第149話 ワーム狩り
「あっ、その服お父さんが造った物です? それもお母さんの……」
そこまで言ってからパッと口に手を当て言葉を切った。
なんだ? お父さんにお母さんのってことは、あの二人の娘ってことか……まあ、聴かれちゃまずいなら頷かねえ方がいいな。
「それより手紙はそれだ、受け取りの署名を頼めっか?」
コクコクと頷いて、口を手で押さえながら依頼書に署名してくれた。
いや、口はもう良いだろ、と思わなくもないが……まあ良いか。
「ありがとうな、そうだ、数日この街にいるつもりなんだがよ、なんか良い依頼はあっか?」
ギルドマスターはまだ口を隠したまま、受け付けの姉ちゃんを見る。
「そうですね、鉱山の坑道と、トンネルに沸くワーム狩りでしょうか?」
「ああ、そういやここに来る時ミスリルワームを倒してる冒険者と出くわしたな」
「あっ、そう言えばお酒おごってくれるって言ってたの忘れてたね~。まあそれより良いことがあったから良いかな。ケント、ワーム狩り行っちゃう?」
アンラはそう言うが……ドワーフのおっさんにお礼で渡すのも良いか?
「そうだな、何匹か討伐してみるか、姉ちゃん、その依頼を登録してくれ」
ギルドカードを出して姉ちゃんに渡すと『嘘っ』とか呟いたが、大きな声は出さずすぐに登録を済ませてくれた。
思ったよりランクが上だから驚いたんだろうなと納得して俺達は冒険者ギルドを出た。
ワームがいるのは鉱山か、通ってきたトンネルだ。
帰りにも通るし、ここはまだ行ったことの無い鉱山に行くことにする。
「こんなところから入れるんか、言ってた通り鉱山に街ができただけあるな」
「そだね~、気が向いたら道の真ん中でも掘り始めるって言ってたし、冒険者ギルドから入れる鉱山があるからどうと言われてもね~」
俺達が来たんは、街の中に無数にある鉱山のへの入口のひとつ、ハンマー亭の裏へ抜ける路地にあった木箱をどけたらある小さい穴だ。
小さいと言っても、入口だけだ。
そこから入ると大人が立って余裕で歩けるくらいの広さがあった。
その昔、胴まわりが大人が十人が手を繋いだほどもあり、その長さは百メートルを軽く超えるワームが出てできたらしい。
坑道には明かりはなく、真っ暗だが俺達は問題なく見えっから、松明も、ランプも使わず坑道を進む。
こんなところにもチラホラとモヤモヤはいるが、見付けたら浄化して進んでいると、たまにキラッと光るものが落ちている。
アンラは掴んでいたモヤモヤを握り潰した後、拳大の石を拾い上げた。
「あっ、ん~とこれは~、サファイアね、くっついてるただの石を取り除いても中々の大きさよ」
ほんの少し爪を伸ばしたアンラはその拳大の石をカカカッとつついたんだが、ボロボロと緑色の石のまわりについていた石が剥がれ、綺麗な緑色の石だけになった。
「へえ、綺麗なもんだな、大きさは半分くらいになったがよ。だが、こんなにすぐに宝石があるなんて、暗くて見落とした物が結構落ちてるって事だな」
「うんうん、これだけでも相当高値になると思うよ~」
「なるほどな、それを拾っているだけでそこそこ稼げそうだが、やっぱりワームの方が儲かるんかな?」
「ん~、楽なのはワームだよね~、いっぱい来てくれたらだけど」
話をしながら一時間ほどモヤモヤを倒し、ポツポツと落ちている石を拾い、宝石が見当たらなければ捨て、宝石がついてるならクロセルが収納しながら奥へ道なりに進むと、やっと魔物の気配を感じられた。
「おっ、いたぞ。大物だと良いな」
「ほんとだ、え~っと、この穴かな?」
大きな坑道の壁に空いた、そこそこデカい、俺達が立って歩くには少し狭い横穴を覗き込むアンラ。
俺もアンラの横に移動して一緒に覗き込むと、気配がゆっくりと近づいてくるのが分かった。
「とりあえず一匹目だな、よし、覚醒して待つか」
「うんうん、まだしばらくかかりそうだけどね~、あっ、ルビーみっけ」
横穴を気にしながら足元に転がる宝石を拾い集める。
『はぁ、緊張感が全くありませんね。まあしばらく待つだけですから、二人が見落としたものだけ収納しておきますね』
「そうだな、金属系は見ても分かんねえし、頼んでおくよ」
気配に気付いてから十分ほど経っただろうか、ズズズと横穴から微かな音が聞こえてきた。
俺はクロセルを抜き、アンラは一度爪を伸ばしたんだが、爪を戻してダーインスレイブを抜いている。
『アンラ、汚れたくないと思い私に変えたな……だがワームか、一度味わっておこうか』
なんほどな。確かにヌルヌルになったからなぁ――っ!
「来た!」
横穴からズルリと頭を出したワームは、俺達に気付くことなく俺達がいる坑道にその姿を見せた。
トンネルで見た奴と同じくらいの大きさだが、少し色が違う。
「アイアンワームね~、ハズレだけど一匹目だし、やっちゃおう」
「おう!」
スッと膝を曲げ、一気に伸ばしながら地面を蹴る。
五メートルほど横穴から出ているワームの胴体に向けて、気合いを入れて刃を伸ばしたクロセルを上段から斬りおろした。
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