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ステータス45:神様

 翌日、昨夜勉強で頭を使ったおかげか俺はいつになくスッキリした気分で朝を迎えた。


 ふあーあ、昨日は久しぶりに気合入れて勉強したな。あんなにしっかり勉強したのは高校受験の時以来だ。とりあえず分からないところや聞いておきたいところ、重点的に勉強しておいた方が良さそうな教科の目星はつけられたかな? 後は勉強会でどこまで高められるか……せめて赤点だけでも回避できるくらいになればいいんだけど。


 そんなことを考えながら朝の支度を済ませる。顔を洗って歯を磨いて、そして着替えと今日の授業で使う教科書の準備をする段になって、俺は改めてパッチの変化のことを思い出していた。


 俺はこうやって寝間着を脱いで制服に袖を通して着替えてるけど、他のみんなはステータス画面を開いて装備変更するだけなんだよな。試験前日で授業は午前中だけだから、いつもより持っていく教科書は少ないけど、それでも鞄を持って行かないなんてことはない。でも、他のみんなは普通の日でも鞄なしが当たり前なんだよな。これって結局、俺だけが損してるんじゃないか?


 目覚めのスッキリした気分から一転して、腑に落ちないようなモヤモヤに切り替わってしまう。アップデートの波に乗れない旧バージョンの人間である俺は、この新しい世界では不便を強いられるしかないのだった。


 そういや、前回のパッチではスキルばっかりに気を取られてたけど、能力値ってどうなってるんだろう? 能力値もポイントで上げるとか言ってたけど、勉強しなくても知力にポイントを振れば賢くなったりするのか? うーん……でも、それなら勉強なんてする必要ないよな。今までのパターンだと、知力にポイントを振れば覚えがよくなるとか、そんな感じかな?


 その考えはどうやら正解のようだった。朝食時に郎樹に聞いてみたところ、概ねそういうことらしい。知力が一定以上ないと絶対に理解できないこともあるから、そういう縛りがない俺の方が羨ましいとも言っていた。


「―――そういや郎樹、剣道の時に変に制限された動きになってたよな。いいことばっかりってわけでもないのか。まあ、それでも自分の伸ばしたい能力を自由に伸ばしていけるんなら、俺はそっちの方が羨ましいと思うけどな」

「実際どうなんだろうね。僕は能力値やスキルで優劣が決まらない世界って言うのは自由でいい気もするけど、本当にそんな世界になったらやっていける自信はないかも」

「実際そういう世の中だったんだけどな」

「本当に信じられない話さ。アップデートって一体なんなんだろうね」


 いや、それはこっちが聞きたいんだが……だけど、この前の部室での話から察するに郎樹も明梨もアップデートを経験するのは初めてらしいもんな。梢子先輩は過去に経験がありそうだったけど……今度詳しく聞いてみようかな? まあそれはそうと今は中間試験のことだ。


「まあアップデートの話はこれくらいにして勉強会の件だけど、明梨にはオーケーもらえたよ。ただ、明梨のリクエストで場所が俺の部屋ってことに現状なってて、それを柊木さんが了承するか―――」

「それなら大丈夫だよー」


 突然、横から声を掛けて来たのは神崎さんだった。


「あ、神崎さん、おはよう。あとで教室に伝えに行こうかと思ってたんだけど、聞いた通り俺の部屋でってことになっちゃってて……本当に大丈夫?」

「大丈夫。っていうか、面白そうだから私が納得させる」


 面白そうって言うのは若干気になるけど、柊木さんのことについては俺がどうこうするより神崎さんに任せた方がいいよな……。


「そっか。じゃあ任せるよ。14時に男子寮前に集合ってことになってるから伝えといて」

「りょーかい。それはそうとして、さっき2人が話してた『アップデート』って何? 何か世界の秘密に関わるような感じのことに聞こえたけど……?」

「え……ハハッ、やだなー。よくある思春期男子の妄想だよ。そうだよな、郎樹?」


 急にアップデートの話をされて動揺し、たまらず郎樹にバトンを渡す。こういう時の対応は相変わらず苦手だな俺……。


「まあ、そんなところだね。えっと、神崎さんだっけ? 僕は辛坊郎樹。今日の勉強会でも一緒だからよろしくね」

「神崎蒔苗だよ。よろしく辛坊君。話を戻すけどアップデートの件、妄想にしろ何にしろ、聞かせて欲しいな。私、一応神様だからさ。そういうの知っておかないとマズいんだよね」


 腕を組んで、やたら挑発的な笑みを浮かべて彼女はそう言った。


 いきなり何言い出すんだ……まさか、神に類するような能力を持ったアノマリー? 不思議な雰囲気を持つ女の子だとは感じてたけど……。


 俺の妄想をよそに郎樹と神崎さんの会話は続く。


「神様ってどういう意味かな?」

「『機械仕掛けの神』ことデウス・エクス・マキナの蒔苗ちゃんなのだ」


 神崎さんは両手の親指を立てて自分を指さしながらそう答えた。


「確かにデウス・エクス・マキナは機械仕掛けの神って意味だけど、マキナは機械の部分だよ」

「え、そうなんだ。君、物知りだねー。うーん……じゃあ名字に神が入ってるから、機械の部分と合わせてってことで」

「そっか、わかったよ。じゃあアップデートについてだけど、これは新任の神様には荷が重い話かな。君が神様として実績を積んだら話してあげるよ。さ、そろそろ教室行かないとだし、話はこの辺で」

「えー! いけずー」


 こうして郎樹は舌先三寸でその場を切り抜けたのだった。


 郎樹のこの相手を否定せずにやんわりと躱す感じ、見習わないと。そもそもアノマリーなんて実際に当事者にでもならない限り信じるわけないんだから、堂々と話しても問題ないくらいなんだし。しかし、急に自分のこと神様だなんて神崎さんどうかしたのかと思ったけど、ただの自分の名前を使ったネタだったのか。前から変わった女の子だとは思ってたけど、思ってた以上かも。まあ何はともあれ勉強会の件は柊木さんも大丈夫みたいだし、中間試験が終わるまでは俺も勉強に集中しよう。


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