回避機動
「まずは艦の機動だ。目標から触手が伸びてくる。スティックを操作して回避したまえ」
「操作方法なんてわかりません!」
「だいじょうぶだ。頭で考えるな。キミの体が全部覚えている。ディスプレイの目標をじっと注意していたまえ」
「そんな、むちゃくちゃな──」
その目標から突如としてこちらに放たれる3本の触手!
朝霧はまったく混乱し、何も考えられず、自分が何をしているかもわからなかった。
敵、気持ち悪い、触手、戦艦、落ちる、沈む、死ぬ──
言葉の連想ゲームがぐるぐると頭の中でまわるばかりで、艦橋からの声もロクに聞きとれなかった。
「ああ、もうダメなんだ……なにがなんだかわからず、人間は死んでいく……それが人生……」
よくわからない独り言をぶつぶつと吐きながら、気がついたときには、歓喜に興奮する艦橋の声が聞こえてきた。
「すばらしい! やはり私の予想は間違ってはいなかった! そうだろ、夕凪くん!」
まあ……という困惑の別の声がこちらまで漏れてくる。
何が起こったのかさっぱりわからない。
「リスマくん! 反撃開始だ!」
興奮する声は、さらに言葉を叩きこんでくる。
「右手の人差し指・上トリガーが前方の第一砲塔、
中指下トリガーがおなじく前方の第二砲塔、
左手人差し指・上トリガーが後方の第三砲塔、
中指・下トリガーが下方の第四砲塔だ。
右手親指ボタンは右舷ミサイル発射、左手親指ボタンは左舷ミサイル発射だ。
対空防御は自動で行なわれるから基本的に関与は不要、とりあえず、目の前のあの存在を殴り倒していけ!」