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チートスキル【元素操作】持ちの元化学者は異世界でケモミミとモフモフに囲まれてスローライフを送ります  作者: ネイン


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第4話 大豆食べれるようにした②

 僕はスキル【元素操作】でバケツの入った水を使って大豆――通称ニガチャイロ豆を煮て住まわせてもらっている家へと帰った。


 住んでいる家の持ち主は、この村のまとめ役であるラッカー長老。リルのお爺ちゃんだ。


「ただいま」


「ただいま!」


 僕と違ってリルは元気よく帰宅の挨拶をした。


「野菜はちゃんと取れたのか?」


 細長い白髭を蓄えた猫耳獣人の老人。ラッカー長老が玄関に入った先にいた。


「取れたわよ」


「ならいいことじゃ……むっ」


 ラッカー長老さんは僕が持っているバケツを見て怪訝な目付きを向けた。


 僕はラッカー長老が質問する前に答える。


「これはエステルが森で採ってきたニガチャイロ豆です」


「おお、あれか」


 ラッカー長老は得心したような顔をするがすぐに眉根を寄せた。


「そんなもんどうして家に持ってきたんじゃ」


「僕はこれを食べれるようにできます」


「ほほう!」


 ラッカー長老は興味深そうに唸る。


「凄いでしょ!」


 なぜかリルが誇らしげだ。


「では台所借ります」


「どれくらいかかるんじゃ?」


「少なくとも一晩以上はかかるかと」


「ほうほう、楽しみにしとるわ」


 ラッカー長老はそわそわしていた。


 僕は台所に行ってバケツを置く。


 今日はこのまま一晩、豆を水に漬けよう。

 

◆◇◆◇◆


 翌日、僕はリル、ラッカー長老、フェンリルのシウ、そしてリルの両親と共に食事を摂る。


 リルの父親の名前はスロ。茶色髪の猫族(猫型獣人)だ。


 リルの母親の名前はオレシャ。リルと同じ赤髪の猫族(猫型獣人)だ。


 今日の朝ごはんはトースト二枚。目玉焼き。そしてミニトマトとレタスのサラダだ。サラダに使っているドレッシングはリンゴ酢にオーリブオイルを混ぜたものだ。この村には料亭があり、そこではオリジナルのパンやドレッシングが作ってある。


「カシュー様はニガチャイロ豆を食べれるようにしているとか?」


「へぇ面白そうだなあ!」


 オレシャさんとスロさんは僕がニガチャイロ豆を水に漬けている話を聞いて関心を寄せた。


「昼には食べれるようになると思いますので待ってください」


「俺は何年だって待つからな」


「そんなにかかりませんよ」


 スロさんは陽気な方だ。一方、オレシャさんは優雅な性格だ。


 食事を終えた僕はニガチャイロ豆を食べれるようにするための作業に取り掛かる。


 僕はスキル【元素操作】で木製バケツの中に入っている水を沸騰させる。原理としては水分子を分子運動させているわけだ。分子運動しているものは自ずと温度が高くなる。


 ぐつぐつとバケツの中の水は泡立っている。完全に沸騰している。


 そこで僕は一旦、水の分子運動を弱めて、弱火程度にニガチャイロ豆を煮る。


 ここから一時間ほどかけてアクを取りつつ水を足して茹でる。この行為は苦味を無くすだけではなく、大豆を柔らかくするためでもある。

 

「『元素分解』……『分子生成』……」


 僕はぶつぶつと呟きながら、『元素分解』で浮いた灰汁成分そのもの消滅させた。次に『分子生成』で空気中の水素原子と酸素原子を結合させて、生成させた水をバケツに足した。


 一時間後。


 僕は額から垂れる汗を腕で拭ったあと、台所にある木製の椅子に向けて指差す。


「『物質変形』」


 椅子の座席部分は鍋のフタのような形に変形させて手元に手繰り寄せた。ついでにフタになった椅子に付着しているであろう菌や汚れを『元素分解』で消滅させた。


 そのフタをバケツの上に被せてから、水の分子運動を止め、煮るのを止めた。


「さてと」


 僕は再び、自室に戻って豆が冷めるのを待つ。


 この家の住人は大豆を好むだろうか。この村の皆は喜んでくれるのだろうか。


 この気持ちは研究者として様々なものを生み出したときと似ている。


 いわゆる、喜びとやりがいというやつだ。

四話を読んでくださりありがとうございます。

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