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第66話 雑魚狩りをやろうか

「どわっ! デカい穴が空いちまってるぞ!」


 アンラの爪は難なくバジリスクの脳天を貫き、心臓を刺された後ビクン、ビクンと痙攣していた体を弛緩させ、クロセルの収納に入れられた。


 詰所の中を覗き込むと、出入口と同じくらいの穴が……。


 壊れた椅子や机の向こう、奥の壁にぽっかり空いているのが見えた。


 見たところ壊れた家具や、棚からこぼれ落ちた本、それからバジリスクが現れるまで飲んでいただろうお茶を撒き散らして転がったコップにポット。


 この様子なら、怪我したりやられた兵士はいないようだな。


 まあ、逃げる時に躓いて転けたり、壁にはぶつかっていたから多少の擦り傷や打ち身はあるだろうが、まあ、被害が少なくて良かったな。


 そんな事を考えていると、アンラが壁に空いたデカい穴を覗き込んでいるのが見えた。


(やっぱり思った通りだね~、あの大きさの頭なら、百メートルくらい穴が続いてるんじゃない?)


「本当にすげえな、この大きさなら言ってた通り、あのデカいトロールでも簡単にやられちまうな。ってかよ、話はかわるがバジリスクの皮で胸当てとか作ってもらえねえかな? クロセルでも切れなかったんだぜ?」


『そうですね、生きている時は、強力な魔法で表面を覆っているので攻撃を吸収しますからね、ですが魔法がなくても強度はありますので良いかも知れません』


 バジリスクがハマっていた穴を覗いてそんな話をしていると、兵士達が近付いてくる気配を感じ取った。


(戻ってきたみたいね、んじゃ~後は細かいレイスを浄化すれば良いんだよね?)


 アンラの言う通り、やってしまえれば良いんだが、俺達だけでやるにはこの城は広すぎっしなぁ。


『それは見かけたものだけで良いのでは? 今回倒した三匹のように上位に近いもの、あるいは中位がいるなら別ですが』


 そうだよな、ここに来るまでもアンラは沢山捕まえては浄化していたし、俺達だけでやってしまえるものではないだろう。


「だ、大丈夫ですかケント殿、バジリスクはどこへ?」


 詰所まで到着したようだ、部屋の中を覗き込んできながら兵士の一人が声をかけてきた。


「ひっ! な、何ですかその穴は! そこからバジリスクが出てきたという事ですか!」


「そうだ、いきなりその壁が崩れ、バジリスクの頭が出てきたんだよ」


 お、逃げた兵士達も一緒に戻ってきたんだな。


 逃げ出した兵士は、どんな状況でどうやって出てきたかと、説明してくれる。


 最後は大きく空いた穴を見ながら俺にも説明を求めてきたんで、どうやって倒したかを話してやる。


 もちろんアンラの事は内緒だがな。


「――って感じでよ、バジリスクはやっつけたぞ、この穴は想像通りだが途中で行き止まりになってるだろうな、あっ、物はもう収納したからよ、安心して良いぞ」


 その後報告のため、王様と公爵様のところへ行くんかと思ってたんだが、悪者の宰相を調べてっか、らしばらく時間がかかるそうだ。


 アシア達は客間に戻っているとの事で、そっちにメイドと兵士に案内されながらもアンラがモヤモヤを捕まえては浄化している。


 それを見て、流石に多すぎるだろと思い、俺もクロセルで浄化すると相談を持ちかけた。


 客間に戻って待機するのも暇だし、城の中にいるモヤモヤの浄化してる方が良いだろう。


「い、今のがレイスの退治ですか!? キラキラと光が宙に上っていきましたよ!」


 提案しても、客間で待っていて欲しいと言われたが、クロセルを鞘付きのままで、モヤモヤをぶっ叩き、浄化して見せれば許可も出るだろうと、やってみた。


「私が見た事のある教会の方々がやっていた浄化と同じようですね……あの、ケント殿は教会の方でもあるのですか? 冒険者と聞いていたのですが」


 バジリスクを倒しに行く時に、一緒についてきた兵士の一人に説明して、実際に浄化したら、んな事を聞いてくる。


「まあ、司祭の爺に育てられたからよ、教会の者じゃねえが、似たようなもんだ」


「なるほど……では私が城の中を案内いたしましょう。浄化をしていただけるのですから喜んで」


 笑顔から今度は真剣な顔に変わり、胸に手をやり軽く頷くと、メイドに目をやってこの後の事を話す。


「君、私はケント殿を案内しますので、その事を王に報告しておいてもらえますか? ケント殿はお強いですが、メイドのあなたがいると、お手数をかけてしまいますので」


「はい、私もそう思います。ケント様、レイスの浄化をお願いいたしますね」


「おう、兵士の兄ちゃんもできれば下がっててもらいてえが、お城の中を勝手に歩きまわれねえしな。頼むぜ」


(ねえねえケント、どっちが沢山レイスをやっつけられるか競争しない? 私はケントの上に浮いてやれば天井の高いお城だったら良い考えでしょ?)


 へ~、見た感じだと、確かに手の届くところにいる奴と、天井付近をふわふわ浮いてる奴がいる。


 そうだな、ちょうど真ん中の高さで分けるか。


(頑張るよ~♪ ほいっと!)


 アンラは天井にまで浮かび上がり、くるりと体を半回転させると、天井に着地した。


 ……なんだよそれ、格好いいじゃねえかよ……俺もやりてえ!


 そしてお城でモヤモヤ討伐競争が始まった。

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