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深呼吸
「いいか、よく聞いてくれリスマくん。
まずは落ち着いて深呼吸してくれ」
あいかわらず艦内は何度も激しく震え、ときには朝霧の座っている席から転げ落ちそうになる。
「深呼吸だ。ほかのことは考えるな。まず吐いて……」
三回、呼吸を終える。
「そうだ。つぎに両手にあるスティックレバーを握るんだ。レバーにあるトリガーなどに触れるんじゃない。やさしく握るだけだ」
「はい……」
「よし、いいぞ。映像をそちらに送る」
「うわっ」
リスマの目の前に映し出されたのは、さきほどのまがまがしい存在──
──それをさらに奇怪な形状に、そして色も泥々しく、毒々しく、まるで世界を破滅に導く邪神のように造形したものだった。
リスマが嘔吐感を覚えたのは、その表面が、まるで無数のウジがとりついているように、凸凹がなまなましく蠕動していたことだ。
「リスマくんにはこいつをブッ潰してもらう」
「はっ?」
「そのためにキミがこの世に存在するのだ」