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空の座礁  作者: Riddle
第四章〜世界の真実
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閑話~影の住人達⑧

 虚無────文字通りそこには何も存在しない。そんな世界を漂い続ける一つの影。閻魔聖と呼ばれる男は、無駄だと知りつつ出口を探し続けていた。


 あてもなく、聖は上下左右も存在しない空間で両手を動かし、必死に身体を移動させる。当の本人も、その行為に意味があるのか分かっていない。それでも、動かなければ、聖は自分を維持できない。動きを止めてしまえば、今度こそ本当に死んでしまう。無意識に聖はそう考えていた。


 あれからどれだけ経ったのだろう。まだ数時間かもしれないし、数十年かもしれない。虚無には時間があるのか分からない。相対的な観測者がいない以上、聖の感覚だけがこの世界で時間の概念を支えている。


「────気が狂いそうだ」


 実際は、既に狂っていたのかもしれない。それでも、自我を保つためにはその事実を受け入れるわけにはいかない。そう意識付けるためなのか、自然と口が動いていた。


 その時、聖の左腕が不自然に弾き上げられた。激痛が意識を鮮明に覚醒させていく。


「なんだ!?」


 頭上を見ると、一つの光球が一方向へ向かって飛び続けている。先程の衝撃は、あの光球が左腕に接触したものだったのだと理解すると共に、聖の脳裏に言葉が浮かんだ。


 ────あの光球は俺が撃ち出した一発だ……と


 ☆☆☆


 それはだいぶ前の出来事だ。聖の体感でいえば数時間前の出来事。彼は無駄だと知りつつもこの空間を測量するために全方角へ光球を放っていた。


 ────散り散りになる光球を目で追っていたが、何かにぶつかって飛散する様子も何も、今の今までなかった。それが、その内の一発が、返ってきた。


 もしかしたら、虚無は空間が循環しているのだろうか。それなら、全ての光球が返ってこなければならないだろう。一発だけというのは、あまりにも不自然だ。


 聖の光球は、何かに衝突した際に自動的に反射はしない。そんなスーパーボールの様な特性は持ち合わせていない。つまり、意思を持って撃ち返した者が存在しているということ。


 聖は、光球の軌跡を目で追った。


 この方角に、何かがあるのだろうか。もしそうならば、この世界から脱出する手がかりになるかもしれない。根拠はなかったが、そう思うことで気力が湧いてくるのを感じ、自身の下方向へ手を向けた。


十全たる太陽(パーフェクト・)信仰の法則(オルター)!」


 巨大な太陽が周囲を照らす。そのまま、太陽から放たれる巨大な光線を目印に、目的の地点を目指し飛び去った。


 ☆☆☆


 どれだけ飛んだだろうか。目的地へ近づいているのかも分からない。十全たる太陽(パーフェクト・)信仰の法則(オルター)によって先は照らされているものの、周囲は何もない暗闇。自身の道服のみが煌々と輝いている。


「────ん?」


 光が、何かを捉えた。まだ距離があるためここからでは分からないが、確実に虚無にあってはならない何かがそこに存在している。


 次第に胸が高鳴っていく。


「誰なんだ……そこにいるのは、一体────!?」


 その姿がどんどん大きくなっていく。あちらも聖に気が付いたのか、それとも十全たる太陽(パーフェクト・)信仰の法則(オルター)の光線に驚いているのか、こちらを向いて身構えている。


 その姿を見間違えるはずがなかった。なぜなら、聖はその姿を閻魔界で毎日見ていたのだから。


「────────────閻魔王!? なぜここに!?」


 そこにいたのは、聖と同じ道服を身に纏いつつも、酷く弱りはてた、かつての上司の姿だった。

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