


彼女にとってエルダークレストでの滞在は、さらなる精神的成長への一歩であることを強く感じさせるものであった。



エミリアにとって、エルダークレストでの生活は驚きの連続だった。


彼女の育った環境では、狩りをして生活し、自然の恵みを存分に受けていた。


物質的な豊かさに恵まれていた彼女にとって、エルダークレストのような厳しい環境での清貧な生活は、理解しがたいものだった。



エミリアは自分の考えを整理しながら、案内役のセレナに問いかけた。

「なぜ、ここで暮らしている人たちは、このような清貧な生活に耐えられるのですか? 私には物質的な豊かさがなくては満たされない気がします。精神的な豊かさだけではお腹は膨れないと感じるのですが…」


エミリアの素朴な疑問には、彼女自身の経験と価値観が反映されていた。


彼女にとって、豊かな食事や物質的な満足感は、生活の重要な要素であった。

しかし、エルダークレストでの日々を目にするにつれて、物質的な豊かさを超えた何かがあるように感じられた。




セレナはエミリアの疑問に微笑みを浮かべながら答えた。

「ここに住む私たちにとって、物質的な豊かさはそれほど重要ではないのです。私たちは信仰と共に生きているからです。神聖法と神託を絶対とする私たちの生活は、神の意志に従うことを何よりも重んじています。それが私たちの心の支えであり、満足を得るための源なのです。」


セレナは続けて説明した。

「物質的な豊かさは一時的なものですが、信仰は永遠に続くものです。私たちはここで、神の教えに従い、日々を謙虚に生きることで、魂が成長し、救済されると信じています。それこそが、私たちの精神的な豊かさです。」


エミリアはセレナの話を聞きながら、少しずつこの地の人々の生き方に理解を深めていった。

彼らにとっては、物質的な豊かさではなく、信仰の深さこそが日々の糧となっているのだ。物がなくとも心が満たされるという考え方は、エミリアにとって新鮮であり、考えさせられるものであった。


彼女はふと、自分の父が語っていた言葉を思い出した。「物を持つだけでは人は豊かにはなれない。本当に大切なのは、どう生きるか、何を信じるかだ。」エルダークレストの人々の生活を目の当たりにし、その言葉がようやく意味を持ち始めたように感じた。



セレナはエミリアの目をじっと見つめながら、優しい口調で提案した。

「エミリアさん、もしよければ、このエルダークレストでの生活を一度体験してみませんか?

1ヵ月ほど、この神聖な地で私たちと共に過ごすことで、信仰と日常の意味をより深く理解できるかもしれません。」


エミリアはその提案に少し驚いた。


清貧で厳しい生活とは聞いていたが、実際に体験するとなると話は別だ。

しかし、ここでの生活を知ることは、ミネアから言われた「信仰とは何か」を学ぶための良い機会かもしれないと感じた。


カレンとエリシアの反応


エミリアは一緒に旅をしているカレンとエリシアにこの提案を伝えた。

カレンはエミリアの決意を尊重し、別行動を取ることを快く承諾した。

「分かりました、エミリア様。この1ヶ月、私たちは別々の行動をしましょう。セレナさんの言葉に耳を傾けて、何か新しいことを学んでくるといいと思います。」


一方、エリシアはその提案を丁重に断った。「私はこの周辺のことをもっと見て回りたいの。エルダークレストだけでなく、近隣の状況や人々の生活にも興味があるから、別の場所で調査を続けるわ。」



エミリアがセレナの提案を受け入れると、セレナはほっとした表情を見せた。「ありがとうございます、エミリアさん。この1ヶ月は、私たちの信仰と生活の本質を体感できる貴重な時間になると思います。」


ただし、安全面にも配慮されており、無口なダークエルフ、シリウス・クレイヴが陰からエミリアの護衛を務めることが決まった。


シリウスは幼少の頃より喋ることができないが、その場に姿を現すことなく、影のように彼女を守りながら、エルダークレストでの生活が安全に過ごせるよう手配されていた。



エミリアはこうして、エルダークレストでの1ヶ月の体験を始めることになった。


厳しい規律の中での生活、限られた食事や清貧な暮らしの中で、彼女は何を見つけ、何を学ぶのか。


エルダークレストでの経験は、彼女の心と信仰にどのような変化をもたらすのか、

これからの1ヶ月は彼女にとって試練の時となるだろう。

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