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第34話 詰問と罪

 衛兵長とギルマスは、縛られて地面でのたうち回る、五人の顔を被っている布を取り除いた。


 ぐいっと顔を上げさせたのは俺が顎を砕いた奴だ。


「コイツ、······ギルドで見た事があるな。ソロで薬草採取の依頼を主に請けているヤツだ」


 ギルマスはじっと顔を見ながらそう言う。


「こっちの奴らも街の巡回で見かけるぞ」


 衛兵長もうめく男達一人ひとりの顔を上げさせ顔を見てそう言った。


「そっちの奴らも冒険者だな、おい、お前達は何者だ。お前は喋れないだろうから、そっちのお前答えろ」


 アンラに最初に眠らされた男にギルマスは顔を向け質問を投げ掛ける。


「あ、暗殺ギルドだ」


「「予想通りか(ふむ)」」


 顔をしかめながら絞り出すように答えたおっさん。

 ギルマスと衛兵長も頷きながら顔を見合わせ頷きあってる。


 俺は暗殺ギルドと分かっちゃいたが······ペインなんとかはやっぱ痛そうだな。


「誰の依頼だ?」


 顎の砕けた奴から手をはなし、答えたおっさんに続けて質問するギルマス。


「依頼者はリチウム男爵、リチウム街の暗殺ギルドのギルドマスターだ」


「ちっ、ケントの言ってた通りだが、ギルドマスターだと!」


「嘘だろおい! 領主で管理監のリチウム男爵が!? これは王都の本部に報告だな……」


 おうおう驚いてるな。顔付きがさらに険しくなったぞ。


 その後も、ギルマスと衛兵長は黒ずくめの奴らに色々と質問しているが、横にいたアンラはいつの間にかその手にモヤモヤを捕まえ、伸ばしたり、丸めたりして遊んでいる。


 おい、やっつけんなら(いじ)くってないで浄化しちまえよ。


(え~、まあ良いけどさ~、えい)


 アンラは俺の言う事を聞いて、モヤモヤを離し、シュッと伸ばした爪で横薙にスパッと切ってしまうと、空に登りながら薄れて消えていった。


 そして、思い出したように俺の方を向いてきた。


(ほら、浄化したよ。ねえケント、暇だしお酒飲んできて良い? あっ、その前に本を借りてこようかな)


 おう。もう大丈夫だよな、構わねえけど酒は盗むんじゃねえぞ。


『アンラ、本はまだ我慢しなさい。お酒なら良いですが、ここを離れるべきじゃないです』


 そうなんか?


 クロセルは今にも飛び出そうとしていたアンラをよびとめた。


 飛び上がろうと膝を曲げた状態のアンラはこっちを振り向いた。


(ええ~、追撃でもくるの? 五人も捕まえたんだから大丈夫じゃない? とりあえずお酒は飲むけど)


『一人、監視していた者がいたようです。その者が後から来た者と一緒なら問題ないですが、まず、ギルドマスターであるリチウム男爵の元に報告しに行ったと見て間違いないでしょう』


(ん~、しかたないなぁ~。じゃあ私は部屋に戻るね、何か来たら呼んでくれれば手伝って上げても良いよ~、じゃね~)


 曲げてた足を戻して部屋に向かうアンラ、なにもないところから本を出して読みながらテラスから部屋に入っていった。


 おい! 本持ってるじゃねえか! まったくよ。


 そしてまだ、質問は終わりなさそうだ。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「誰だ!」


 執務室のソファーに座っていたが立ち上がる。

 贅沢の粋を凝らした部屋の中に風を感じ、気配が現れたところを見ると、そこには依頼の見届け人として派遣した者が立っていた。


「ギルドマスター様、三人が失敗し、捕縛されました。待機させていた始末屋の二人を動かしましたので、口封じも終わっているところでしょう」


「チッ、なにをやっておるのだ! 奴らが失敗したと!? 今この街にいる中で一番の腕を持つ三人だぞ!」


 怒りのため持っていたグラスを握り潰し、ボタボタと絨毯を酒と血で汚しているが、そんなもの関係はない。


「チッ、奴らがギルドに預けてある金を全て引き落としておけ、役立たずどもが」


「ではそのように。ところで少年の暗殺はいかがなさいますか?」


 握り込んでいた拳を緩めると握り込んでいたガラスの破片が絨毯の上に音もなく落ち、スキルで回復魔法を唱え怪我を治す。


 ソファーに座り、考えを巡らす。


 奴らで駄目となると、王都支部が抱えるSランクの誰かを向かわせるしかないか。


「王都支部に依頼をもって行け」


「それでは金貨二枚では請けてもらえないのでは?」


 チッ、その通りだ、奴らは貴族殺しが主だ、ガキ一人殺すなど赤子の手をひねる依頼でも最低大金貨からだ。

 それでは儲けどころか損を被る。採算が合わんな······。


「はぁ。仕方がない、運の良い奴め、依頼は取り下げておけ、それから新しい酒だ。強い酒を持ってこい、新しいグラスもだ」


 音も立てず部屋から出ていく家令を見送り、ソファーに深く座り直して背もたれに体を預ける。


「今宵はこの怒りをぶつけなければ表の顔を維持できんな」


 地下に捕らえてある新しい奴隷だ、あの小娘はどんな声を聴かせるか······。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「なんだと! ではここ最近の失踪した者達のほとんどがリチウムの仕業だと言うのか!」


 ぐぬぬぬ、そんな悪いことまでやってやがったのか! おいアンラ! クロセル! リチウムって野郎はシバきまわしてもいい奴のようだぞ!


『その様ですね、行きますか?』


(なになになになに! だったら本とお酒は全部もらっても良いよね! 感張っちゃうよー!)


 屋敷からコップを握ったまま顔を出したアンラも賛同してくれた。


 冒険者ギルドと、衛兵も協力してくれそうだが時間がかかるそうだ、ここは俺がリチウムやっつけてやる!

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