ステータス42:敵対
「ちょっと待ってください! スクールアノマリーが狙われているってどういうことですか? まさか、敵……!」
自分達が狙われているという梢子先輩の言葉に動揺して俺はつい声が大きくなってしまった。梢子先輩はそんな俺をなだめるように答えた。
「まあ落ち着いて。君がどんな想像をしたのかは知らないけど、なにも敵対的な組織や恨みを持った人物が私達を狙っているとか、そういう話をしたかった訳じゃないんだ。アノマリーは自分が能力を自覚していないことが多い。おそらく自覚せずに能力を発揮したアノマリーがその能力の対象として無意識に選んだのがスクールアノマリーだったってことさ」
「あ……敵とか、そういうのじゃないんですね。てっきり俺はついに異能力バトル展開に突入したのかと……」
俺の頓珍漢な発言を受けてみんなは堪え切れずにゲラゲラと笑いだした。
そんなに可笑しかったか? アノマリーの能力なんてラノベやアニメでよくある異能力そのものだし、俺が作者だったら絶対バトル展開にするのに。というか、いつまで笑ってるんだこの人たち?
「はぁ……そんなに笑わなくてもいいじゃないですか。それに梢子先輩が紛らわしい言い方するからですよ?」
「いや、ごめんごめん。しかし、異能力バトルか。だったら私の無効化能力は主人公か、かなりの強敵が持っている能力だね」
「きっとラスボスですよ」
「ラスボスは時間操作系の能力の方が私は好みかな。さて、そろそろ話を戻そうか」
梢子先輩がそう言って話し始めると、みんなも笑うのを止めて話に聞き入った。
「今、分かっているのは我々の認識におけるスクールアノマリーをオカルト研究会に、アノマリーの能力を固有スキルに変えたアノマリーがいる、ということ。そして、そのアノマリーは無意識にしろ意識的にしろ、このスクールアノマリーを標的として能力を行使したこと。みんなにはこれらを踏まえてそのアノマリーが誰なのか、今日から校内を捜索して特定してもらいたい」
「そのアノマリーはこの学校にいるんですか?」
「可能性は極めて高いと考えている。もし、もっと広範囲を対象にした能力ならアップデートのように私の能力では無効化されなかったはずだ。だから、能力はこの学校のスクールアノマリーだけを対象としている可能性が高い。そうなると、校内にいる誰かがそのアノマリーだと考えるのが自然だろう」
『この学校のスクールアノマリー』ってことは、別の学校にもそういう組織があったりするのかな? 国の秘密機関なんかもあったりして。まあ、それは今聞くことじゃないか。
「校内にいるとして、どうやって探したらいいんですか?」
「そういえばタイタンはアノマリーの発見に携わるのは初めてだったね。今回のようにアノマリー自体より先に能力による影響が確認されたケースでは、その影響を基にアノマリーが誰なのかを特定することになる。具体的には同様の事象が他に起きていないか等を確認し、能力の詳細を詰めて、その能力から推察される人物を監視、実際に能力を使う現場を抑えるといった感じだね」
「なんだか探偵みたいですね」
「まあそういう認識でだいたい間違ってないね。というか、スクールアノマリーの活動全部がアノマリー専門の探偵みたいなものさ」
言われてみればスクールアノマリーの4つの活動、『発見』、『監視』、『解析』、『処理』ってどれも探偵がやりそうなことだな。対象がアノマリーに限定されるっていうだけで、そんなに突飛なことをしてるわけでもないのか。
「分かりました。まずは部活みたいな小規模なグループ単位で言葉が変わっているようなところがないかを中心に調べて行けばいいってことですね」
「その通りだ。各自、これからやるべきことは分かったと思う。他にこの件についての疑問や、その他の共有しておきたいこと等がなければこの場は解散とするがいいかな?」
郎樹が手を挙げて質問する。
「ちょっと気になったんですけど、固有スキルの件がパッチとは無関係とすると、どうして崇行君はそのアノマリーの能力の影響を受けなかったんでしょうか?」
「それはこの能力による認識の変更がアップデートの能力の範疇と無意識に判断されたからではないかと私は推察している。固有スキルという、最近起こったパッチによる変化と結びつくような内容が含まれていたからね」
「なるほど、それはあり得る話ですね。ですが、崇行君の能力がアップデートの能力でない、別の能力だったからという可能性もあるんじゃないかと僕は考えます。崇行君にはその線も考えに入れておいてもらった方が良いかと」
「……そうだね、助かるよボーロ。他に何かある人は?」
何か聞いておくことあったっけ? そうだ、柊木さんにアノマリーについて話してもいいものなのか聞いておこう。
「あの、1ついいですか?」
「なんだいタイタン?」
「柊木さんについてなんですけど、彼女にアノマリーの能力について話すのはダメなんでしょうか? 彼女も今回のパッチにはかなり動揺していたみたいなんで、情報があれば少し落ち着くかもしれないし、俺も話がしやすいので」
「本来はスクールアノマリーのメンバー以外には話さないんだが、そういう事なら仕方ないな。ただし、話をする時は必ず部室に連れてきてくれ。私もその場には同席させてもらう」
「俺の時はメンバーになる前に話してたように思いますけど……?」
「それは君がスクールアノマリーに入るという確証があったからね。実際そうなっただろう?」
明梨がいたから俺も入るって思われてたのかな? でも、1回はメンバーにならなくても構わないとまで言ってたような……いや、あの件を蒸し返すのは得策じゃないな。
「まあ紆余曲折ありましたけど、確かに今はそうなってますね」
「終わり良ければすべて良し、さ。他に何かあるかい?」
「いえ、俺は大丈夫です」
「他の者は? ―――特にないようだね。それじゃあ、この場は解散して各自、任務に取り掛かってくれ」




