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第120話 渡り人

「へぇ~、お姉さん渡り人かぁ~珍しいね」


「渡り人? なんだそりゃ」


「あのね、私たちがいるこことは違う世界から召喚されたり、何かの拍子で世界同士が繋がって、隙間が開いちゃうの。んで~そこにハマっちゃうと繋がった世界に飛ばされて来ちゃうんだよ」


 アンラはなにか知ってるみたいで、説明してくれたんだが、全然意味が分かんねえ。


「うわ~、やっぱりあの魔法陣だよね……だとしたら他のみんなはどこに行ったのかな? 一緒に道場へ来たところ光ったのに」


「あら、魔法陣なら召喚ね。他の人もいたなら今頃召喚した人達といるんじゃないかな? 奴隷にされてなきゃ良いけど」


「奴隷? え? ど、どういう事?」


「なぁ、どういう事なんだよ。分かんねえって」


「ん~、説明しても良いけどまずは馬達を休ませようよ」


 姉ちゃんはそれどころじゃねえ感じだが、それもそうだなと、馬車から馬を外して水場に連れていく。


 それに姉ちゃんも『ちょ、ちょっと途中で止めないで!』とか『友達なの! どういう事か最後まで教えて!』とか言ってるが、アンラは『はいはいこの後でね~、馬さんお待たせ~』と馬車から持ち出したブラシと岩塩を持って馬の世話を先にするようだ。


 姉ちゃんも一旦俺達の邪魔をしないように、ゼリーと名付けたグラトニースライムをぷにぷにしながらついてくる。


 水と塩、少し飼い葉をやってブラッシングしながらアンラがさっきの話を説明し始めた。


「魔法陣で召喚されたなら、召喚したところへ行くのが普通なんだけど、たまにはみ出る人がでるらしいんだよね~、単なる事故ってことかな?」


「ん~、姉ちゃんはその魔法陣ってのからはみ出てたってことなんか?」


「それもあるんだけど……ねえ、あなたのスキルってなに?」


「スキル? あっ、もしかして! ステータス!」


 姉ちゃんはゼリーを肩にのせて、足を肩幅に開き、左手は腰に当て、右手は開いた状態で前につきだしてそう叫んだ。


「あれ? 違うのかな? ステータスオープン! これも違うのね……後は……メニュー! メニューオープン! 出た! ひゃっふー!」


 さっきまで『友達がぁ!』とかなんとか言ってたのによ、なんか興奮して訳わかんねえ呪文を唱えてるが、なにも出てるようには見えねえんだが……。


「あのですね、まずは名前に――」


 なんか宙を見つめて目が動いてるからなんか読んでるようにも見えねえことはないが、俺には何も見えねえ。


 そしてスキルを言い始めたんだが、おかしい。

 普通なら一つだ。

 洗礼のスキルを持ってると二個目のスキルが付くらしいんだが、姉ちゃんのスキルはすでに十個近くあるようだ。


「――で最後が言語理解ってスキル。ってあれ? ど、とうしたの?」


「あんな、スキルってのは洗礼でもらえんのは一人一個だ。それがそんなに付いてるんはめちゃくちゃ頑張って修行すっしかねえんだよ。だからそんなに持ってんのはおかしいなって思ってよ」


「そんなことないよ~、渡り人は最低数個のスキルを持ってるしね~言語理解を持ってるなら異世界から来たのは確定ね、私も持ってるし」


「は? アンラ、どういう事だ?」


「私は異世界に行って、帰ってきたからね~。まあ私は暇潰しで別の世界を見に行っただけだけど、世界をまたぐ時にスキルが増えたりするからお得なのよ」


「スゲー! な、なあ俺も努力があるから色々スキルを覚えてきてっけどよ、それ滅茶苦茶楽じゃねえのか?」


「そうでもないんだよね~、普通の人族では無理かな? 戻って来れなくても良いなら今度世界の割れ目見付けたら入ってみるのも面白いかもね~」


 いやいや、帰って来れねえんじゃ駄目だろ。


 馬のたてがみをブラッシングした後、編み込みし始めたアンラは『ケントが行くなら私もついて行くけどね~』とか言ってる。


 ってことは……。


「あの、その話だと、私は元の世界には帰れないって聞こえるんだけど」


 姉ちゃんの疑問はもっともだ。

 人族に見えっし、来ちまったなら帰れねえってことになるもんな。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 馬の世話が終わり、少し休憩した後、ランタンに向けて姉ちゃんを連れて出発した。


 姉ちゃんは帰れないという事に驚き、落ち込んでしまったが『こうなったら魔法で生計を立てなきゃ!』と叫び、とりあえず魔法はスキルがあったからと練習を始めた。


 さっきの友達の事もそうだが、ちと落ち込んだのが復活した途端に元気になる姉ちゃんだなとも思った。

 魔法が使えっし、こんだけ元気なら街まで連れてけば一人でも大丈夫だなと思って、冒険者ギルドへ登録した後は別行動にする……。


 ……つもりだったんだがなぁ、一応魔法を使ってもらったんだけどよ、こりゃ、まるで駄目だ……。


 火魔法を打ってもらうと、ヒョロヒョロと人がゆっくり歩くくらいの早さで、五メートル先の岩まで届かなかったからな。


 しかたねえからもっと練習させて、一人前になるまでは修行に付き合うことになり、馬車に乗ってもらって、まずはランタンに連れていくことにした。


 街道を進みながらだと火は危ねえし、水魔法の練習をする。

 もちろん俺もだ。

 ヒョロヒョロだが初めから前に飛ばせるってのが負けてるようで気に入らねえからよ。


 撃ち続けると、魔力が無くなるから手のひらの上に水の玉を作る練習から始める。


 アンラの指示で、小指の先くらいの玉を作るんだが、中々小さくならねえ。

 デカくするのは気合い入れればできそうなんだが、小さくするのは思ったより難しい事が分かった。


 この姉ちゃん、魔力は結構あるみたいだが、出てきた水の玉は、顔の大きさほどある玉で、数秒後にバシャと御者台を水浸しにしやがった。


「水で良かったね~、ほらほら小さ~くするんだよ~。それを長く維持できるように練習ね♪ はいはい、もう一回だよ、濡れたのはそのうち乾くから気にしない気にしない♪」


 狭い御者台で真ん中に俺、左にアンラ、右に姉ちゃんだ。

 もちろん姉ちゃんと俺は水浸しで、アンラはギリギリ助かったようだが……頑張ってもらうしかねえな。

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