いちばんぼし みいつけた
むかし むかし
そらには なにもありませんでした
かみさまがいいました
「そらに なにもないのは さみしいな。」
そこで かみさまは おそらに たくさんのひかりを ちりばめました
「よし、これでさみしくない。」
キラキラ キラキラ
おそらにかがやく そのひかりを かみさまは ほし となづけました
そんな あるとき
「ねぇ、かみさま。おほしさまとおともだちになれますか?」
ちいさなかみさまのつかいがたずねます
「もちろん、なれるとも。」
「ほんとう!?」
「あぁ、ほんとうだとも。」
「どうしたら、おともだちになれますか?」
「たったひとつのひかりを、みつければいい。」
「たったひとつのひかり?」
かみさまのつかいは、くびをかしげます
「そうだ。あのほしのなかにある、たったひとつのひかりをみつけるんだ。そうすれば、なかよくなれるよ。」
「みんなキラキラしてるのに、どうやってみつけるの?」
「よくみて、よくきいて、よくはなしをしてごらん。そうしたら、たったひとつのひかりをみつけられるよ。」
かみさまはそういって、おほしさまをみます。
「ゆっくりでいい。たいせつなひかりをみつけるんだ。」
「うん、わかった!ぜったいに、みつける!」
キラキラ キラキラ
さみしかったそらには たくさんのほしがひかってています
キラキラ キラキラ
たったひとつの たいせつな ひかり
「まっててね!ぜったいに、みつけるから!」
キラキラ キラキラ
『うん、まってる。』
「!かみさま、いま……!」
「たったひとつのひかりが、まってるみたいだね。はやく、みつけられるといいね。」
かみさまのことばに かみかまのつかいは こくりとうなずきました
両親が昔、寝る前によく読み聞かせてくれた絵本。
懐かしい気持ちで思い出したのは、今目の前に広がるこの光景のせいだ。
「…………やけにリアルな夢ね。」
肌寒さも、夜空に光る星も、何もかも。
部屋着として着用していたベビードールの裾がヒラヒラと風に揺れる。
「お風呂入って布団に入って寝たよね、私。」
外出した記憶もないし、夢遊病でもないハズ。
つまり。
「いくら誰もいない夜だとしても、思い切りがよすぎないか、私。ベビードールで外に出ちゃダメだろ。いや、夢だけど。アレ、夢って願望の現れだっけ……?え、嘘、私痴女……?」
足元から伝わる土の冷たさも、草木の匂いも、肌を撫でる風も、全部、全部……。
「というか、ココはどこよ……大抵夢の中って知ってるところとかテレビで見た景色とかが反映されるんじゃないの?」
自然の中を進めば大きな湖が目の前に広がっていて。
「わぁ、キレイ……!!」
水面に月や星が反射して光る。
水際まで近づき、水面に手をつける。
ひんやりとした冷たさが指先から伝わり、指先によって生じた波紋が、夜空を揺らす。
「…………こうして自然の中でゆっくりとするのは、随分と久しぶりだわ。」
昔はよく両親が公園やピクニックに連れて行ってくれた。
自然の中をよく駆け回ったのを覚えてる。
大人になった今ならわかる。
あれが子どもの特権というヤツだ。
「…………はぁ…。夢の中で衝撃与えたりしたら覚めるけど、これだけ感覚あるのに今更衝撃与えても目覚めるのか疑問だわ。」
その場に座り込み、ため息を一つ。
「こういう捻くれた考えをした時点で純粋さの無くなった大人だと実感する……泣きたい。」
寝る前に大泣きしたのが悪いのか。
寝る前に泣くと悪夢を見るって迷信、本当だったのね。
「夢の中でまで泣きたくなるなんて、悪夢だわ……。」
俯いて再びため息を一つ。
その時、少し強めの風が吹いて髪の毛がボサボサになる。
軽く抑えるも、夢だし良いかとそのままにする。
「こんなところに一人で何してるの?」
「えっ?」
聞こえた声に顔を上げれば、夜空のような黒髪にシルバーアクセをつけた男がこちらを見下ろしていて。
(ヤダ、イケメン……!!)
「泣いてたの?」
彼の手が、優しく髪をすく。
ソレに、今自分の髪の毛がボサボサだったことを思い出して。
「あああああの、別にいつもボサボサなわけじゃなくて、さっき強い風が吹いてですね……!!」
サッと身を引き、慌てて手で整える。
(私のバカ!!なんで、さっき整えなかったのよ!!夢だからって油断してるんじゃないわよ!!)
内心大絶叫しながら髪の毛を整えていると、クスッと笑う気配がして。
「可愛いね。」
「はい…っ!?」
「可愛い。」
ニコリと微笑み、隣に腰をおろす。
ドキドキと鼓動が張り裂けそうなくらいに鳴り響く。
(やばい、やばい、やばい!心臓出る!!口から出る!!)
「いつもそういう服を着てるの?」
「へ…………?」
彼の視線が私の胸元に送られているのに気づいて。
「ね、寝る時!!寝る時だけ!!お風呂上がりだけのスタイルです!!外に出る時はもっとちゃんとしたの着てます!!見苦しくてすみません!!」
身体を隠すように足を抱えて座り、彼に背中を向ける。
「そんな隠さなくても良いのに。キレイだなって思っただけだから。」
「キレ……!?」
パクパクと口を開閉する。
(私には無縁な言葉が次々と繰り出されてるんですが…!?これも夢だからですか……!?)
「貴方のお名前は?」
「き、綺羅です。」
そう答えれば数回口の中で私の名前を転がすと、ニコリと微笑んだ。
「うん、覚えた。」
キラリと彼のピアスが月光を反射する。
「せっかく会えたのに、残念。そろそろお別れだ。」
彼の指先が垂れる髪を一房すくい、耳にかけてくれる。
「夢から覚めても覚えててくれると嬉しいよ。」
段々と感覚が無くなり、眼の前が暗く沈んでいく。
「貴方の、名前……は…………?」
私の問いかけに小さく笑う。
「 」
プツリと意識が途切れた。
目覚まし時計の音で目を覚ます。
目覚まし時計を止めて、天井を見上げる。
「…………久しぶりに夢、見た気がする。」
まだ少し眠たくて目を閉じる。
(どんな内容の夢だったかは、覚えてないけど。)
沈んでいく意識をそのままに、身を任せていると再び目覚まし時計が鳴って。
「やばっ、仕事!!遅刻する!!」
慌てて飛び起き、バタバタと身支度を整えていく。
人様には見せられないような表情で、準備を整えると職場へとダッシュ。
その努力の甲斐あって、始業時間前には職場に到着。
「おはよー、綺羅ちゃん。」
「おはようございます。」
「綺羅ちゃん、寝坊した?」
「え、寝癖ついてます?」
「ううん、髪の毛がボサボサになってる。全力疾走しましたって感じ。」
「すみません…………。」
軽く髪の毛を手ぐしで整える。
「今日から新しい人来るんだから。若くてイケメンだって朝見かけた子たちが言ってたよ。」
「そうなんですね。」
鏡で身だしなみを確認し、頷く。
(よし、バッチリ!)
気合を入れていると、扉付近の人たちがザワザワとし始めて。
「来たみたい。」
視線を向ければ見慣れた上司に連れられた見覚えの無い男の人。
(あ、れ………?)
「今日からうちに配属になった、神田聖くんだ。取締役としてしばらくココで一緒に仕事をすることになる。私達の上司になるから、しっかり覚えるように。」
既視感に目を瞬いていると、紹介されて。
「神田聖です。取締役とは言っても、わからないことだらけなのでご迷惑おかけするかと思いますが宜しくお願いします。」
パチパチと拍手が起き、イケメン上司にヒソヒソと静かに沸き立つ。
「では、皆仕事に戻ってくれ。」
それぞれがデスクに付く中、パチリと神田さんと目があって。
ゆったりとした足取りで近づいて来て。
「こんにちは、綺羅さん。」
ニコリと微笑む姿に夢の中の彼と姿がかぶる。
ソレに彼の耳元へと視線を向ければ、ピアスホールがあって。
(嘘でしょ……だってアレは夢で……。)
「また会えたね。」
皆が私達をジッと見ているのがわかる。
「会えました、ね……。」
私の戸惑いが伝わったのかニコリと笑って。
「うん、やっぱり可愛い。」
「…………っ。」
(これは夢!?現実!?どっち!?)
「これからよろしくね、綺羅さん。」
少し屈んだ彼の唇が耳元に寄せられて。
「やっと見つけた僕の一番星さん。」
「!」
「逃がす気はないので、覚悟してください。」
ニコリと微笑む彼に、何も言えなくて。
「寝ても覚めても、僕のことを考えてくれると嬉しいです。」
ドキドキと心臓が音を立てる。
「今って現実ですか、夢ですか。」
あまりの現実味のなさに自分の頬をつねってみればちゃんと痛くて。
そんな私の行動に夢の中と同じようにクスッと笑って。
「無防備な格好も素敵でしたが、そういう格好もよくお似合いです」
「…………っ。」
あまりの恥ずかしさに顔を覆う。
(穴があったら入りたい……。)
もうどっちが夢でも良い。
ただどうか、この状況が都合の良い現実であって欲しいと思った。
読んでいただき、ありがとうございます
感(ー人ー)謝