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第88話 忍び寄る者達

 詰所を出た俺達は、ギルマスに別れの挨拶をして、門を出る列に並ぶ。


 俺達の馬車が門をくぐろうとした時、王子様達が詰所から出てくるのが見えた。


 従者は腕に添え木をして、首から吊ってるから、簡単な治療はしてもらえたようだ。


 ……あっ、こっち見て睨んで、指差してやがる、ってかその隣ガズリー達も指差してるぞ……。


 昨日と今日で、色々と絡んできた奴らが同じところにいるって、なんか嫌な予感しかしねえが、俺達の馬車は分厚い街壁をくぐり抜け、王都の外へ走り出した。


 一度だけ見晴らしの良い草原を走っている時、遠くにグリーンウルフが出てきたが、一匹だけだったからかすぐに見えなくなった。


 本当ならまだ明るい内に到着する予定だった一日目の夜営地には、薄暗くなり、遠くの山に陽が半分以上沈んだ頃にやっとついた。


 街道から外れ、街道に沿って整地され、草もまばらにしか生えてない地面に、何度も馬車が通った後がある。


 それにそってゆっくりと進めて見ていると、先客達は既に馬車を停め、テントを張ってるため、夜営地の先から順に場所を使ってるみたいで、俺達は真ん中より少し王都側に停めることにした。


「ケント、そこ地面に穴が空いてるわ、気を付けてね」


「おお、こりゃハマったら車軸がやべえぞ」


 少し大回りして、穴をよけて進み、一番手前に馬車を停めた。


「うっし、馬を外して水と飼い葉だな、テルルとセレンは火を起こす準備をたのめるか?」


 停めてすぐに御者台から飛び降り、一緒に御者台にいたテルルを抱き止め降ろして、馬車の後ろへ回り、みんなを降ろすために幌を開け、テルルと協力して荷台から踏み台を取り出し足元に置いておく。


「テルルとセレンは焚き火の用意、アシアにエリス、プリムも晩ごはんの用意頼むな」


「「任せて(は~い)」」


 荷台から降りながらした返事を聴きながら、俺は馬の方に戻る。


 馬を馬車から外して馬具も外してやる。


 うお、結構汗かいてんな、ブラッシングもしてやるか。


 御者台の足元にある箱からブラシを取り出し、馬を小川に引いてつれて行き、空いてた杭からロープを引っ張り馬にくくりつけ、水を飲ませている間にブラッシングをしてやる。


 水を飲む勢いがおさまってきたところで、馬達のご飯である飼い葉を取りに戻りついでに塩も持っていく。


 馬達が満足するまで水、塩、飼い葉にブラッシングも終わらせて、馬車に戻ってくると、まわりの馬車や、テント前の焚き火が明るく感じるほどあたりは暗くなっていた。


「ケントさん、もうすぐスープができますよ♪ アシアさんは料理上手いですね」


「おう、アシアんちは村で唯一の飯屋だからな、俺もたまに食わせてもらうがあいつの料理は美味いぞ」


 帰ってきた俺に気が付いたプリムは味見していたのか、木のスプーンを持って笑顔で迎えてくれた。


 その横でアシアはなんでかくねくねしるが、まあよく見る風景だ。


 初日だから良い食材があるんで、スープの具も多くて食べごたえもあったが、美味いし、腹も空いてたからあっという間に食べ終わってしまった。


 まずは俺とプリムが夜営の見張りをすることになった。


 深夜を回った頃に二番目のセレンとエリス、その後朝ごはんの準備をするアシアとテルルの順番だ。


 四人は馬車の下にもぐると、敷いた魔狼の毛皮にくるまり、疲れていたのかすぐに寝息が聞こえてきた。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「おい! もっと速く進めないのか!」


「ルテニウム様、夜は危ないのでこれ以上は」


「王子様、本当にケントの野郎をやっつけた後、一緒にいた女は僕達にいただけるのですか?」


 王子様の従者が片手で手綱を握り、光の魔道具で数メートル先までしか見えない中を、馬が怯えない程度だがギリギリの速度を出して走っている。


 王子様と一緒の薬草採取の依頼を請けていた俺達は、衛兵の詰所前でケント達が門を出ていく所を見て、僕が『ケントが逃げやがった!』と叫んだ事で、声をかけられたのが出会いだ。


「五人の内、テルルとセレンは駄目だ、他の女は好きにしろ」


「はい」


 お互いケントに恨みがあるみたいで、すぐに追いかける事にしたんだが、僕達も一緒に王子様は大銀貨五枚で馬車を十日間借り、装備がなかった王子様達は二人で大銀貨一枚程度の駆け出し装備を買って、急いで王都を出てきた訳だ。


 馬にもほとんど休憩はさせず、走り続けて眠気がヤバいくらいになった頃、街道の先に、僕達の光の魔道具ではない、焚き火の明かりが見えた。


「あそこにいなければ、仕方がない、一度休憩を挟もう」


「そうですねルテニウム様、馬も休ませなければ潰し兼ねません。軍馬と違い、体力がないのでしかたありませんね、そうだガズリー、光の魔道具に布をかけてください」


「はい」


 速度をゆるめ、見付からないためだが、夜営地の光があり、それを頼りに進める事もなんとかできるため、光の魔道具に布をかけ、向こうからは見えないようにした。


 そこには十台ほどの馬車と沢山のテントが張られていたが、ケントの乗っていた馬車が一番手前にあるのが見えた。


「王子様、ありました! あの馬車です!」


「うむ、その様だな、よし、光の魔道具を消せ、そして少し離れたところに馬車を止めよ」


 王子様は僕が指差したところを目を細め見て、自分でも確認したのか、僕に光の魔道具を消せと命令してきた。


 被せた布の中に手を入れ、嵌めてある魔石を手探りで外した。


 一応布をめくって光ってないことを確かめ『消しました』と報告し、腰の左にある剣に手をやり、左のナイフも触り装備は万端と気を引き締める。


 そんな時、もうほとんど止まりそうな速度でケント達の馬車の少し離れたところに停めるようだ。


「はっ、その後は聖騎士のガズリーが中心でケントだけを襲うのでしたね」


「ああ、僕には司教様からお預かりした、剣とナイフがありますからね、外れスキルのケントなど、もう後れを取ることはありませっんよおっ!」


 ガタンガガガと行きなり揺れ、止まった馬車のせいで、装備を確かめるため、荷台の上で立っていたため僕は――。

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